しかし、先日創刊されたばかりのメディアワークス文庫から、意外にも野球を題材にした長編作品が刊行されました。
(図1)
内容は、挫折した天才投手と、その幼馴染の野球選手の少女が、弱小公立高校の野球部で甲子園を目指す。という野球モノ好きならたまらない要要素がてんこ盛りの話となっています。
電撃文庫ではできなかった野球小説も、メディアワークス文庫ならば出来たというべきでしょうか。やはりメディアワークス文庫は、ライトノベルで育った世代のもうひとつの受け皿、という気がします。
ところでこの「ひとりぼっちの王様〜」を読んで思ったことは、やはり野球マンガがメジャーでも野球ノベルがいまいちマイナー (?) なのは、試合時の描写なのかな、とも思ったりしました。古くは「プレイボール」、最近では「おおきく振りかぶって」などが、試合展開の中に選手たちの心理描写を詳細に描いて好評でしたが、マンガであれば『絵』を見ればわかる実際の試合の動きも、ノベルとなると当然のことながらすべて文章で描写しなければなりません。
「ひとりぼっちの王様〜」もクライマックスは試合であり、なかなかに緻密な試合の描写で面白かったものの、どうしても登場人物の心理描写と試合展開が文章でクロスしてしまい、やや読みづらい印象を受けてしまいました。
このへんの問題点を消化する文章を書ける作家さんが出てくれば、きっとライトノベル界にも野球ブーム、ひいてはスポーツブームが起こるのではと勝手に思ってしまいました。
次回は再び山本弘先生の話です。
(担当 有冨)