月刊アフタヌーンで連載されていた「天地明察」(槇えびし)のコミックが完結しました。
主人公渋川春海は囲碁の家元安井家の二代目安井算哲として御城碁に出仕する立場ながら算術や天文好きが高じて全国を廻り北極星を天測する北極出地調査を命じられ、その旅を機に800年にわたり使われていた暦がずれていることを知る。
そして、旅を通じての出会った人たちの想いを背負い、二刀を差しての改暦の儀により新しい暦に替えることを目指すこととなります。
ただ、暦を武家主導で替えるということは朝廷の権限を奪い取ることになるため、正しいことだからとすんなりとは受け入れられず、一度は門前
払いを受け、二度目は古い暦と新しい暦による日食予報を行うことで改暦を試みるも、その予報が外れたため成就せず。
その間、多くの別れがありつつも研鑽を重ね、前回の間違いが中国で作られた暦を日本で使う場合の里差(経度差)によるずれによるものである
として日本独自の暦を作り、大願をなすまでを書いた作品です。
岡田准一さん主演で映画化された沖方丁先生の原作小説は非常に面白く世間的な評価も高い作品でしたが、槇えびし先生による漫画版は作中のエ
ピソードやキャラクターの魅力を増すための細やかな描写を丁寧に加えることで単行本1冊分の原作の行間を肉付けした素晴らしいコミカライズでした。
なにしろ原作ではセリフで表現していた主人公の心情をそこまでの作中の積み重ねで表現してしまい、わざわざ言わせる必要がないとして没になるくらいです。
主人公に大きな影響をあたえた算術絵馬がきっかけで出会う和算の大家関孝和との関係、
ヒカルの碁で一般にも名の知れた本院坊秀策と同じく棋聖と称される本因坊道策、
黄門様でおなじみ水戸光圀など多くの有能すぎる人々との関係だけでなく、
妻おことやえんとの関係など含めて全ての登場人物が生き生きと描かれ、
作中のエピソードも静かな中にも熱く緊張感のある画で描かれています。
コミカライズは原作の力に負けてしまっていたり、漫画家の色が出すぎて原作とは別の作品になっていたりと漫画の面白さとは別の部分で原作とのイメージに食い違いが出ることが起こりがちですが、本作は原作の魅力を純粋に増してる上に漫画としても非常に面白い作品で、コミカライズの手本のような作品でした。
是非ご一読ください。
(流通センター・沢田)
《 今回紹介のコミックスの通信販売はこちら 》
講談社 槇えびし「天地明察」はこちらから。
原作の冲方丁の著作はこちらから。
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