唐突なのですが、宇都宮店のある栃木県はやたらと雷が多かったりします。 だからこそというと変ですが、この季節は雨雲が立ち込めるとドロドロとした物語を部屋の隅で読みたくなります。 (この文章を書いている最中も、建物の中なのに雷雲の低い音が聞こえてきていまして、停電の恐怖とも戦っています) そんな時のテッパンといえば幽霊・怪談ものでしょうが、ここは人間の、じわりとくるミステリーものをご紹介します。
中村明日美子「ウツボラ」全2巻
中村先生といえばBLコミックで知っている方も多いかもしれませんが、 この作品、だからといって男性が遠慮したらもったいない!と断言させて頂きます。
物語はとある1人の女性"朱"の自殺から始まります。
有名な大御所作家・溝呂木は彼女の自殺の連絡を受けて病院へ向かいます。
実はこの先生、長いスランプに苦しんた末に不倫相手だった朱に代筆をしてもらっていました。 いわゆるゴーストライターです。 この事実を知るのは彼女と自分だけ
彼女が自殺した理由は分からない。この関係に不満があったようには見えなかった
そして病院へ向かった時、朱そっくりな女性に出会います。
彼女は朱の妹の"桜" しかし、姉妹がいたことを誰も知りませんでした。
彼女は代筆を、不倫関係を知っていたのか? 密かにおびえる先生に、桜は朱の代わりとしての関係を求めます
自殺の真相を追う警察、 先生の決断 桜の真意
はたして愛憎劇の先に何が待つ彼女は"朱"か"桜"か
登場人物の本質が見えないからこそ面白い1作。 このドロドロな物語を中村先生の耽美でスラリとしたタッチが淡々と描写するからこそ 先生の不安やぐらつく愛情、正体不明の桜という存在の不気味だけれど美しい姿が引き立つんです。
そしてこの1作、読みきった後にちょっと推測だったり考える時間を取ることをオススメします。 しばらく現実に戻れなくなります。
以上、ご紹介はまだまだ外がゴロゴロいってます宇都宮店のタキタでした。
宇都宮店 滝田