わたくし人の身体がのびのびと描かれている漫画が好きです。古くは谷川史子の描線に魅了されたりしてきました。
端的に言って、漫画とは線です。描線の集合体がそのまま画面を作っています。
漫画を読む時には、輪郭線や斜線、コマ枠線に吹き出しのアウトラインがどうなっているかを観察しながら、作者や作品の「人となり」や込められた意図、そして自分との相性などを探っていくのです。
1.マドンナはガラスケースの中@(2015/スガワラエスコ)
爬虫類専門店勤務の爬虫類マニア(32)が女子小学生(12)に懸想する漫画です。
と言うとミもフタもないんですが、しかし、ヒロインが小学生なのに信じられますかこの妖艶さ。
物語も笑いありシリアスありで進んでゆきますが、この先どうなるんだろう…?
2.ポム・プリゾニエール(2014/鶴田謙二)
女子が素っ裸で、だらだら廃墟を闊歩する漫画。猫分マシマシで。
もう、この人の作画についてはコメントは無用ですね。各コマ各コマゆっくり読み解きながら摂取するにふさわしい密度とセンスです。
なによりちゃんと下の毛が描かれているのが素晴らしい。
鶴田謙二「ポム・プリゾニエール」の通販はこちらから。
3.タイニーマイティボーイ(2014/大石まさる)
最近の大石まさるはおかしい。大化けしたぞ…?と勝手に思っております。
今まで私がこの作家に抱いていた印象は…「情感は良いんだけど、なんとなく線が粗くて読みづらいし、ストーリーも左程ぐっとこないぞ」というものでした。
しかし近作を読んで…
「あれ?描線が整理されている。ふんだんに使われてる斜線にも入りと抜きがつけられて、なんだか見やすくなっているなー。
キャラクターも外連味と人間味に溢れ、はっちゃけている感じ。ストーリーもおちゃらけていてその実ダークでディープだぞ。
この『タイニーマイティボーイ』、表面上はジゴロなショタが毎回毎回異なる人外レディをひっかけるお話なんだけども(地底帝国の王女が好み)、
その実、悲しみと閉塞感、遠い所を望むような心持ちが見え隠れする、仏教的輪廻転生をテーマにした作品だコレ。
読後感は壊れたおもちゃをばらまいたような感じで、楽しい。
4.ライプニッツ(2014/大石まさる)
もう一冊もすばらしかったなー。上で紹介した『タイニー?』の方はデフォルメ強めの寓話調だったけど、こっちはハードSF風味だな。
ヒロインのアクの強さと健康な肉体美が素晴らしい。そして猫分マシマシで。ハヤカワとか創元SFの、ちょっとした古典を読んでるような気分になっちゃったよ。
作者自身の感情を押し付けられる事なく、でも端々からは伝わってくる「悲しみ」とそれを踏まえた「希望」。
ハブとなるSF的な地球外生命体がいい感じにのんびりしているなー。
なんか個性と一般性のバランスが、いままでより高いレベルで調和している感。
個性自体も深化している感。好きだなー」とかく好印象を持ったのです。
大石まさる「ライプニッツ」の通販はこちらから。
5.いないときにくる列車(2015/粟岳高弘)
駒草出版が最近漫画を出し始めたんです。なんでかはちょっと解らないんですが、チョイスもオツなんですね。
例えばこの作品。商業作品「たぶん惑星」や同人誌等でも展開されているほぼ同舞台での少女ミーツSFなシリーズなんですが、これがもうフェチが爆発しています。というかフェチ分しか存在してないです。
列挙しましょう「ふんどし少女」「宙に浮く斥力構体」「野外露出」「謎の異星人」「昭和64年」「恒星間ゲート」「半裸の少女にスタンプ」「ヘンカワな異星マスコット」…。
等々のガジェットをへにょへにょの描線と、カエル顔の人物デザインで繋ぎあわせれば粟岳高弘です。
粟岳高弘「いないときに来る列車」の通販はこちらから。
6.パラダイスバード(2012/佐藤明機)
最近佐藤明機という作家さんを知ったんですが、このかた’80後半から主に同人誌等で活動されていたようで、最近駒草出版より過去作の新装版『ビブリオテーク・リヴ/楽園通信社奇譚』や『リプライズ』が発行されています。
それに伴って今のところの最新単行本であるこの『パラダイスバード』も読んだんですが、改装前の中野ブロードウェーをモデルにした商店街を舞台に、古本屋を継いだ主人公が「表」と「裏」それぞれの商店街を行き来しつつ秘められた秘密を探っていく設定です。
植芝理一的なごっちゃりカオスな世界観が特徴的で、本棚の洞窟を抜けた先にある裏商店街には謎銭湯や付喪神、恒星間ゲートまで存在します。
佐藤明機さんの作品の通販はこちらから。
7.坊主と蜘蛛(2015/ハジ)
BL枠で考えるとこの作品がトップでした。ただ惚れたはれたのひっついて離れてだけのBLには興味がありません。
ちゃんと中身のある作品があったら私の所へ来なさい的な気分で過ごしているのですが、『坊主と蜘蛛』は、その期待に十二分に答えてくれました。
まず、蜘蛛の化け物や妖狐など登場人物が人外ばっかりで至福。普通の人間に見える主人公ですら実は人外。
長い時を生きる主役2人が少しずつ情を育んで、お互いを受け入れていく描写がわずか一冊の中に詰め込まれています。
蜘蛛人外らしい糸を使ったプレイもふんだんに盛り込まれており、幸せです。
ハジ「坊主と蜘蛛」の通販はこちらから。
8.こんなこと(2015/三巷文)
男性向け成年コミックからではこちらがベスト。成年コミックにおいてもただ惚れたはれたのひっついて離れてだけの?(以下略) なんですが、この作品きちんと中身があります。
和風ファンタジーな世界観や良し。ヒロインはかわいいし、主人公もかわいい。成年コミックでは男性が、「名探偵コナンの犯人役の黒塗り」のようにしか表現されないことが多いのですが、それだと物足りないんです。
ヒロインの痴態だけが見たい訳じゃなくって、関係性そのものや、それによって生まれるエロスを求めているんです…!
三巷文「こんなこと」の通販はこちらから。
・今年は『小説家になろう』をよく読みました。異世界トリップ、いいですよね。その中で心に残ったものを。大体商業単行本化されています。
9.異世界料理道(EDA)
異世界トリップといっても、ありがちな中世ヨーロッパ風世界ではなく、森林とそこに暮らすやや原始的な部族たちとの共存を図る、半人前料理人の奮闘記です。
この主人公が持ち得る力は日本で得てきた数々のレシピと発想力のみ。それらを駆使して人の生活に喜びと豊かさをもたらさんと頑張る様が気持ちいい。
ヒロインのツンデレ造形も成功しており、かわいい。
EDA「異世界料理道」の通販はこちらから。
10.サモナーさんが行く(ロッド)
読むゲーム。読むVRMMO。マイナージョブ「サモナー」道を爆進する主人公。召喚モンスター達を操る…だけでなく、暴れまわるサモナーさん。
そんな彼らが広大なゲーム世界の攻略者として、ひとコマひとコマ切り開いていくストーリー。ひとつひとつ積みあがっていく各種ステータス(攻撃・防御・魔法etc…)あまりにも膨大な話数。単行本にすれば両腕に抱えてもあまりそうな程。
そして何よりも、これは異世界トリップではない。あくまでベースとなる現実が存在するはず…なんですが、主人公らキャラクターのゲーム意外の生活が一切明かされないところが気になります。いわば現実パートの一切無いキャラ同士の交流もやや希薄なソードアートオンラインというか。輝かしいゲーム世界と現実との落差がものすごそう。
11.盾の勇者の成り上がり(アネコユサギ)
異世界トリップ勇者ものだけれども、盾の勇者である主人公の不遇っぷりが物凄い。同時に召喚された剣や槍や弓の勇者と現地の王族に嵌められ欺かれ、すっかり性格が変わってしまいます。そこからの巻き返しと宇宙規模な超展開に、こちらの心まで持ってかれちゃいます。
アネコユサギ「盾の勇者の成り上がり」の通販はこちらから。
12.ありふれた職業で世界最強(白米良)
こちらのも主人公の物凄い不遇と逆境。クラスまるごと異世界トリップした上で同級生に裏切られ奈落の底へ転げ落ち、そこから泥水をすすり異形の生物を喰らい自ら化け物となりながらも這い上がるお話。ダークでハードな描写がグッド。
白米良「ありふれた職業で世界最強」の通販はこちらから。
13.テグスの迷宮探訪録(中文字)
大小の迷宮からなる無法世界で、孤児テグスがハーレムを形作りながらダンジョン攻略していく…というストーリー。多種多様な迷宮内の環境と、キャラクターの躍動が目に楽しい。普通にざくざく人死にありますし殺します。倫理もへったくれもない世界で、殺伐と優しさが入り交じるのが特徴的です。
中文字「テグスの迷宮探訪録」の通販はこちらから。
14.金色の文字使い(十本スイ)
誰にもおもねる事のないまさに俺tueeeチート系主人公が無双するお話。空中に書いた文字の効果を具現化するという露伴先生的な能力で美女幼女をたらしこめ!
少年漫画的アツさに満ちたバトルロマン。
十本スイ「金色の文字使い」の通販はこちらから。