給食で出たパンを食べた生徒の目が見えなくなり、耳も聞こえなくなり、最終的に死に至る... 時代的に公害を扱った社会派作か？と思いきや相手は悪の組織、全員が狂った境遇の中で一人正気と正義を失わぬ様主人公は戦いますが...
という、目まぐるしくうつろう展開、グニャグニャと不定形なフリーハンドのコマ割りが不安を煽る本作、何が真実なのか？誰を信じたらいいのか？と読者のこちらも不安になりますが、ラストのどんでん返しに全て持っていかれます。なんと挑戦的かつ好戦的、全方位に喧嘩を売るようなソリッドさ。週刊少年ジャンプの当時の読者層として一番多かったであろう少年達、完全に置いてけぼり。大人が読んでもドキドキしてしまう。震えが来ますね。 しかし手塚先生、この時すでに大・大大御所。こんな尖った挑戦なんてしなくとも十二分に確立された地位や人気はあった筈。
手塚先生が大御所になってからの他漫画家先生への嫉妬エピソードって色々なところで語られていますが、それも含めてあらゆる意味で常に初心を忘れず第一線でトガり続けたからこその手塚先生だし、この泥だらけの行進という作品だよな...と思います。
まんがの神様でも忘れなかった心を私たち凡人が忘れていい筈がない！ そんなウブな初心にかえることが出来る一作。内容的に今後もおそらくどこかに収録は難しそうなので、是非お手元に！ 本自体の状態はよくないですが「泥だらけの行進」を読む分には問題なく、むしろ読み用にキープしたい方におすすめです。
札幌店 いわき
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