2008/9/13 21:00掲載
まんだらけ 中野店 4F 大予

老子、地獄



『老子・列子』 徳間書店 ¥630
『老子の読み方』 月洞譲著 祥伝社 ¥210
『タオ 老子』 加島祥造著 筑摩書房 ¥840

いまどき中国古典を教養として知ってゐても、大して役に立ちやしません。
いきなり「谷神(こくしん)は死せず、これを玄牝(げんひん)と謂ふ(『老子・列子』44頁)」なんて老子から引用してそらんじたところで、「へェ変はった趣味をお持ちですねェ」と呆れられるのが関の山であります。
教養としての古典知識なんちふものに今や全く価値は見出せないのであります。
しかし、これを教養でなく実用としてみればタチマチにして千金の輝きを放つのですから驚きです。
たとへば「善く結ぶものは縄約なくして解くべからず(『老子・列子』71頁)」といふ言葉があります。
「結び上手は縄を使はないで結ぶから、ほどきやうながない」といふ意味です。いかにも老荘らしいパラドキシカルなもの云ひではありませんか。
これを応用するとどうなるでせう。
たとへば或る人はかう云ひます「人の心を束縛するといふことは出来ない。しかし逆に束縛しないことこそ最強の束縛ともいへる。なぜなら束縛しない人からは遁(のが)れることも出来ないのだからね」
かういふ応用が的を得てゐるかどうかはともかく、老子に始まるタオイズム思想には普通に生きてゐては到底思ひつかぬやうな逆説的発想がギッシリ詰まってゐるのであります。
憂き世を生き抜くヒント集としての最強の実用書『老子』、是非一度は目を通して頂きたいと思ひます。
徳間版『老子・列子』は原文、読み下し、現代語訳付でテキストとしての体裁です。ついでにこれまたタオイスティックな発想のカタマリである『列子(抄)』もついてます。
あとは『老子の読み方』は実用的な解釈本、『タオ 老子』はいま流行りの自由訳とか超訳とかいはれるもので若干ウザさも感じますが、まァ選択肢は多い方がいいといふことで。




『地獄を読む』 高橋睦郎 ¥2100
『地獄の思想』 梅原猛 ¥210
『地獄艶魔経』 小野孝二¥210
『地獄変』 澤田瑞穂 ¥315

地獄は本当に存在するんでせうか。昔お坊さんにそんな質問をした男がゐました。
僧侶曰く「地獄はある」。
それを訊いて男は反論しました、「仏教ではすべて「空(くう)」なのだからそんなものあるハズないでせう?」
この男は自分も「空」であるといふことを忘れてゐます。
つまり今すぐ自分の存在を消して「空」になれるやうにでもならない限り「地獄」だってツネれば痛いくらゐのリアリティを以て存在します。
みんな都合よく考へたいのですね。

また別の時代に別の男が別の僧侶に質問した。
「和尚さんは生まれ変はったら何になりますか?」
「牛だね」
「その次は?」
「地獄へ行くだらう」
「はゝゝゝ、まさか高僧のあなたが地獄へ行くなんて、まさか、はゝゝゝ」
「では私が地獄へ行かなかったら、一体誰れがあなたを地獄マデ救ひに行くのか
ね」
……。

江戸時代の有名な白隠禅師は子どものころ見せられた地獄絵図が怖くてその恐怖から逃れるために出家して、最後は「南無地獄大菩薩」なんて名号を考案したりするホドに地獄に拘泥してゐたさうです。
あれホドの偉丈夫が怖れる地獄とは一体なんなんでせう。
人が地獄について想ふとき、どうして恐怖だけでなく妖しい魅力を感じたりするのでせうか。
仄(ほの)かに地獄臭を漂はせるやうな人にどうして甘美なものを感じてしまふのでせうか。
地獄への探求は尽きることがありません。
上掲書がそのヒントになるかも知れません。

(担当 山口ケン)

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