岩井の本棚 「本店レポート」 第9回

伝染るんです


バンダイでいうならばパーティジョイシリーズのように、紙のシートとコマで作られた簡易なゲームシリーズ。
マンガ原案のものでもそういったものはけっこう出来ています。

またマンガ家の参加も多いのです。たとえば蛭子能収がジャケ絵を描いてたり、松本大洋がボードの絵を担当していたりする「人生ゲーム」があるってのは割と有名ですね。

不条理4コマからオヤジギャル、ホイチョイプロ、岡崎京子や桜沢エリカ。
そして東京ラブストーリーの時代まで、小学館=スピリッツが時代の寵児だった時代。
この時期のスピリッツは他のジャンルとの往還が激しく、アニメ化などはなくとも色々なジャンルからの露出が多かった気がします。


(図1)

全盛期にはキャラクターグッズショップが作られ、CMにも登場した「伝染るんです」もその例に漏れません。
様々なグッズが作られていますが、けっこうな吉田戦車マニアでもこの「伝染るんですカードゲーム」は持ってない方が多いのでは。

遊び方的にはトランプのページワンに近いこのゲームですが、カードの絵柄で独自に描かれたものがなく、全て作中のコマからのコピペです。
独自に描かれた絵がないというのはファン的にすごい残念。
ゲームは3名から8名参加で成立するとありますから、ゲーム参加者が全員吉田戦車ファンとは限らないこと、 年少者ばかりだということを想定して、登場人物たちの説明が各カードについているのはいいのですが、最も有名なキャラクターであるかわうそでさえ

『かっぱと大のなかよしだが、かっぱにかなりひどい事もする。かっぱがハワイに行ったことがあるのを知りショックを受ける』(図1)


(図2)

などとうまく説明しきれないもどかしさを感じます。しかも漢字は全部ルビ付なのが泣かせる。
不条理キャラを文章でどんな人、と説明するのは難しい。
吉田戦車本人が説明するんなら絶対にこういう書き口にはならんだろうなと思うことしきり。

繊細な心をもつ包帯少年は作中、キャラ名が正式に名称化されていないのですがカードではいきなり、
『傷』(図2)
と名前が付けられてます。人間の名前がキズ、ってことはねーだろ、と誰か思わんかったんでしょうか。

これじゃあニキビが多い人間に「ブツブツ」って無遠慮に呼んだり、 頭髪の薄いことを気にしている人間に「ツルッパゲ」などとアダナつけるのと変わんないくらいの残虐行為です。
ぼくだってやっぱ「おーい、デブ」と呼ばれたら、事実とはいえ傷つくなあ。


(図3)

これ、単行本の1〜2巻が出たときに急いで作ったんでしょうね、後半の重要キャラクター(たとえば山崎先生や椎茸)がほとんど出てきません。
反面初期の2回くらいしか出てきてないヤクザの乾さんとかがカードになってたり(図3)。
いかにもやっつけ仕事ですね。
吉田戦車とのコラボで「たのもしい日本語」などを生み絶妙の編集を見せた川崎ぶらが参加してたらこんなやっつけ具合にならずにすんだだろうに、と呪ったりします。

時代の落し子といわれたらそれまでですが、現存数が少ないだろうこういったグッズ。
カードもきちんと揃ってます。今の内に揃えとかないとつぎいつ入荷するか分からないですよ。お早めにどうぞ。

※この記事は2005年3月4日に掲載したものです。

(担当岩井)

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