ガレージキット、略してガレキは、企業の量産するプラモデルに対し、原則的に個人が少数生産した模型キットをいう。
今回乗秀さんの「ガレージキットのススメ」は、ガレキを作ったことのない初心者に向けて、キットを買うところからその素材の説明、実際の作り方、海賊版キットの見分け方まで、明快かつ詳細な手引きを与えてくれる講座でした。
(概要)
ガレキの素材は、扱いが容易で安価という点から最も一般的にレジンが使われる。ただ、抜き型のシリコンが劣化しやすいため、また版権取得にチェックや制限を受けるため、少数しか作れない。
流通は、ワンダーフェスティバルなど販売イベントでの売買がポピュラーであり、店舗販売メーカーはボークスや海洋堂など少数に限られる。
製作は、パーツチェックから、表面処理、パーツの軸打ちなどと進んでゆく。塗料がきちんと食いつくよう、レジン表面についたシリコン型の油の洗浄や丁寧な下地づくりが肝要である。塗りが失敗したときは、レジンはシンナーには溶けないので、シンナー液に浸せばやり直しが可能。
一貫して語り手の経験値の高さが際立つ講義でした。素材や流通などさまざまな問題の解決において、何ひとつ偶然に頼ったなんとなくのものがなく、筋道の立った必然が終始くっきりと浮かび上がってくる点に、非常な美しさを感じました。
また、具体性に溢れ、たとえば異なる塗料の匂いを嗅がせていただいたり、もとのキットの肌色と、塗料をエアブラシで吹きかけたときの肌感と、その違いを並べて見せていただきました。海賊版キットのきめの粗さを手にとって見ることが出来、また、カッターでバリを落として表面をなめらかに研いでゆくのを目の前で見ました。額面通りにやると安定しない軸打ちを、このガレキの場合自分はどこから打つかなども教えていただきました。
説明書に関しても、この程度が一般的だという、色を塗った完成品の写真が一枚ついているだけのものや、人気メーカーの唯一無比といえるほど懇切丁寧な解説などが実際に登場し、それぞれを見ることで、ガレキという存在のあり方、人気メーカーの格など実際の空気がリアルに伝わってきました。
ガレキをつくる魅力は、自分で地図を描いて目的地をつくるようなところだと乗秀さんは言います。たとえば取説に添えられた写真だけでは目の色さえわからない。そこで原典のキャラを知りにゆく。自分のイメージの色を探したりする。写真より先の理想へ向けて進んでゆく道行きなのだそうです。
乗秀さんはガレキ作りを復元作業や発掘作業にたとえますが、それはつまり、イメージの中にある姿をこの現実のものにしてゆく、理想を具現化してゆく作業を指しているのだと思います。
ガレキ入門としてこれ以上のものは考えられない、卓抜で魅惑的な講義を受けさせていただきました。本当に有難うございました。






池田