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11/27(日) 倒産したゲーム企業から学ぶゲーム史~【星をみるひと】【鋼鉄帝国】を作った会社のお話~

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今回のソドムスクールは、1本のファミコンゲームを中心に、今はなき或るゲーム製作会社の足跡を振り返る授業でした。乗秀さんはこのゲームに魅せられて、十五年の間それを追いつづけ、資料を収集し、関係者を捜し当て、その魅力を広く発信しているといいます。

まずはこの会社とゲームの概要を記します。

〈ホット・ビィ〉・・・1983~1993年に活動したゲーム製作会社。幾つものゲームを製作・販売したが、ヒットに恵まれず倒産。だがその中の1本のゲームが、発売後30年以上経った現在、ゲームマニアにおいて特異な位置を占め、熱狂的なファンを生んでいる。タイトルは「星をみるひと」。人いわく、伝説のクソゲー。

  • ファミ通WAVEでは、クリアしただけで殿堂入りが認定。
  • 移動速度がナメクジ
  • 歩くことと死ぬことができるゲーム。
  • 最悪のゲームシステムと魅力的なSF的世界観を兼ね備えた、プレイしたいけどプレイしたくないゲーム

(ネット評&乗秀さんレジュメ)

 「星をみるひと」をネットで検索すると、愚痴と罵声と妙にさとりをひらいたふうのねじれた物言いが数々アップされています。

今回、机に山積みされたホット・ビィの貴重なソフトの中から「星をみるひと」をプレイさせていただきました。緑と青の地の中にぽつんと立つ人間。設定では超能力者とのことですが、説明も指示もなく、とりあえず動かします。すると青い部分でぴたりと止まる。「青は海です、今は進めません」と乗秀さん。

唐突に文字が出てきます。

<ぺるぜでぶに とつぜんであった。>

<ESP たたかう ふせぐ くすり ちから    >

ド素人の私がよくわからないでいると、乗秀さんが代わりにプレイ。

〈たたかう〉

そうか、もう戦闘なんだ、と思うまもなく

「ぺるぜでぶは、みなみにこうげきした。そして13のだめーじをあたえた」

どうも強烈なダメージを与えられています。さっぱりわからない内にあっさり倒されて、再開。

「ぺるぜでぶに とつぜんであった。」

戦闘。

「あなたは しにました。」

「このみじゅくもの!ぜんいんしぼうしてしまうとは!」

いきなりの叱咤。しかもひとりしか出てないのに全員って何?

乗秀さんいわく、このゲームはのっけから最強の技を使う敵が出現。よくわからないまますぐ死ぬ、また死ぬ、逃げられない、何度でも死ぬ。村があるけど見えない。宝物が落ちてるけど見えない。何がなんだかわからない。 

現在の懇切丁寧なゲームに対し、80年代はユーザーへの挑戦にも似た理解不能な展開が多いと聞きました。 

「何歩先に何があるか教えてくれるのが現代の親切なゲーム」 「昔のゲームは理不尽。このフィールド一歩一歩歩いてみろよ、って」 

自分が誰なのかもわからず、未来の世界をさまよい続けるサイキック少年みなみ。かれを見つけるといきなり攻撃してくるデスサイキックたち。

  • 技を覚えるまで逃げることもできない戦闘
  • ダメージ計算式のせいで武器を買うとかえって弱くなることがある

(同上)

無茶きわまりなく、しかし世界観とコンセプトは妙に魅力的、それが「星をみるひと」なのだと乗秀さんは言います。苛立たせ、呆然とさせ、あらゆる意味でひとの記憶に刺さってくる。クソゲーのキングという表現がいったい何を意味するものなのか、ド素人の私にもようやくわかってきました。そうか、これは結局のところ腐した言葉ではなく、ゲームにおけるカリスマ性を語る言葉なのだ、と。

(ちなみに今回、「星をみるひと」に出てくるおじいさんのせりふ「今朝の朝食のケロッグは、納豆の味でうまかった」にちなむおやつまで登場しました!!提供は石田さん。甘く粘り気のあるコーンフレークを口に含むと、かつてソドムスクールで小山さんとつくったリトルグルメの思い出が・・・)

現在「星をみるひと」は、多くのファンたちの自家発電された二次創作物が広く出回っているそうです。同人誌も出され、小説の他にファンメイドのリメイクゲームも何種かウェブで発表されているが、どれも切り口が全く違うとのこと。乗秀さんによると、このアレンジの自由さも、このゲームの大きな魅力のひとつなのだそうです。

ホット・ビィの歴史をたどって、同社製作のいろいろなソフトを紹介していただきました。「星をみるひと」に影響した超能力者モノ「サイキックシティ」、与えられた骨子にユーザーが好きなストーリーを入れ込んでゆく、先駆的発想の「カレイドスコープ」、スチームパンク調のビジュアルが秀逸な「鋼鉄帝国」・・・コンセプトにすぐれ、抜きんでた発想力をもちながら窮迫していったゲーム会社の足跡をたどることは、まことに刺激的な体験でした。

「生き残っているから話が残っている、でも死んだゲームメーカーの話は残らない」と乗秀さんは言います。 

80年代を振り返り、もう戻ることのできない、バブル以前の河の向こうを眺めやると、現在栄えているさまざまな存在の胎動と、無数の死骸とを見つけます。不如意さとエネルギー、未来への希望、苛立ちと苦痛。ゲーム史が何を流産し何を残してきたのか。「星をみるひと」に惹かれるひとは、このゲームに勝者の歴史を相対化するパワーを見るのであろうと思いました。

いま、ホットビィを位置づけ、その価値を語ることに、きわめて大きな意味があると心から感じます。十五年にわたる乗秀さんの情熱の話をうかがって、非常に貴重な時間を過ごさせていただきました。今回も本当に有難うございます。


池田


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