ヘンリー・ジェイムズや、セオドラ・ドライサーあたりに始まり、ヘミングウェイ、フィッツジェラルド、フォークナーなどの失われた世代が続々と傑作を生みだした20世紀前半。
後半はさらに目まぐるしく、ジャック・ケルアックやウィリアム・バロウズらビートニクが疾走し、トマス・ピンチョンやジョン・バースらのポストモダン文学、レイモンド・カーヴァーのドライなまでに切り詰めたミニマリスム的手法......アメリカ文学は、前衛ながらもポップさを失わないことで、世界文学の最先端をひた走ってきました。
マーク・Z・ダニエレブスキー『紙葉の家(House of Leaves)』は、そんな20世紀アメリカ文学の大トリを飾る怪作です。
盲目の老人が残した、「紙葉の家」という不可思議な住居にまつわる文書。そしてそれにまつわる膨大で衒学的な注釈で構成された小説、とだけ書くと、ポストモダン文学に慣れ親しんだ読者にとっては、おそらく思い当たる小説がいくつも浮かんでくるでしょう。しかし、この小説が異質なのは、その執拗なほどの凝ったレイアウトにあります。
ページを開けば、このように、時には前衛詩のような、ドキュメンタリーのような、ヴィジュアルノヴェルのようなテクストが。読者は、この前衛的なテクストを前に、本をさかさまにし、鏡文字を反転させ、謎の暗号を解読したりしてなんとか読み進めて行かなければなりません。
しかしそのうち、この本の構造自体が、物語のキーとなる、外観は変わらないのに内部の寸法がおかしくなっていく謎の家のあり様と重なってくることに気づくでしょう。
単一的・直線的な読みを否定し、開かれた解釈の可能性を提示するポストモダンの小説のなかでも、ここまでなんでもありで過激な作品はそうはありません。それでも、小説そのものは怪奇ものとして一貫しているところが、ポップなアメリカ文学の矜持といったところ。
装丁が小説と密接に関わりあっていること、当時の出版元のソニーマガジンズが消滅していることから、再版が難しく、入手困難となっている一作。ぜひ、年末年始の特別な読書に、いかがでしょう。
上記の商品は12/30(月)より海馬にて販売。12時から店頭販売。通販での取り扱いは15時から開始となります。事前の取り置きはいたしませんので、ご了承ください。
中野店 原
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