「たとえばだれかをしあわせにしてあげようって思って何かをすることが、
そのだれかのしあわせになるかどうかはわからないことなの。
キキとララはもちろんみんなにしあわせになってもらいたいって思ってるんだけれど、
まだしあわせってことの意味も、悲しみや苦しみがなぜあるのかってこともよくわからないの、
だから今はただみんなと仲良くなりたいって考えているのよ。」
<br>
<br>
リトルツインスターズ。
キキララという愛称で呼ばれるその双子は、ハローキティやマイメロディと並ぶサンリオの代表キャラクターです。
1975年生まれの長寿もその2キャラと並びますが、サンリオが込めたメッセージや物語性は唯一無二であると感じます。
キキとララはゆめ星雲のおもいやり星でうまれた双子のきょうだい星。
おとうさま星とおかあさま星に大切に育てられた二人は少しわがままで甘えん坊です。
このままでは大きくなっても立派に輝くおとな星になれないと心配したおとうさま星は、
おかあさま星と相談して二人を地球という星に旅に出すことにしました。
おかあさま星はキキに、空を飛ぶことができる星をリボンで結び付けて下さいました。
おとうさま星はララに、飛んでいく方向を決めることができる星のステッキを持たせて下さいました。
こうして二人は地球のみんなに会いに来たのです。
<br>
<br>
ただのキャラクターグッズと侮るなかれ、キキララにはこんな魔女っ子アニメのような物語があるのです。
親が子供を旅に出すと聞くと、一人立ちを促しているのか?と思いますが、
サンリオはここに、人は一人では生きていけないというメッセージを込めました。
キキ一人では空を飛べても方向が定まらずきりきりまいしてしまう。
ララ一人ではステッキからお菓子を出すことしかできない。
いちご新聞読者の応募によって決められた「キキ」と「ララ」という名前も、
二人一緒でキラキラ輝く、という意味を込めて名付けられました。
身長は二人合わせてお月さまくらい。
でもこの世界のお月さまは顔があって 二人と一緒に眠ったりしているので、
私たちの知っている月とは違うみたいです。
キャラクターに個性として「イメージカラー」が存在する事が当たり前の昨今と比べると、
1976年前後のサンリオキャラクターのカラーリングは自由です。
キキララは様々な髪色をして、キティが青や黄色のリボン、ミミィが赤いリボンをつける事もありました。
次第にキキは青い髪、ララはピンクの髪、キティは赤いリボンでミミィは黄色、と色が固定されていきます。
このパーソナリティを色で表す文化は、1975年に「ゴレンジャー」が登場して以降続いている
スーパー戦隊シリーズの影響も関係しているのでしょうか。
森永からはキティを差し置いてキキララとパティ&ジミーのおまけ付お菓子が発売されていました。
<br>
<br>
80年代。
世は空前のファンシーグッズブーム。
この頃はサンリオから怒涛の勢いでヒットキャラが生み出されました。
けろけろけろっぴ、タキシードサム、チアリーチャム、ゴロピカドン、ザ ボードビルデュオ、
マロンクリーム、ハンギョドン、ぽこぽん日記、みんなのたあ坊、フレッシュパンチ...
素朴で優しい雰囲気のニューフェイスに囲まれたこの時代、キキララは少しだけ息を潜めていました。
1989年にキキララは「キキとララの青い鳥」としてアニメーション映画化され、
その後90年代後半にかけてOVA作品が次々と発表されていきます。
この時期のキキララははっきりしたカラーリングで表情が分かりやすい、アニメっぽいデザインになります。
1990年のピューロランドのオープンに伴った着ぐるみ化や、
デパートの催事場等で行われたサンリオフェスティバルでのワークショップ等でも馴染むデザインでした。
そして90年代後半となると世はいわゆるコギャルブーム。
女子高生達がストリートで流行を動かす時代。
彼女たちの手にはキティちゃんとハイビスカスで彩られたケータイが握られていました。
学生には欠かせないペンケースやメモ等のステーショナリー、ケータイやプリ帳をデコる立体シール、
スクバの中までちょ→カワイくなるミラーやコスメポーチ等の身だしなみアイテム、渋谷で目立てるチョベリグなサンダル...
カワイイにMajiでKoiする彼女達。身の周りを全てサンリオグッズで固める勢いの子も少なくありませんでした。
そんな時代に後押しされて、キキララは次第に勢いを取り戻していきます。
1980年代末~90年代のキキララ。 OVAにも登場した「ネムリン」というネコのようなキャラがたびたび現れるのもこの頃の特徴。
<br>
<br>
90年代頃から、購買層の焦点を女子高生を中心とする若者に絞ったキャラクターグッズ展開が多くみられるようになりました。
日本のカワイイが多様化し、児童だけのものではなくなる動きを敏感に察知したサンリオは、
1996年に大人向け店舗「Vivitix」一号店を渋谷に構えます。
そうした流れにより、2000年代からは大人も使える落ち着いたデザインのアイテムや、
70年代のアイテムを復刻した「昭和レトロ」なグッズも多く登場するようになりました。
2010年にはサンリオ創業50周年記念として「ゴールデンメモリーズ」というシリーズが展開され、
キキララの70年代アイテムを忠実に再現したグッズが発売されました。
<br>
<br>
2010年代。 「ゆめかわいい」というカワイイの新概念がネットを中心に広まります。
それはふわふわとしたパステルカラーで「少女の夢みたいに可愛い」、
メルヘンで幻想的な、まさにキキララのイメージとぴったりな世界観でした。
そこでキキララの世界に流星の如く登場したのが、ゆめかわモチーフの代表格、ユニコーンです。
大小様々なぬいぐるみを中心にグッズ展開され、ファッションビル等で期間限定ショップがオープンしました。
山積みにされたぬいぐるみがみるみる減っていくほどショップは大盛況。
ゆめかわと親和性の高い原宿ファッションが好きな女の子や、海外のユニコーンやフェアリー系アイテムが好きな子からも高い人気を得て、
「ゆめかわ」といえば「キキララみたいな」と形容されるほど、世界的にゆめかわいいイメージを確立しました。
また、グローバルに画像を発信するSNSであるInstagramと、「インスタ映え」するコラボカフェの流行により
サンリオコラボカフェの写真等が世界中に拡散されるようになりました。
創業当時から世界を意識しているサンリオですが、
まだ十分にネットが普及していない時代は、キティやチョコキャット等のキャラクターグッズをビビッドカラーを使ったデザインにしたり、
ピッケビッケ等の海外限定キャラを作ったりして海外向けに仕様を変えていました。
しかしネットが普及し、やがて個人がスマホを持ちインスタで気軽に世界へ発信できる時代になると、
日本人の身近なカワイイが国外でそのまま受け入れられ始めました。
今では日本らしい淡い色合いのキキララや、
キュートな中にちょっぴり毒のあるクロミやアグレッシブ烈子等のキャラクターが海外でも人気を博しています。
そして2020年現在。 アイドルやキャラクターの一人一人に色があてがわれる、「推し色」という文化が育ちました。 サンリオもその時代の流れに合わせ、同絵柄アイテムの色展開は殆どせず、 キティは赤、マイメロはピンク、ポムポムプリンは黄色... といった具合に、各キャラクターのイメージカラーに合わせたグッズ展開をしています。 キキララのイメージカラーは、キキの髪のライトブルーとララの髪のピンクを混ぜ合わせた淡いラベンダーカラー。
45年の時を経ても、そしてこれからも、 二人の「いつでも一緒」は変わりません。
中野店 山村