トーチweb推しにはたまらない、空気の温度を感じる短編集です。
どの物語も現実と非現実が自然に合わさるのですが、それが絶妙に上手い。
きみが透明になる前には恋人が透明になってしまうのですが、彼が食事の時に仕事が忙しくなると険しい顔をする。その顔を透明になったことで見なくてよくなったことにホッとしている彼女......といったふうに。
透明になってしまったことは悲しいのに安心してしまったという矛盾に彼女は葛藤します。
たいせつなことのなにもかもいやになって、それでも綺麗な朝とコーヒーの美味しさに感動しながらも一方でクソ上司！クソエンターキー！と反骨精神に溢れていたり、
女性的な感性がキラリと光る短編集です。
読み手にするりと共感させる画面の切り取りも素晴らしく、体験したかのような何気ない会話のやりとりは人物描写が細やかです。
ストーリーを構築する上で
キャラクターが似たり寄ったりになることもありますが、キャラ被りは一切なく、それぞれの登場人物の思考にここは同意できないけどこの考えは共感できる、と自分でも会話に混ざりたくなります。
ちなみにこのストーリーを通してカッコよく痺れたのは海の底からの彼氏なので、彼の金言に注目されたし。
北國
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