墓標に戻る

幻の漫画少年 全リスト

文・相澤亮一

「漫画少年」と私(3)
「新寶島」に続いて読んだ手塚漫画(昭和二十三年から昭和二十五年)を挙げてみると、「怪人コロンコ博士」「地底国の怪人」「ジャングル魔境」「森の四剣士」「一千年後の世界」「ロスト・ワールド」(地球編・宇宙編)「拳銃天使」「奇跡の森の物語」「メトロポリス」「月世界紳士」「ファウスト」「ふしぎ旅行記」「漫画大学」などである。殆どは手塚ファンの友人から借りて読んだ。
自分で買った最初の手塚漫画は、「怪人コロンコ博士」で、町へ遊びに行った折、本町通りから少し小路に入ったところにあった本屋の棚にあるのをひょっこり見つけた。小学校四年の秋のことである。
次に買ったのが「ロスト・ワールド」の地球編で十二月の終わり近く、宇宙編は正月になってからのことだった。
ハードカバーだったので、とても手ごたえがあったが、糊付けのうすい作りで、特に宇宙編の表紙と背が何回も読むと本体からとれ易かった。
そのような訳で、「ロスト・ワールド」は、「新寶島」よりも遙かに印象に残っている。
理由は自分の小遣いで買って何度も読んだことと、「新寶島」は新刊本屋の書棚にたくさん並んでいて、容易に手に入りそうに感じられ、買わなかったためと思っている。
その他、「メトロポリス」「ファウスト」「ふしぎ旅行記」「漫画大学」は、雨の中を自転車をとばし、比角駅(現在の東柏崎駅)の近くの本屋で買ったのを覚えている。
現在、手塚漫画以外の漫画がかなり手もとにあるが、前述のように、手塚ファンがいたためであり、幸か不幸かどちらであろうか。

さて、昭和二十六年の「漫画少年」について記してみる。
一月号は新年特大号のオール漫画号として発行された。続いて正月号がお正月大愉快号として発行され、「バット君」が初めて別冊大付録としてついた。
学童社では、すでに単行本として「バット君」を発行していたが、その後の連載分をまとめて、第二巻として発行する計画だった。
しかし、「漫少」の読者に一人残らず行きわたるように考え、別冊大付録としたのである。
そして、次の号には、またまた井上一雄の名作「少年ホームラン王」をつけ、二月特大号とした。

昭和二十六年は、正月号から別冊付録をつけ、読者がいちだんと増えた。 そこで三月号にも別冊付録をつけた。原一司の「エンヤ・コラサノ助」である。

四月号は春のオール漫画号として、山川惣冶の「銀星」がつき、五月号はこどもの日お祝い号として、「銀星」第二編がついた。
そして、六月号からは、ガラリと変わった新型雑誌(ニュースタイル)に発展する。外国風のハイカラな形に生まれ変わり、七月号から表紙も天然色の写真を使用した。
しかし、雑誌の判型を変えたことにより、売れ行きはかえって落ち込んだようである。
八月の夏休み大愉快号には、ディズニーに漫画映画物語「バンビ」が、手塚治虫の構成解説で載っている。
また、井上一雄の「投手の正ちゃん」が、八月号、九月号と載った。
十月号は講和条約記念号と銘うって、特別付録として、手塚治虫の「新編 月世界紳士」がついた。
また、十一月号、十二月号には「ふしぎ旅行記」が特別付録としてついた。「月世界紳士」「ふしぎ旅行記」は、当時としては大変豪華な付録だった。

昭和二十六年八月に、学童社から「ジャングル大帝」第一集が発行されているが、私は直接本社に申し込んで送本して貰った。
あまりにもすばらしい本なので、お礼状を書いた。それが十一月号に載り、「漫画少年」バッジを貰うことができた。
十二月号には、昭和二十七年新年号の案内が、五周年記念新年特大号の見出しで載っているので、次に紹介する。
・家中で読んでもこわれない雑誌
・なんべん読んでもいたまぬ雑誌
・いつまでもとっておける丈夫な雑誌
・あなたの本箱を美しくかざる雑誌
・たまっていくのがたのしみな雑誌
・日本にはじめてあらわれる単行本式の新型雑誌

即ち、新年号からは、形はニュースタイルで、表紙を厚表紙に変えたのである。
さて、「漫画少年」は昭和二十六年には十三号分が刊行された。例えば一月号は十二月に発行するのを、十一月にすでに発行していた。
雑誌発行の各社の激しい競争が招いた結果であり、そこで各社とも、一月号の次に調整号として正月号を出すことにし、十三号分を刊行した訳である。

まんだらけ目録9号より

S24.07.20 8月号
「ノックアウトQ」(山川惣治)連載開始。 友情にみちた正義と熱血の絵物語。山川の自伝的作品で、のちの「あしたのジョー」(梶原一騎)少年マガジン連載に大きな影響を及ぼす。 また、この号はさしずめ挿絵の展覧会と言えよう。 斉藤五百枝の「南海の龍巻船」川上四郎の「眼ざめ行く子ら」、山口将吉郎「鳥さし伊助」、玉井徳次郎「この友情」・・・みごとな絵が味わえる。 読者欄担当として、まる子登場・・・「まるこだより」で慕われる。佐藤紅緑先生ご逝去。



S24.08.20 9月号
「だんご仙人物語」(島田啓三)「カンラカラ助」(原一司)「まんが太閤記」(石田英助)「クロ」(はがまさお) 「ガムちゃん」(篠崎寿)絵物語「ノックアウトQ」(山川惣治)「てるてる日記」(沢井一三郎) 「漫画学校」(松井利一)小説「眼ざめ行く子ら」(下村湖人)が連載されている。 「漫画学校」は投稿家達に大変役立つ連載である。



S24.09.20 10月号
「だんご仙人」(島田啓三)「カンラカラ兵衛」(原一司)「ガムちゃん」(藤崎寿)「ノックアウトQ」(山川惣治)「眼ざめいく子ら」(下村湖人)等連載。
新連載小説「一直線」(佐藤紅緑)井上賞「バット君」入選者名発表



S24.10.20 11月号
井上賞入選漫画「バット君」(田辺政夫)を発表。
2色刷りで掲載するために福井英一が絵をかきなおす。
井上先生がなくなられても「バット君」はいつまでも日本にのこっているのです。
そして僕等がなおいっそう立派なものにするのです。
この度四頁にわたって「バット君」を描かせてもらいました。井上先生がよろこんで下さるようにいのりつつ(最終コマより引用)



S24.11.20 12月号
井上賞入選漫画「バット君」(滝沢みちこ)新連載漫画「三毛猫ミケちゃん」(井上一雄)少女小説「巷の白百合」(野村愛正)社友を3名(川本、永松、田辺)決定。
130頁というあつい雑誌になる。 ちなみに創刊号は38頁だった。



S24.12.20 1月号
明けゆく昭和25年の正月、さしのぼる朝日のようにかがやかしく踊り出た新年号。
表紙絵「天馬」(斉藤五百枝筆)天馬にまたがって暁の空をかけゆく少年の元気な姿がこの少年誌のたのもしさを表している。(168頁の厚さ) 「バット君」はうがいまもるが二色かきを行う。
連載漫画や小説は充実していて美事。
椛島勝一ペン画集「カッパ事件」(はがまさお)「ゆるりのんき」(倉金章介)も目を引く。
温かい「サトウ・ハチロー特集」もあり、さすがという編集です。



S25.01.20 2月号
「バット君」は福井英一がかきかえ、「カッパ沼の動物たち」(芳賀まさお)や「腕白タック」(松下井知夫) 漫画訪問記「島田啓三先生を訪ねて」(篠崎寿)「お正月おもしろ大会」「滑稽放送大会」等。
お正月にふさわしい大特集が組まれている。
漫画の多いこと、しかも面白くて品のよい漫画ばかり。
何といっても漫画少年の漫画は日本一である。



S25.02.20 3月号
かきかえ「バット君」と毎月の連載漫画、ほかに「ふしぎなアコーデオン」(澤井一三郎)「ギッタンとバッタン」(古澤日出夫)「友情配達やさん」(福井英一)が掲載される。
読切小説「チビの熊たいじ」(河合三郎)「死の吹雪と闘う勇少年」(上澤謙二)「ニコニコ大会学校劇集」「美談宝玉集」ありで、ニコニコ大会号としてふさわしい。



S25.03.20 4月号
「だんご仙人」(島田啓三)は16頁の長編で極楽を見せてくれる。
「バット君」かきかえ福井英一。
新連載長編小説「少年のための次郎物語」(下村湖人)椛島勝一ペン画集。進級お祝い大会など盛り沢山。 さて、「ノックアウトQ」(山川惣治)では章治と久五郎が江東拳闘倶楽部道場に足を踏み入れることになる。 次はどう展開するだろうか。
読者の入選漫画(大きい漫画)に永田竹丸、藤本弘の作品が見える。



S25.04.20 5月号
連載小説と漫画で一杯。 その中に読者入選漫画「村の山神様」(山本正敏)12頁という素晴らしい作品が載っている。 「野球の春ひらく」(グラビア)はだれでも描きたくなる絵の手本(絵と解説)を参考に選手の肖像画を描いて送るという懸賞つきである。 井上賞の「バット君」も載っていて、益々発展する「漫少」という感じがする。