3月某日、安部慎一氏から古川益三に一通の封筒が送られてきた。中には一冊のスケッチブックが入っていた。
そこには・・・静かなる崩壊と、それでも描かざるを得ない業が封じ込められていたのだった。
古くからの読者はご存知かもしれないが、安部氏はこれまでもまんだらけにこういった形で作品を寄稿してきた。福岡県田川市での静かな暮らしの中でも、内なる声に耳を傾けるまま、ペンを走らせてきた。老境においても製作意欲は衰えて
はいない。
漫画以外でも、デッサン画、油彩など様々な表現方法で妻である美代子女史や、心象風景を描いてきている。「美代子阿佐ヶ谷気分」の連載開始から、すでに48年が経過しており、美代子夫人を描くことは安部氏のライフワークの一つになっていた。安部慎一にとって若いころの美代子夫人の裸体は美の象徴である。心の安寧を失った時も、漫画を描かなくなった時期も、そこに美代子夫人はおり安部氏の筆によって絶えず描かれてきた。今回の主題も、たしかに美代
子夫人が大半である。
今回安部氏が用いた画材はクレバス。画帳にまとめられたそれは、本人の心象と意欲をも反映しており時系列ともなっている。ページをめくるにつれ驚きが隠せない。何かが欠けており、何かが過剰だ。
まず何も言わずに、最初の数枚を見てほしい。
1枚目「机の上」、90年代の現代美術のような先鋭さや色彩はあきらかに今までの安部慎一の画風とは異なる。3枚目の「お金とハサミ」は居心地の悪さ、背筋に寒気が走るような衝撃がある。
4枚目「68才」は自分を手鏡で映しながら描いた自画像。手鏡を持つ手までが描かれている。そして背景の色。また、年齢から最近描かれたものであることもわかる。
それに次ぎ、67歳になった美代子夫人が、そして若かりし頃の美代子夫人が続く。
が、次に現れるのは唐突な狂気だった。「絵が下手で〇〇死」と読める不穏な文字、狂日というタイトル、中央に落款、そして死人のような黒い顔貌・・・。そこから数枚風景画や美代子夫人が描かれるが、徐々に線が少なく、色数も落ちていく。あきらかにトーンダウンを感じる。何枚か、何を描いているのかわからないものもある。
美代子夫人の裸婦画もページが進むにつれシンプルさが過ぎ、そこにはクレバスの利点はない。裸婦画にも関わらず美代子夫人が吹き出しで話しており、しかもそのセリフが消されている。そのあと何枚も美代子の顔が描かれない。これは意図的なのだろうか。
そしてラスト近く、「彼らの棲む家」という家屋が描かれ、「地獄のあきべや(?)」「けものみち」と記されている不吉な絵が登場。最後の数枚はクレバスを捨て、サインペンで描かれた美代子夫人が続き、完と大書きで記されていた。
これはなんなのだろうか。何だと思うのが正しいのだろうか。今の安部慎一は何度目かの再評価の機運が高まっている。しかし今回の「これ」こそが現在の安部慎一なのだ。
安部慎一のことを知っていても、いなくとも、衝撃を受けることには間違いないと思う。一人でも多くの人に実物を見てもらいたい。
開始価格
A1 開始:5000円
A2 開始:4500円
A3 開始:4000円
A4 開始:8000円
A5 開始:12000円
A6 開始:10000円
A7 開始:3000円
A8 開始:3000円
A9 開始:4500円
A10 開始:8000円
A11 開始:5000円
A12 開始:4500円
A13 開始:4500円
A14 開始:5000円
A15 開始:1500円
A16 開始:2000円
A17 開始:6000円
A18 開始:4500円
A19 開始:4500円
A20 開始:1500円
A21 開始:3000円
A22 開始:2000円
A23 開始:3000円
A24 開始:1500円
A25 開始:2000円
A26 開始:2000円
A27 開始:3000円
A28 開始:1500円
A29 開始:1500円
A30 開始:1500円
A31 開始:2000円
A32 開始:1500円
A33 開始:1000円
A34 開始:1000円
参加方法
- 入札をご希望の方は、スカイルームのギャラリーコーナーまでお越しください。
入札方法
- 入札は専用の入札用紙を使用します。入札は2枚札を使用します。
- そちらの用紙に「商品No」「氏名」「入札ID」「1番札・2番札の入札金額」をご記入ください。
- 入札金額は100円単位となります。ご記入後入札ボックスに投函してください。
- すべての商品は5/4の11時入札受付開始、その後2回に分けて開札いたします。落札結果の発表を会場に貼りだしますのでご確認下さい。
- なお最高入札額が同じ場合、2番札の入札金額が高いほうの落札となります(2番札も同じ場合は抽選となります)。
- 開札発表のすんだ商品は随時レジにてお会計いただけます(現金・クレジットカード等でのお支払いが可能です)。なおお会計は当日のみとなります。
- お会計の際は、「入札ID」を提示のうえ落札したお品物の「商品No」をお知らせください。その場で商品をお渡しいたします。なお商品の発送をご希望の際は係員へお申し付けください。
- まんだらけZENBU第92回大オークション大会オークションIDを取得の上、葉書に下記事項をご記入の上ご投函ください。
- 会場参加者優先のため、葉書の場合は1枚札のみとさせていただきます。なおネットからは入札できません。
- 1枚札は購入希望上限金額のみとなりますので、その金額が最上位だった場合は指定金額での落札となります。
お名前、ご住所、お電話番号、第92回のオークションID、希望品の商品番号と、1枚札の金額
をお書きの上、5/1必着で
〒164-0001 東京都中野区中野5-52-15
ブロードウェイビル内
まんだらけ中野店 官能劇画入札会宛
までお送りください。
お問い合わせは、中野店 岩井まで