手塚治虫の命日を「まんがの日」として、今年はまんだらけ全店で関連アイテムの販売イベントを行うことになりました。
そんなことから、若い娘に話しかけるいい理由ができたということで、お店で働いてくれている10代20代の女の子に、「手塚治虫の漫画読んだことある?」と聞いてみました。
すると、アトムやブラックジャック、ジャングル大帝といったキャラクターとしては知っていても、漫画のほうはまだ読んだことがないという回答が多かったです。
今回の「まんがの日」をきっかけに、まだ読んだことがないという若い方が、手塚を手に取るきっかけになればいいなと思います。
しかしいくら読んだことがないと言っても、みんな手塚治虫という存在は知っています。
そこで今日紹介いたしますのは、手塚の自伝的な短編を収録した大都社「紙の砦」。
僕は子供の頃テンテンくんが大好きだったのですが、最近作者の小栗先生がこの作品のシーンを思い出すと頑張れるとツイッターでつぶやいてました。
センター試験で採用されるなど、とりあげられることが多い作品です。
表題作となっている「紙の砦」は、初出時のコピーを引用すれば「激動期にあって、なお激しく燃える漫画への情熱!全読者必読の入魂作!!」なのですが、戦争末期を舞台に手塚自身をモデルにした人物が主人公。
(参考画像:週刊少年キング1974年9月30日号より)
手塚自身の戦争体験が強く反映された漫画です。
主人公は、工場での動員中に隠れて漫画を描いたり、トイレに漫画を貼ったり、罰としてやぐらに登って敵機の見張りをさせられたりします。
このあたりの場面、キングに掲載された1974年より10年ほど前に刊行されていた鈴木出版の全集の巻末文「わが思い出の記」において、氏は自身の経験として語っています。
(参考画像:鈴木出版 手塚治虫全集7 0マン6より)
手塚の凄さはいろいろありますが、現役最前線時代の長さもそのひとつ。
終戦直後にデビューしてから、亡くなるときまで複数連載を抱えた、まさに死ぬまで現役の漫画家でした。
誰でも知ってるアトムは51年、最近またアニメ化されたどろろは67年、復活の狼煙となったブラックジャックは73年。
紙の砦を読むと、手塚治虫にとって生きるとは漫画を描くことであり、死ぬまで描き続けたそのエネルギーの源泉が垣間見えるような気がします。
この大都社のHardComicsやStarComics、手塚の中でも奇子やきりひと讃歌といった青年誌に掲載された作品から、ユフラテの樹など高一コースに連載された作品も収録されていて渋いラインナップなんですが、手にとりやすい価格帯で長編ものではないので、ちょっと手に取る分にはいいラインです。
しかし美空ひばりが国民栄誉賞を受賞しているのに手塚が受賞していないのも不思議な感じがします。
手塚も美空同様、終戦直後から昭和の終わりまで現役でい続け、ともに89年に亡くなりました。
戦後の大衆文化を支えた2人が平成元年に亡くなっているのは、昭和の終わりを象徴しているように思えてなりません。
その平成も終わり令和の世に。
まんがの日に改めてまんがの神様が残してくれた作品を読んでみてはいかがでしょうか。
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名古屋店 織田