井上涼さんは、NHKの番組「びじゅチューン!」にて国内外の"美術"をモチーフにしたアニメーションを制作しているアーティストとして人気の方です。今回は学生時代のものを含めた井上さんの映像作品を鑑賞しました。
井上さんの出世作は、大学の卒業制作としてつくられた2007年の「赤ずきんと健康」という動画です。「健康」をテーマにつくられたそうで、主人公赤ずきんがやる気をなくしてしまった脳の精を元気づける...というシュールでポップな5分ほどの作品です。この「赤ずきんと健康」は、BACA-JA(バカジャ・学生映像コンテスト)で佳作を受賞し、ニコニコ動画に(無断)転載されるとネット界隈を中心に注目を集めました。2011年にはトロント・ジャパニーズショートフィルムフェスティバルで映画祭賞を受賞し、海外からも評価を受けています。
作品制作のほとんど(作曲、歌、台詞、イラスト、編集など)を井上さんは一人で行っています。その分パーソナルな作品が数多くあり、自身がゲイであることを表現したものや、友人の結婚式に送ったものなども公開されています。中でも「出荷夫婦」は、体重が110㎏あった新郎が新婦のお父さん(養豚場経営者)から「出荷対象だな」と言われたところからダイエットをし、プロポーズに至るまでがリズミカルにまとめられていておもしろかったです!また、自身の経験をもとに製作されたであろう「確信」という作品は、同性への恋心を少しコミカルに描きつつも切なさがあり、個人的には一番胸に刺さりました。
私自身も以前から「びじゅチューン!」は知っていたのですが、まとめて鑑賞してみると、井上さんの制作ペースの速さや、既存の観念に縛られない発想に改めて驚くことが多くとても面白かったです。今後もびじゅチューンでは新作が発表されていくようなので注目していきたいと思います!
高畠