井上康彦×原作:ボブ・ラングレー 『北壁の死闘』(白泉社)
海外山岳小説の最高峰とも名高い名作ボブ・ラングレー「北壁の死闘」のコミカライズです。
正直、山岳小説や山岳漫画好きにもほぼ語られることがない。
主人公が抱えてるトラウマ、それを克服するあたりのタメがないというか、
人間ドラマの描写がうすく駆け足気味になっていたり、
極限状態の心理描写が希薄など、
端的に言うと小説のドラマチックさやおもしろさがあまりないというのが人気がない理由です。
たしかに残念なところはあるのですが、
漫画としては流通量が少なかったのであまり見かけることがなく、
大戦下ナチスの形勢を逆転する一手、原子爆弾開発の秘策の任を負った
中でのアイガー北壁登攀というあまりに無謀な登攀というのはテンションが上がります。
個人的に残念だったのは、ヒロインの女スパイとしてのエロさがなかったのと、
絶望的なところからも全てを成し遂げる主人公シュペングラーがかっこ良すぎること。
老後酒場で過去の栄光のはなしを悪態つくように話すも、
誰も信じてないし、聞いていない...
かっこ良すぎないこのラストが良かったんですが、
純愛のようにはなしを締めていてこれはしっくりこなかったです。
ただアイガー北壁に挑むドラマは味わるので読む価値はあります。
山岳漫画が好きな方へ。
コンプレックス 竹下