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兎月書房より水木しげるによる単行本「飛び出せ！ピョン助」。

元々奥付に当該記載が無い仕様なので、正確な発行年月日が解りくいのですが昭和33年発表の作品とされています。
33年といえば「ロケットマン」などと並ぶ、極最初期の作品。
1編10頁程度のオムニバス形式で、

十六代目浦島太郎と、
太郎が浦島家に伝わる玉手箱の中に入っていた文書に従い、穴を掘ったら出てきた不思議なビンの中に入っていた、ピョン助。その他二人にまつわる個性豊かなキャラクターたちが巻き起こすドタバタ劇を描いた楽しいギャグ作品となっています。

何となく、舶来の、ワーナー等の、その辺りの影響を色濃く感じるキャラの造形ですが。
作品が発散する風味・独特の作画は間違いなく水木テイスト。

幽霊にソースを掛けて食べるとか、実に水木サンな気がします。
ストーリーの起・承、辺りが殆ど食物と、それに対する恨みで展開するのが特徴的。
かつ、先生、この頃飢えてらっしゃったのかしら、と妙に納得したりしなかったり。

そしてやはり、御馳走といえばテンプラ。

主人公ピョン助や途中、かなり適当な推理で幽霊の子供を助けるブル探偵等、後の作品(「ブル探偵長」「カラス氏とピョン助」等)にも引き続き登場・使用されるキャラも多く、水木初期ギャグ作品の中でも見逃すことの出来ない一編かと。

A5判並製/本文:ノンブル最終96頁、表紙含め104頁/当時定価:100円。

最近、
貴重な作品の復刻が続き嬉しい限りの水木初期作品界隈ですが、諸般の事情により復刻は難しいと言われるタイトルの一つです。

・兎月書房水木しげる『飛だせ！ピョン助』税込み￥420000

状態：貸本並～
糸綴じ補強、ビニカバ跡のある貸本個体ですが書店印等は殆ど無く(地部分に1箇所のみ)、またカバー・本体共に致命的な欠損・ヤブレは有りません(第7・43頁に若干本文にかかるヤブレがある程度)。

後ろの方の見返しが若干しなしなになっている印象(貸出票か何かを蒸気等を利用して剥離させた名残でしょうか？)ですが全体として、かなり良好な状態の個体という印象。