少年スタッフ竹下が選ぶ2017年おもしろかった漫画たち

このコーナーには初登場になります。
普段はコンプレックス(秋葉原)にいる竹下です。
2017年おもしろかった漫画を竹下セレクトで紹介していこうと思います。


ロッタレイン.jpg

『ロッタレイン』(松本剛・小学館)
おっさんホイホイです、このマンガ。
一瞬にしてヒロインの初穂に夢中になりました。
1巻の最後、通夜の夜に唇を指でぬぐうところでノックアウトです。
初穂は年の離れた血の繋がっていない妹で中学生。
年の割には妙に色気があって、
ただエロいというより孤高の清らかさというか否応無しに惹きつけられる引力があります。
気持ちの動きが急で、ええっ...なんで突然こんなことになってんのと
思うところもありますが、そんなのどうでも良くなるくらいグイグイ読ませるパワーがあります。
余韻から抜け出せなくて、
久々『甘い水』『北京的夏』とか松本剛の過去作読み直しました。
痛々しいまでの青い純粋さ。
これはほんと変わらない。

血の.jpg

『血の轍』(押見修造・講談社)
読んでてソワソワする不穏な空気が渦巻いててなんか落ち着かない。
デビット・リンチの「ブルーベルベット」のようなというか、
表面はきれいなんだけど、一皮むけばドロドロしているそういったかんじ。
読み進んでていくとズドン。
こんな怖い笑顔はないくらいゾッとしました。
『惡の華』までで作家としての貯蓄は全て使い切ったとかつてインタビューで語っていた押見修造先生ですが、
いやいやそのあとでこんなの描いちゃうんだから凄いです。

61Xnrko9ZEL._SL500_.jpg

『黄色い悪夢』(黄島点心・リイド社)
どっからこの発想が来るんだというはなしの連続。
特に「人面葬」と、
吸われる側とまさかの吸う側(蚊)からのはなしも描いた「血に落ちる〜ザ・ブラッディ・ブライダル」が好き。

51Mjms6tEmL._SL500_.jpg

『銀河の死なない子供たちへ』(施川ユウキ・KADOKAWA)
人類が滅んだ星で不死の姉と弟、謎の母の日常のはなし。
冒頭からとんでもない漫画がはじまったという緊張感があって、
ページをめくるのがドキドキする。
「...勉強好きなのね、あっという間に死んじゃうのに」
人間の子供に対する謎の母の不穏な一言にザワザワするのと、
「子供は親の手の届かないところへ行きたがるって
人間はそうやって世界を広げて成長するんだって。
だったらπ達は...
何をしたらいいの?
どこへ行ったらいいの?」
と疑問を持つ不死の姉。
ここ最近の施川ユウキの描く漫画ほんととんでもない境地を描いてて、凄すぎないか。鳥肌がたちます。

619Bpg7uKRL._SL500_.jpg

『アニメタ!』(花村ヤソ・講談社)
うめだ店のこうへいさんにずっとオススメされてて、でも読まないでいたんですが、
ふとした拍子に読んだら最高でした。なんでもっと早く読まなかったのか。
登場人物がそれぞれ個性があって、しかもそれぞれのドラマを丁寧に描いている。
アニメ業界のお金の問題にも切り込みつつ、
主人公の成長ドラマとしてもおもしろく、読んでて心地いい。

618F57McJLL._SL500_.jpg

『KEYMAN』(わらいなく・徳間書店)
今年終わった漫画で着地まで見事だったのはこれ。
伏線を丁寧にしっかり回収して見事な大団円。
描き込み多い筆致も衰えることなく、
その勢い溢れるイラスト同様、ストーリーも勢い衰えず最後までおもしろかったです。

51xQaxcBikL._SL500_.jpg

『弟の夫』(田亀源五郎・双葉社)
今年終わった漫画ではこれははずせない。
ゲイアーティストの巨匠が描いた一般作として話題になり、
その類の問題提起もされていますが、ホームドラマとしておもしろく、
見事な終わり方。
全4巻と長さもちょうど良い。
実写ドラマでマイク役が把瑠都っていうのはものすごくビックリした。

61v8xGmBfJL._SL500_.jpg

『ネオンさん』(村田ひろゆき・講談社)
円熟した大人のエンターテイメント。
前作の『ドクター早乙女』もすごく好きだったけど、こちらも素晴らしい。
タダの下ネタだけだったり、飄々としたなんの気ないはなしもあれば、
命に関わる重たいドラマを放り込んできたり、そのバランスが絶妙。

51xlZeHDLmL._SL500_.jpg

『大阪ハムレット』5巻(森下裕美・双葉社)
約7年ぶりの新刊。
大好きな漫画でものすごくうれしかった。
特に「サリバン先生」がすごく好き。
描いているドラマが深い...毎回ズシリとくる。

519CUuIGtkL._SL500_.jpg 510KxHhPxfL._SL500_.jpg

『北極百貨店のコンシェルジュさん』(西村ツチカ・小学館)
『アイスバーン』(西村ツチカ・小学館)
久々でいうとこれも。
西村ツチカの新作がでるというだけでうれしい。
その独特の世界感に浸っているのがほんと心地いい。

51Z2M8gUQ-L._SL500_.jpg

『モキュメンタリーズ』(百名哲・KADOKAWA)
エンターテイメント感強いアクの強い登場人物と、
実際にありそうなドキュメンタリーな演出が加わって、
これどこまでほんとのはなしなんだと妙なパワーがあります。
実際そのオチがドラマチックなのも不思議な読後感をもたらします。
1話目のAV女優のはなしと2話目のオーストラリア人のオタクのはなしが特に好き。


以上、
自分が2017年おもしろかった漫画たちです。
2018年もまたどういったかたちになるかは分かりませんが、
2018年ベストコミックをあげていこうと思っています。


竹下
(よくコンプレックス1F買取処に出没します)

コンプレックス 竹下

1週間のアクセスランキング

    竹下と同じカテゴリの記事

    • サーラの本棚是非続いてほしかった!

        集英社 佐野ロクロウ、肥田野健太郎 『ジガ-ZIGA-』  あらすじ---少年ジャンプ公式サイトより--- 明るく充実した学校生活の一方、「怪物に潰される」...

      コンプレックス 山田

    • サーラの本棚彼女は悪くない、社会が悪い。

      こんにちは。今回はこちらを紹介します。  メディアファクトリー アルデヒド 「ニー子はつらいよ」  主人公の「新戸眠子」はニートである。タイトルで少し察せる部分...

      コンプレックス 山田

    • サーラの本棚いじめないで!ボクは最弱のスライムだよ。...おい。

      今回紹介するのはこちら。 講談社 川上 泰樹 「転生したらスライムだった件」  マイクロマガジン社からでている小説の原作コミカライズ作品です。  自分もそんなに...

      コンプレックス 山田

    • サーラの本棚なんっじゃこの装丁は!!

      こんにちわ、百合マエストロ(自称)の内村です。今回紹介するマンガはどにかくジャケ買いしちまう! ってやつです。 藤村歩実 春になるとウズウズしちゃう   タイト...

      コンプレックス 内村

    • サーラの本棚芋畑サリー・キタキ滝が気になるこの頃

      みなさんはいかがお過ごしでしょうか? 作家名を聞いてピンときた方は、おそらく料理漫画が好きなはず。 コンビニ本の料理漫画といえば、 以前は通常のコミックスを再編...

      コンプレックス飯田

    • サーラの本棚「人類史上最強のスナイパー」

       さて、今回は何を思ったか百合マエストロ(自称)の内村がまったく別のジャンルから本を紹介します。   白い死神 ペトリ・サルヤネン:著 古市真由美:訳 これは、...

      コンプレックス 内村

    • サーラの本棚押切蓮介最重要作品

      この『暗い廊下とうしろの玄関』に収録されている「オバケなんていないさ」。 これが押切蓮介のルーツものとしてそうだったのかと驚かされます。 ちなみに一番最後にの...

      コンプレックス 竹下

    • サーラの本棚押切蓮介最重要作品

      この『暗い廊下とうしろの玄関』に収録されている「オバケなんていないさ」。 これが押切蓮介のルーツものとしてそうだったのかと驚かされます。 ちなみに一番最後にの...

      コンプレックス 竹下

    最新の記事
    UC、NTへと続く福井晴敏ガンダムワールド

    このブログが掲載されている現在も絶賛公開中。 宇宙世紀ガンダムとしては27年ぶりの新作劇場と話題になっている「機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)」 「機動戦士ガ...

    うめだ店 森田

    性欲も睡眠欲には勝てない。

    小学館 篠房六郎『おやすみシェヘラザード』 とある女子高、女子寮。まだ5月だというのに暑い夜が続くある日・・・ 1年生の二都麻都(にとあさと)は友人の部屋へ行こ...

    渋谷店 田名部

    ☆★画像あり ☆★ |コリコン女教師 真昼の決斗☆★ネタバレ注意 ☆★

     最近、海外版のA.D.POLICEのDVDを買って観たらDISC1に最終巻であるDISC3の内容が入ってたんですよ。 で、あの時代のアングラな設定のOVAって...

    コンプレックス 内村

    戦国時代に転生したら...

    間が空いてしまいましたが今回も私的なおすすめラノベを紹介させていただきます。 今回紹介するのはイスラーフィールさん作の「淡海乃海 水面が揺れる時」。 副題で「...

    サーラ 阿部

    是非続いてほしかった!

      集英社 佐野ロクロウ、肥田野健太郎 『ジガ-ZIGA-』  あらすじ---少年ジャンプ公式サイトより--- 明るく充実した学校生活の一方、「怪物に潰される」...

    コンプレックス 山田

    きっとあなたのなかにもいる『かわいい闇』

    はじめて記事を書かせていただきます中野店の高畠と申します。 SFだいすきアイマスPです!今後ともよろしくお願いいたします! さて今回は、一見かわいらしい絵本のよ...

    中野店 高畠

    平成もそろそろオワリ!!

    連載開始したサーラの本棚!! どうも、おひさしぶりですうめだ店コミックスタッフの山崎です。   あまりに久々すぎて誰が何を紹介してたかすっかり忘れてしまってるの...

    うめだ店 山崎

    母と子と将棋がある日常と

     いやー、すっかり寒くなってきましたね。日中は暖かくても夜はもうダウンジャケットじゃないと寒くて、日々モコモコして過ごしております。「ワールドトリガー」が連載再...

    中野店 長谷川

    悪と正義の境界とは。

    そろそろアニメ化の話があってもおかしくはないのでは...と個人的に思っているこちらの漫画をご紹介。タイトル:憂国のモリアーティ 構成:竹内良輔 漫画:三好輝コナ...

    小倉店 藤野

    老いとは、正しい成長

    当ブログのアクセスランキングで根強い人気を誇っているのがとうとう「島耕作担当」を名乗り始めた、弘兼憲史大好きおじさん・臼井による一連の島耕作シリーズ。 (未読の...

    中野店 清水