まんだらけスタッフが選ぶBestコミック2016

2016年も終ってしまいましたが、今年もやります「まんだらけスタッフが選ぶベストコミック」。
まんだらけは古本屋ですので、今年刊行された本でとかそういう縛りはありません。過去に発行されたマンガすべてから選んで可。「今年出会えた本」から選ぶというだけです。
そして個人の好みに点数つけても仕方がないから、順位をポイントにしたりその総和でさらに順位つけたりはしません。

今年も膨大な量の新刊が出ましたが、まんだらけコミック担当一同、今年もまんだらけに来店されたお客様に、本の出会いがたくさんあればと願っています。

自己紹介&2016年を振り返って

久しぶりに巻来功士の「ゴッドサイダー」を読み直して、パズスの赤ん坊Verの悪態つきまくるとこに大興奮。
バキの範馬勇次郎が生まれたばかりで、「早く乳を飲ませろッッ」っていうのに近い破壊力があります。
あと2016年ものでなくて衝撃受けたのは、ビッグコミックゴールド4号に掲載されている一ノ関圭「美食三昧」。
病弱だった幼少期、花街に売られ、下働きから花魁に登りつめ、転落していくまでの女性の半生が見事にまとまってて…せつなすぎる。
一ノ関圭の描く物語のこの当時暮らしてたかのような空気感ってなんなんでしょうか、ほんとすごい。
ジャンプAutumn Special(1993年)に掲載されてた戸田尚伸「そして野獣は甦る」 も入手した時は大興奮でした。
旅客機の爆弾テロのはなしで「惑星をつぐ者」は偶然ではないことが分かるおもしろさ。 素晴らしいです。他の読切も読みたい!
ちょっと集めてみます。いい加減前置き長いですね。
普段コンプレックス(秋葉原)で日々コミックを買取しています。
よかったら声かけてみてください。
これから選ぶ2016ベストは2016年に単行本(or kindle)がでたものしばりで自分は選んでいます。

暗殺教室(集英社・松井優征)

ネウロに続いてこの暗殺教室。
ジャンプで連載してて2作品ともきちんと描きあげて、最後までおもしろかった漫画家って記憶にありません。
ほんとすごいことだと思います。
暗殺教室は入りが先生を暗殺するというセンセーショナルなスタートだったけどもこんなにしっかりとした教育漫画はないってくらい殺せんせーの言葉がいちいち刺さる。
「清流に棲もうがドブ川に棲もうが、前に泳げば魚は美しく育つのです」は特に好きな言葉。
登場人物みんなが成長してて、これぞジャンプの少年漫画。

パステル家族(双葉社・セイ)

この漫画には元気づけられました。
とにかくハッピー。
1巻のゲームのとこまでまず読めば誰でもどハマりします。

ヨルとネル(秋田書店・施川ユウキ)

小人2人のベースはギャグ漫画の和気あいあいとした雰囲気ながらもポツポツと不穏なワードをはさんでくる。
何かに追われてて逃げてるんだなってところから、なぜ2人が小人なのか?最初から2人でいたからこその1人になってしまったらどうしようという恐怖感。いろんなものが徐々に膨れ上がってミステリアスに展開していく。ラスト読み終えたあとはしばし呆然としました。
施川ユウキは引き出し多いけども、こんなものまで描くなんて…
とんでもない傑作で今年を代表する漫画の一つだと思います。
同じ施川ユウキだと、「バーナード嬢曰く。」3巻の蚊のくだりが最高だったのと、熊嵐が紹介されていたのも好きな作品だけにうれしかった。

太田基之傑作短編集(小学館・太田基之)

ここに収録されている読切「ラスト・ナイト」はここ数年では最高の読切の一つだと思います。
肩透かしのようなくだらないオチだけどもそこが見事。
成仏できないどうやって死んだのかとかも覚えてない霊の成仏できない理由をさがすしょぼい男2人の物語。
間違いなく太田基之にしか作れないはなし。
最高です。

THE TOWN ~復讐者~(KADOKAWA エンターブレイン・加藤清志)

勢い溢れる漫画は大好き。
そんな勢いではこれが今年はナンバー1。
側溝の格子状のふたで小学生の体がバラバラになって川にゼリー状に散らばったそれを集めたり、復讐の相棒がトンボだったり。
説明なくグイグイ異能バトルが進んでいってバッサリ終わるかんじがとにかく素晴らしい。
フクイタクミの「百足」も勢いって点では良かった。

ブラッククローバー(集英社・田畠裕基)

王道少年漫画のど真ん中。
とにかく主人公があきらめない。
その絶望度がだんだん強くなっていますがそれでも全くあきらめない。
だから盛り上がりが何段階もあるのも心地いい。
この漫画展開も早くていいですよね。

僕たちがやりました(講談社・荒木光)

読んでて驚かされたのはこれと、「100万円の女たち」が一番。
正しいヤンマガの漫画。単行本で読んでるとだいたい終わりが衝撃的なところで続きが気になる気になる。

ニュクスの角灯(リイド社・高浜寛)

一番ビックリしたのが、あれ…終わってない。
高浜寛が全1冊のイメージしかないからまさか2巻へ続くとは思いませんでした。
最高だった「トゥー・エスプレッソ」から、「 蝶のみちゆき」「四谷区花園町」はさらに上の物語の深さとおもしろさ。
この「ニュクスの角灯」はそれら日本に舞台を移してからの集大成的なものを感じさせます。
まるでその時代を生きてきて描いてるような地に足ついた描写は見事です。

銀河英雄伝説(集英社・藤崎竜)

ヤン・ウェンリーはほんとかっこいい。
第6次イゼルローン攻防戦は特に興奮した。
中学生の時に一気に読んだあの時の感覚を思い起こしてくれました。

ラララ(スクウェアエニックス・金田一蓮十郎)

金田一蓮十郎の今の連載中の作品だと最初はこれが一番好きじゃなかったです。
「ライアー×ライアー」はどうなるんだろうとドキドキしていて、「ゆうべはお楽しみでしたね」はゴローさんが可愛すぎてメロメロに。
「ラララ」はこのヒロイン好きになれないな?と思っていましたが、2人が次第に互いを思いやり、契約結婚だったのがまわりからみて理想の夫婦になっていく様が深くて感慨深い。ちょっと今までの金田一蓮十郎作品にはないテイストがあり良いです。

マジャン ~畏村奇聞~(カミムラ晋作)

kindleで一挙全11巻リリースされた時は発狂しました。
今年最終巻までリリースされた漫画では最も読むべき漫画の一つです。
麻雀知らなくても楽しめます。
というかマジャン(麻雀)に負けたら腕切断されたりとかがナチュラルな因習縛られた世界感が中心なので、そんなのはどうでもよくなります。

遅まきながら電子書籍と紙媒体で購入の半々になった自分の書棚と、購読ペース から感じたことはというと、「仕事中に見かけて気になった本を買って、休憩室に置かれている週刊誌を読み、定期的に各社のWEBコミック連載を読んでいて、ツイッターに流れてくる気になった画像を追うだけで、けっこうおなかいっぱいになってしまう」ということです。昔は無尽蔵に読めたし空腹感を覚えることもそうなかったのですが、これが老いなのかと感じましたね。

いままでも積読はけっこうあったけれど、ここ1年で積読は極力やめようと決心し、それなりに読んだり買ったり貯めたり捨てたりを意思的に行った一年でした。

17年は遅まきながら自炊に手を出そうと思います。電書で手に入れた本の解像度が気になったりとか・・・。けっこうあるのです。

映像ソフトの世界ではDVD→ブルーレイ→やがては4Kという道筋が付いており、音楽ソフトについてもかつてのCDからリッピングMP3だった時代から、現在はハイレゾでFLACやDSDなどに移っています。なのにマンガに関しては高解像度版が出ませんね。音楽でDSDでアルバム1枚買うと数GBあるのに、電子書籍だと100MB 程度ってなんかおかしいぞと。
講談社の電書とか、いざ買ってみたら解像度がアレだったりで買いなおしたなんてのはマンガ好きあるあるでしょうね。

順不同です。

楠みちはる「特別のエゴイスト」

ビッグコミックオリジナル。楠みちはるが持つ、80年代後半から90年代初頭への憧憬と、相反する「やはりあれは人の心がどこかまちがっていた」の思い出が交錯するところが見所。
「湾岸」の後期が好きな人にはおすすめ。楠みちはるの描く物語はやっぱり他の人とはどこか違う。ので、いい。

能条純一「哭きの竜genesis」

竹書房からでた「哭きの竜」は有名だけれど、その続編「哭きの竜外伝」はあまり知られていない。
この続編、竜があいかわらずヤクザ組織の代理戦争に翻弄されるのはともかくとして、竜が日本を支配する巨魁の息子だったとか、竜にあこがれる女が出てきて配信でデスゲームみたいなのするとか、竜の暗くて鈍い光の部分を全部台無しにしたクソ続編だったわけですが、その続編のさらに続きが今年になって突如開始。
タイミング的にはずっと原著でしか読めなかった「哭きの竜」が30年ぶりに文庫化された記念なのかも知れないが、またしても竜の「ツキの太さ」「運を呼び込む魔性の男」ぶりと、竜に挑まんとするルポライターが「月の動く音が聞きたい」などと奇矯なことを言い出したりして素敵。
初代「哭きの竜」は能条純一の筆がもっとも乗っていたときの絵で、いまの絵とは線一本でも違うんだけれど、今回の能条さんはあのころの絵をも一回描こうとしてるように思える。それもいい。

冨樫義博「HUNTER×HUNTER」

王位継承バトルが始まって、わずかのあいだにまた休載してしまったものの、やはり早売りジャンプを買おうとか、夜中にコンビニにいってまで続きが読みたくなるマンガはことしハンターしかなかったわけで。
でも今年中盤からハンターが載らなくなって、こち亀も終りで、ジャンプ含めて少年マンガ誌読まなくなりましたな。遂にジャンプから卒業と思うと感慨深いです。

継続連載群では

石塚真一「BLUEGIANT」

柳本光晴「響」

柳田史太「トモちゃんは女の子」

は今年も良くって、あと

「たそがれたかこ」

少しづつ自分を解放するとともに、明確に「娘よりも若い少年に恋をする」ことに自覚的になるたかこさん。そして拒食症になる娘。ことしの展開はすごかった。
これだけが読みたさに「BE LOVE」を買うハメになったくらい。

岩明均×室井大資「レイリ」

戦いの間が、死体の描き方が、そして緩急のつけ方、物語全体が岩明さんぽくて、それでいて室井さんの味がある。ついぞ描かれたことがなかった武田信勝の存在も興味を引かせる。

高浜寛「ニュクスの角灯」

スケラッコ「盆の国」

意志強ナツ子の諸作品

ことしはwebトーチから目が離せなかった。ひとつを読むと連鎖的に他の作品も読んでしまうし、読ませる力があるレーベルだった。
多くの人にとっては横山了一「息子の俺への態度がヒドイのでマンガにして見ました」やドリヤス工房「定番過ぎる文学作品をだいたい10ページぐらいのマンガで読む」あたりがトーチを知るとっかかりなのだろうけれど、そうした取っ掛かりから異端まで幅広く面白いので定期チェックオススメです。

tsugeneko「上野さんは不器用」

荒木光「僕たちがやりました」

主人公ら4人の人をイラ付かせる力がすごい。

永田カピ「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」

卯月妙子「続・人間仮免中」

前作のジェットコースター振り展開を期待すると違うかもしれないが、やはり度肝を抜かれることは間違いない作品。ふたりにはほんと幸せになって欲しい。
統失って言葉をみんなサベツ的な使い方して人をケナしたりするけれど、発病率は1%とすごく高い。いつ誰もがなってもおかしくないことをまず心得るべき。巻末の3.11の読みきりもすごかった。

「中間管理録トネガワ」

心に屈託がある時でも、読むとどんなときでも「くだらねー」と笑えるマンガって大事だなって再認識しますね。中村光のマンガにもおなじ効力あるけれど新作のサンタのやつにはあまりそれ感じなかったんですよ。

「刃牙道」

連載継続でずっと読んでるもので、なんだかんだ毎号気になったといったらこれ。娯楽に徹してるものはホント大事ですよ。バガボンドが今年一回も掲載なかったでしょう。おそらくいまバガボンド再開しても、世間の武蔵は板垣版で上書きされてて違和感あるかもしれん。

きづきあきら+サトウナンキ「さよならハルメギド」

このコンビは明るく可愛い絵で鬱展開をぶつけてくるから油断ならないのですが、昭和育ちの子供たちがノストラダムスを引き合いにして貧乏な自分たちの世界が滅べばいい、と願いつつも、淡い性への目覚めで妙に引き込まれた2巻まので展開が、3巻で急展開に。こんな終わり方はないだろうと誰もが驚く鬱ラスト。

青池保子「エロイカより愛をこめて」

いわゆる「再開後」であるベルリンの壁崩壊後は若いころはあまり好きではなかったんですが、も一回読み返したら面白かったですね。伯爵と少佐の「守るべき世界」を踏まえたうえでの関係性も深くなってきたからかも。

ヨネダコウ「Op 夜明至の色のない日々」

BLで大人気のヨネダコウが一般誌に来たんですが、いややっぱり良かったですね。ただ1エピソード分しか掲載なかったんで、続き読みたい&継続的に載って欲しい。

驚いたことに今年になってから漫画10冊程度しか買ってないんですよね。
例年なら月に100冊以上買うこともあった自分としては異例の事態。
引っ越して本棚自体が無くなったのもあるのですが、それ以上に自分の趣向がアニメ、映画よりになっていっているのを感じます。アニメは毎日4,5本は見てるからなぁ。

「ウルトラマン超闘士激伝 新章」

で、そんな今年の中でも唯一発売日に買った作品はこれですね。
とにかく自分が小学生のころに流行っていて、かつ後の世にきちんとは伝えられてなかった、残っていなかった作品が復活、というのが素晴らしい。
元々ボンボンの作品自体、復刊は数多くあっても新しい連載というものは一切無かった現状に突然現れたフィギュアと連動の大復活。それだけでもうファンとしては感動しかなかったですね。あぁ、この世界は、人々は「ウルトラマン超闘士激伝」を忘れていなかったのだと。あの熱を忘れていなかったのだと、一ファンとして目頭が熱くなる思いです。

とにかく回顧だけで終らないその熱量、そしてウルトラマンという作品が続いていくことの素晴らしさが感じられた一年です。

「キン肉マン」

正直、去年も「肉」がマンガ読みの話題を搔っ攫っていたのですが、今年はさらに凄かったですね。
ジャスティスマンVSテリーマン、バッファローマンVSガンマン、そしてキン肉マンVSネメシスと歴代でも有数のベストバウトが続出したまさに「肉」の年でした。
注目したいのがその試合運びや勝敗のわからないキャラチョイスの妙だけでなく、未だに成長を続けるゆで先生の漫画センス、漫画力。
それぞれの過去、信念を技に乗せながらも、その技が重なり合ったときに起る理解と心情の変化。それを時に偶然、時に必然を織り交ぜながらストーリーとして紡がれていくという、これまでのゆで漫画からさらに進化を遂げた一年でした。
残る試合はあと僅かのようですが、来年一年も月曜0時の更新が楽しみになる一年となりそうです。

「DREAMS」

ものすごい大暴投、大暴走なのですが、それでも「DREAMS」の文法からは逸脱してないのが凄いんです。
いきなりデッドボール連発で20年近く続いた甲子園が終了した次のページでライバルが交通事故で死亡、それでもあくまで「DREAMS」。おそらくもうすぐ来るであろう最終回が最も恐ろしくも待ち遠しい作品です。

「HUNTER×HUNTER」

ヒソカ爆死→復活の流れは本当、衝撃でした。あの時のジャンプの最大風速はここ10年でも一番だったのでは?

小泉です。
今年は電子書籍とかSNSとかやったり断念したりでしたが、来年はきちんと原画展行ったり、フライヤー集めたり足で稼ぎたいと思っています。
あとは製本しようかなと。今のところはそんな感じです。

『若殿はつらいよ!』著:ケン月影 原作:鳴海丈 全4巻

初出:プレイコミックス 1999年NO.16~2002年NO.12 ぶんか社
コンビニコミックスです!
政略結婚の初夜を失敗した事から家出する若殿・松平龍之介が、行く先々で下半身にモノ言わせて解決していく道中記。
過去にプレイコミックスで連載されていたものの、コンビニコミックスにて初単行本化です。
最初から性豪の完璧超人というわけではなく、少しずつ女性の体や気持ちを学んでいくという勉強熱心な部分もありつつ、事件を解決してはどこかへ去ってしまうクールな暴れん坊将軍(若殿)で、物語が進むにつれ男としても人間としても成長していきます。
新刊だと既に手に入りにくくなってきましたが「男!日本海」とか好きならぜひ。

謙虚。ぺこり。好き。

『鬼畜島』著:外薗昌也 最新刊6巻(12月10日現在)

まんがライフWIN 竹書房
ついに主人公覚醒!と共に、チーム家族勢復活!更に家族全員集合だハイチーズピーヨ!
この際主人公置いてけぼりでもいいので、引っ掻きまわしてくれ母ぢゃ!
(未読の方、置いてけぼりですいません)

『THE TOWN~復讐者~』著:加藤清志 全2巻

KADOKAWA エンターブレイン BEAM COMIX
まんだらけスタッフが好きなエッセンスが詰め込まれています。しかも何重にも!
1巻のプロローグと2巻のエピローグだけ独立した話だとしても秀作なのは間違いない。

『セキガハラ』著:長谷川哲也 全6巻

リイド社 SPコミックス
完結ラッシュの凄まじかった2016年でしたが、アレもあったしコレもあったし、完結記念だとみんな殿堂入りしてしまうので、この1本で。超歴史浪漫譚。
もう家康に会えないのが寂しい…。力属性最強の家康です、どうぞ。

『山田参助の桃色メモリー』著:山田参助 全1巻

KADOKAWA エンターブレイン BEAM COMIX
初期衝動&ファーストアルバムは最高なので!
過去にブログも書いてます↓

http://iwainohondana.blog85.fc2.com/blog-entry-564.html

菅原そうた「みんなのトニオちゃん」

2016年はかつて打ち切りとなった「クイズ☆タレント名鑑」が4年半の時を経て、「クイズ☆スター名鑑」となり再始動したことがうれしい一年でした。

終ってしまった大好きな作品は続編や再開を望んでしまいますが、これもそんなタイトルのひとつ。
3DCGによる「トニオちゃん」、ロックバンドB-DASHのジャケットやPVで見かけたことのある人もいるかと思いますが、内容はほのぼのとした雰囲気を持ったヘヴィなギャグ展開がてんこ盛り、ふざけっぱなしかと思いきや「おっ」と考えさせられる話もあり大変充実、おなかいっぱいで吐きそうです。
何度となくどんどん死んでいくトニオ、ジャイ太、スネ郎たちの日常はそれでいて楽しく、個人的には「ずっと読み続けたいなあ…」と思える一冊でした。

2017年もそんな漫画に出会いたいものでやんす。

『一変世界』明治カナ子 既刊2巻

魔物が棲む深い森に囲まれたガーデラン神殿。そこに住んでいる大巫女見習いで主人公のプーリョと、どちらかというとプーリョ寄りのブレダンを含む五賢人、外部勢力である太陽神殿からの使者、それぞれの思惑。
先代の大巫女の失踪。魔物と神の関係。などなど、世界観とミステリ的な謎の絡ませ方がうまい。
プーリョの付き人のミンミ=ポリポリとアガサのデコボココンビもいい感じ。どことなく「風の谷のナウシカ」の雰囲気も感じさせる、暗さと光のさじ加減がうまい、いいファンタジー。

『デストロ246』高橋慶太郎 全7巻

裏社会の連中が全員女子高生でレズで筋肉だったらという妄想だけでドライブしており(断言)、「キャハハ」とか「キッシシシ」とか謎の奇声を発しながら戦闘を心の底から楽しんでる女子高生が多数登場する全年齢向けの健全漫画。
「もはや一発の弾丸だけで死ねると思うな」「これ以上暴れたら、殺すぞ」「また茶番に巻き込みやがったら殺す」僕の知ってる女子高生とチョット違うけど、これはこれで最高です。

『弱酸性ミリオンアーサー』ちょぼらうにょぽみ 既刊1巻

それがジャスティストレインミリオンアーサーだ。詳しくは以前に書いたブログ記事をご覧ください。
http://iwainohondana.blog85.fc2.com/blog-entry-506.html

『ディザインズ』五十嵐大介 既刊1巻

モンサント(作中ではサンモント)と遺伝子組換え動物人間。
五十嵐大介風ガンスリガーガールでもあるのかな。ダンスと速度。人間の範囲から少し逸脱した生き物の感情や感覚を描く。ジャスミンかわいい。
遺伝子組換え絶対反対!という感じじゃないのでひと安心。五十嵐大介先生には、このままスピリチュアルとナチュラルと科学のギリギリのラインを突き進んで欲しい。

『起きて最初にすることは』志村貴子 全1巻

弟に隙があれば何でもズリネタにしてしまう兄と、昔はお兄ちゃんのことが好きだったのに、兄が他の男にフェラチオしている場面に遭遇し、それ以来兄を嫌悪するようになった弟。というのは建前で……。
「フェラチオ してるところ なんて 見せてごめん」「お兄ちゃんなのに 好きになったり してごめん」「夏央 好き…」p19 「あの思い出で オレはもう 一生 生きていけるから」「そんなこと言って どうせまた クソみてーなヤツと ヤるのがオチだよ おまえは」「怒るなよ 夏央」「怒ってねー」p162 夏央かわいすぎるでしょ…。という感想しかなくなる作品です。

『第七女子会彷徨』つばな 全10巻

女子高生のゆるい百合モノにこれでもかというくらいSF要素を突っ込んでいくスタイル。
基本はかねやんと高木の掛け合い漫才なので、その関係の始まりが描かれている「友達選定」はけっこう重要に思えますが、意外とあっさり最初からこんな感じだったという。「友達が割り振られる」という未来について、現在からの視点でそれに対し抵抗や順応を描くのでもなく、それが当たり前とされている日常が描かれているところが今作っぽくていいです。
「デジタル天国」にしても、それが倫理的にどうかとか、結局データでしかないんじゃないかとか、そういう議論はすっ飛ばして、なんとなくなあなあで運用されてる感じに意外とリアリティを感じたり。実はまだ全巻読めてないんですが、完結したし入れるなら今年だろうなということでひとつ。

『ぼくらのへんたい』ふみふみこ 全10巻

こちらも祝!完結記念ということで。
基本は、男の娘というかそれぞれ異なった理由で女装するようになった少年3人の葛藤が中心なんですが、「初オナニーかましたらぬいぐるみの声が聞こえなくなるとか!!!!どんだけ!!!!ロマンチックすぎるやろ…」だったり、「ぼくはねーちゃんに憧れて、ねーちゃんみたいになりたくて、ねーちゃんのことが好きだった唯ちゃんが大好きです(突然の告白)」だったりと、巻を重ねるにつれ僕の感想も荒ぶり、ふみふみこ先生に振り回されっぱなしでした。
第6巻では、「女の子になりたい」じゃなくて「女の子なんです」なんだよな。としみじみ思ったり。まりかかわいいよ!がんばれ!それにしてもあかねちゃんの天使っぷりよ……。

『終電にはかえします』雨隠ギド 全1巻

なぜ人類は男と女でしか生殖行為ができないように進化してしまったのか。
ふわふわ系かわいい女子とヤンキー風クール系女子の相性はなぜこんなにいいのだろうか。てういうかこの系譜辿れば、そもそも宝塚の男役と女役だな。それより前に遡れるかな。ぼくらが彼女たちのためにできることは何もないけど、百合漫画を読むことだけはできる。
いい百合漫画を読むと感想がポエムになるのはなぜなのか。

『さよならガールフレンド』に収録されている「エイリアン/サマー」 高野雀 全1巻

僕はこの短編を読んで、中学生のうちはセックスなんかしちゃダメなんだよ!そうなんだよ!もっと大切なことがあるんだよ!という思いを強めました。
あと友達がいない、もしくは同性受けが悪い子っていいよね……。ヤンキー女萌えも、最近のオタク向け作品に見られる「見た目はギャルだけど中身は清純キャラ」に通じるものがありますね。そこまであからさまじゃないけど。

『歌い手のバラッド』クジラックス COMIC LOで不定期連載中

読む前は、いまさら「歌い手」ネタはちょっと時期を逃しているのではと思っていたのですが、連載を読み進める中で考えが少し変わりました。いいか悪いかは置いといて、これは今後時間が経つにつれ「歌い手」という存在が語られる際の二次資料として、かなり影響力を持つだろうなということです。なぜなら、主に「歌い手」界隈の人間ではない私たちが「歌い手」という言葉から連想されるであろうイメージ、むしろこうであって欲しいという欲望通りのキャラクターがそこにいるからです。
僕らはこの連載を読み進める中で、聖亜がハントするJCに欲情しつつも、聖亜というキャラクターの言動ひとつひとつに満足していなかったか。思えば、クジラックスの名を世に広めた「ろりともだち」や「ロリ裁判と賢者の石」からして、読み手の欲望を幼女それ自体から半歩ずらすことの巧妙さは群を抜いていました。と、長くなりそうなのでこれくらいで。あと、単純にすっごい抜けます。

こんにちは。

2016年も師走ですね。
私は去年の11月に引っ越しをしましてそれまでの部屋より狭い部屋に移ったのですが前の部屋では大量のカラーボックスを本棚として活用させていました。
ですが今の部屋にそれを持っていくと荷物(ダンボール)が入りきらない恐れがあったためすべて処分し、実際引越し時には部屋がダンボールの巣窟となりぎゅうぎゅう
それを1年かけてやっとあと20箱、くらいのところに来たんです。
何が言いたいのかといいますと、本を買って読んだそばからダンボールに詰めて行くので(未だに本棚を買えていない)2016年に何を読んだかを結構思い出せないんです。
棚にあればわかりやすいんですが・・・
というわけでかろうじてダンボールに詰めていなかった本たちがベストなのかも・・・と思い紹介させていただきます。

竹書房 大川ぶくぶ ポプテピピック(2015年12月発売・続編のセカンドシーズンはまだ未単行本化)

まずは!!!

初め表紙で引いてしまい買うのを躊躇していたらあっという間に店頭から無くなり再版を涙して買ったという苦い思い出の作品。(皆さんそうでしょうが)
まんがライフWIN連載のポプテピピックが終了後、何とあのぶくぶ先生がサワヤカ青春ラブコメ物を?の触れ込みで登場した新作品を読んだところ主人公(女)が仮面バリバリ剥がしてポプ子登場!の際には「うおお!ポプ子!ポプ子ーーー!!!」ってなりました。(ポプテピピックセカンドシーズン)
好き嫌い別れるのかも知れないですけどたぶんあれが許せる(愛せる)のはやっぱりあのくりくりしたカワイイ特徴的な目のおかげなんじゃないでしょうか。同人時代から結構ファンで東方の本とか見てましたがあの頃からあの目はずっと同じです。カワイイって得ですね。

リイド社 大橋裕之 太郎は水になりたかった 2巻(2016年9月発売)

特徴的な目で思い出しました。
この作品に出てくる人たちは皆なにかしら抱えていてもの悲しいんですけど私にはいわゆる「青春」というものが皆無だったので大橋さんの作品からはいつも私の経験し得なかった「青春」の追体験、その他にも自分に足りていない、かつ人として重要なもの、そういったものを吸収させていただいているような気がします。私も水になりたいです。

講談社 諌山創 進撃の巨人 20巻、21巻(2016年8月、12月発売)

ここ最近の発売なのですが・・・
この記事を読んでくださっているような方ならほぼ既読とは思いますが念のため伏せて置きます。
とりあえず私の可愛いアルミンが20巻で○×△※&%%%という状態になりそして21巻でまさかの##|?!○×△・・・。そして終盤にはあの短いページ数で一体どんだけ?という怒涛の×△※&%%・・・ さすが○○○。ついに来たぜって感じです。(わかりますよね?)
このマンガがすごいに入って数年経ちますが最初の方の設定を忘れている自分が居ますので頑張ってダンボール片付けてまた読み直したいと思います。

ジュリアンパブリッシング カナエサト 永久指名おねがいします! 1~6巻(6巻は2016年6月発売)

少年漫画ではないのですが「あー早く(紙媒体での)7巻出ないかな、年内無理なの?何で?」ってそれはもうガラスの仮面の新刊が出ないことにイラ付くくらいのレベルで待ちわびている作品。
ひきこもりと人気ホストの恋というお話で、ひきこもり(十和子)がメガネ外したら美人パターンではあるのですが普段の自宅待機時の姿が本当にかなりキツい感じ(家の中で生活しているだけの姿の人)にちゃんと描かれていてそこに惹かれました。
お相手の蓮のオネエ言葉の良し悪しは私にはわかりませんが少なくとも学生時代に一騎人生劇場男の星座を読んで悦に入っていたような超硬派趣味の私が良くぞここまで懐柔されたと我ながら不思議でなりません。ジャンルとしては「TL」に入るようですが今のところは全然全年齢向けでそこも好印象の要素です。

秋田書店 施川ユウキ ヨルとネル(2016年10月発売)

少年スタッフU氏(私が施川先生ファンなのを知っている)「わきさんヨルとネル読みました?」私「まだちょっと…昨日買ったので」U氏「早く読んでください!泣いちゃいますよ!」→ 家帰って読む → あれ、本当に目に水分が?おや?

この作品についてはもうU氏、何も言わず、ただ読めとだけ言ってくれてありがとう、この一言に尽きます。というのも、ちょっとでもネタバレしてしまったらあまりにももったいなさ過ぎるからです。なので私も何も書けません。今年のコスプレデーはニット帽にリュック背負って「ネルです」と言い張ろうかなあと思っています。

ありがとうございました。

徳間書店 平尾アウリ 『推しが武道館いってくれたら死ぬ』

地下アイドル・ChamJamの人気最下位メンバー舞菜とそれを推すファンの女性・えりぴよさんの百合!
えりぴよさんは握手会で塩対応されても挫けない!全てのお給料を推しに貢ぐため自分は高校時代のジャージ!というガチっぷり。
たまに舞菜からのアプローチあったかと思えば空回り・・・もどかしい!
えりぴよさんと舞菜ちゃんはもちろんですが、ChamJam内恋愛が最高なんですよ。
人気投票、加入時期、年齢差・・・顔のいいアイドルたちの感情がぶつかる・・・最の高。

幻冬社 雪子 『ふたりべや』

女子高生がワンルームでルームシェア!いやこれもう同居ではなく同棲と言っていいでしょう…言いたい!
対外的には付き合ってないように見えるし、むしろ本人たちも付き合ってるとは思ってなさそうだけど、完全にデキてるんですよね。そこかしこにそういう描写が…私だけのフィルターじゃないと思うんですけど。
最近某アニメでアイキャッチで朝チュンかました空飛ぶ女性たちがいましたけど、この娘たちも本編の間のイラストでしょっちゅうイチャコラしてます。雪子先生は今月発売の百合短編集も期待大!

どっぷりすっかり付き合ってる百合カップルも好きなんですけど、付き合う前とか自認する前に雰囲気でイチャついてしまうカップルが好きなのかも…。それって身体の相性も最高じゃん(最低)。
2016年はこれまででも特に多く百合作品が出てきた印象ですね。さらなる飛躍を祈ります!
百合だってアニメで結婚してもいいと思う!

番外編 劇場版アイカツスターズ!

あんな濃厚な百合ラブシーン…女児アニメであることを忘れますね。

心に刺さった1冊~重版出来!~

今年の注目といえばドラマがかなり面白かった「重版出来!」をご紹介したいです。

小学館の力の入れ方が良く、実際の漫画家さんの協力で原稿のシーンを再現したりと、 漫画好きの心をくすぐる作品でした。
そして、これを見た漫画家、本屋の多くが呻いた言葉が「刺さる」。
この作品では以前にもあった漫画家の物語ではなく、出版社、漫画家、本屋など数々の視点から話が繰り広げられます。
だからこそ、本屋の視点にはかなり頷きました。
それでいて良いのが、必ずしも上手くわけではない現実やどうしようもないこと。そんな場所にも目を逸らしていないこと。
それが「刺さる」と思っても続きが読みたくなってしまう理由かもしれません。
実際に書籍に関わる仕事をしていなくても、年齢や職種の苦悩やそれでも熱い人々にはきっとどこかリンクする瞬間があるはずです。

特に好きな台詞がこの1巻にあります。
人気作となった漫画を見た客の一人が「なんでこんな漫画が売れてるのかわからない」と文句を言いながら通り過ぎています。
それを聞いていた本屋の人々が心で言います。

「売れた」んじゃない。俺たちが売ったんだよ!!!

良いながら、凄い良いドヤ顔の書店員たちが並んでいるカットが、見開きで心を鷲掴みします。
これに共感したのには、実はちょっとした実話がありまして…

ここからは本当にただの恥ずかしい実話なので読み飛ばしていただいても大丈夫です。
8年以上前です。かつての上司が、自分に相談無く急に週刊少年ジャンプを山のように仕入れてきたことがありまして当時まだ雑誌の取り扱いが少なかった宇都宮店で、急に「後はたのんだ」と言われた自分は思わず
「こんなの売れるんですか」
と文句を続けようとしたら、言われたんです。
「売れる売れないじゃない。売るんだよ」
…ぐうの音も出ない状態でした。
結局、意地になってジャンプを勉強し売りさばきました。現状は是非宇都宮店の店頭をご覧下さい。
そんなことがありまして「売る」という事には色々と考えることが多いです。
今は退社された上司ですが、今のこの状態を見られたら、きっと1巻のあのコマのようなドヤ顔をしてくださることでしょう。

昔話を失礼しました。
そんなこの1作、このタイミングでオススメしたのはもちろん中古本屋としての見解もあるからです。
ドラマが終わり、ちょっと落ち着いた今…そう、前半巻をまとめて買うにはお得な時期です!

「刺さるけれど面白い」
貴方の心にも活を入れてみませんか。

「現代恐怖館」 工藤正樹

2016年は漫画家工藤正樹にとって躍進の年となりました。
15年にアックスマンガ新人賞にて奨励賞を受賞。同誌にて新作を発表。そして「現代恐怖館」の発行と「年刊誌怪奇」の着想にはじまり作家へのオファーから出版までをほぼ一人で手掛けて見事成功したといえます。(1版は売切れたので重版出来)
「現代恐怖館」は作者が得意とする日常に潜む内なる恐怖と、何処か笑える間や人物の表情だったりが垣間見えて決してホラー一色ではありません。

そして作品の執筆(ページ)が進むにつれて、ペンタッチがどんどん太くなっていくのが面白い。
作画はカブラペンを使用し、読者にインパクトを与える目的で極太のラインで描かれていて「これでもか!」と言わんばかりに筆圧に力が込められているのが良くわかります。まるで版画を思わせる独特な味わいがあり、特に老婆の皺が木版の彫刻跡の如く深く刻まれており、恐怖を増長させる効果を生み出す要因になっていると感じます。

短編10編にプロローグとエピローグの書き下ろし、それと過去にリトルプレスで出版された表紙デザインの寸評があり、約200ページと読み応え充分。
2017年は「年刊誌怪奇」二号と商業誌から工藤正樹個人で単行本発売を期待しております。

「私家版妖艶画集」 花輪和一

1972〜1974年の東京三世社発行の「SMセレクト」などのエロ雑誌に描かれたイラストを中心に収録。未収録が多い花輪作品の中でもマンガ作品というよりかは、挿絵を中心としたイラストレーターの側面が強くうち出ています。
緊縛、拷問、覗きなど和の凌辱オンパレード。
冒頭のマンガ「真っ赤な若返り」は切れ長な目をした女と従者のせむし男が美貌を保つ為に銭湯で内々に奇っ怪な行動をとる怪奇短編作品。これだけでも読む価値あり!
他にもアングラ演劇を彷彿させる、まさに「妖艶」なイラストたっぷりでカラーもそのまま掲載されているのが嬉しいところ。
70年代の花輪和一を堪能できるアートな一冊。

ビッグコミックオリジナル増刊17年1月増刊号
花輪和一 「風水ペット」第1話

で、現在の花輪さんの新連載です。
2016年、年の瀬にやってくれました!
御歳70にして画業40年越え。アシスタントは付けずにアナログでずっと描き続けておられます。
連載前に絵コンテの描かれたノートを見せていただきましたが、ワニが軒先にいるイラストがあり、そこで大体のプロットは固まっていたようで、雑誌発売後ページをめくると巻頭から該当のシーンが出てきて感動しました!ちなみに名前はワニの「和仁子」。
ワニ以外にもいっぱい可愛い動物達が登場します。読むだけで幸せになれる!?

風水ペットならぬ風水マンガ!新パワースポットマンガ!!
風水とペット、そして世界情勢も巻き込んだ花輪ワールド全開でまさに、和一まっしぐら!2017年も猫まっしぐら‼

食いしん坊福田です。

ベストは食べ物にとらわれず、今年始まったマンガで推している作品を選びました。

官能先生 吉田基巳 イブニング連載中

「夏の前日」で40代女性と男子大学生の、心が痛くなるような真摯な恋愛を描ききった作者が、今回題材にするのは40代男性作家の、20代のミステリアスな女性への恋心。
まるで谷崎のような世界にひきこまれます。すぎるほどオーソドックスな設定なのに、この吸引力。

もしもし、てるみです。 水沢悦子 スピリッツ連載中

「花のズボラ飯」の作者が、スピリッツ初連載。
ミライフォンという、スマホ的な電話が普及している世界で、あえてネットに一切繋がらない、もしもし堂の電話を持ち、そのショップで働くてるみさんと、そのファンでミライフォンから転向しちゃった中学生男子。
見所は、もしもし堂の珍妙さ。今日の下着は何色?なんて質問にも大まじめに返答し、恋愛相談はじっくりきいちゃうお客様センターは、それだけでもしもし堂に入りたくなります。ネットよりエロトーク!
作者は「ヤコとポコ」でも、パソコンが過去の遺物扱いされ、車の制限速度が時速20キロの世界を描いているけれど、コンピュータやら便利機械やらはもしかしたらキライなのか?

不滅のあなたへ 大今良時 週刊少年マガジン連載中

己の出会ったモノに変態できる、正体不明の生命体(かも不明)がヒトのカタチを獲得したところから話は始まる。
死と再生を繰り返し、ナカミもほんの少しずつヒトに近づいたソレが生贄になりそこねた少女と出会う。まだ物語は始まったばかりだが、続きが気になってしかたない。

世界で一番、俺が○○ 水城せとな イブニング連載中

この三人で、誰が一番不幸か、競い合ってみませんか?
友達同士でゆったり飲んでいる時に、いきなりカワイコちゃんが現れて、そんな提案されたらどうします?主人公は、友人二人に彼女をつくっちゃえ、そしたら相対的にオレ不幸、って思いつくのだけれど、どうもそんなヌルイ展開は許されなさそうで。
ちなみに、一位になったら、なんでもひとつ願いが叶うという、チョーベタ設定。

約束のネバー・ランド 出水ぽすか 週刊少年ジャンプ連載中

自分たちが住んでいるのは単なる孤児院ではなかった。出ていく子どもたちは、里親のもとに行くのではなく、鬼の食料として出荷されていたのだ!
そんな驚愕の事実発覚から始まるこの作品、舞台は今より数十年後。未来の話なのか、まったくのパラレルワールドなのか、また、孤児院外に人間は存在するのか、世話役のマザーたちの実態は。様々な疑問はまだペンディングのままで、主人公たちの脱出計画がすすんでいく。

さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ

自分自身であるがゆえの苦痛を丁寧に描いた実録作品

タイトルのインパクトもさることながら、自分自身が抱えていた苦痛、そして現在へと至るまでの過程を非常にわかりやすい口調で描く作者初コミック。

心の問題に対する難しい病名や周囲の無理解といった他者から見た自分ではなく、ただひたすらに「自分自身」の心へと向き合い、それを等身大の言葉で語ることによって心にしんと染み入る作品です。思い通りにならない心と体は、程度はあれど誰もが経験したこともあるでしょう。

無意識な性への抑圧からの開放、そしてレズ風俗での初体験を経てから気付かされた「他者」との関わりの難しさ。自分自身であるがゆえに生じる苦痛に悩まされたことのあるすべての読者に伝えたい一作。