巷でいろいろと話題になっているので、今こそこの漫画のすばらしさを
真に薦めるべき時なんだと奮起した担当です。
今回ご紹介するのはこちら。
で、でたー!!今、この話題に触れるべきか悩むやつだー!
ちなみに担当は三次元アイドルに関してはまったく無知でございます。
AKBに至っては一番有名な神7の名前と顔ぐらいはかろうじて一致するぐらいの知識しかありません。
ただ、先日の総選挙のあれこれには素人ながらとても驚きました。あーびっくり。
しかし、そんな程度の知識しかない担当でも、この漫画にはひどく胸を熱くし
本誌最終回では休憩中においおいと号泣したほど心を揺さぶられました。
単なるアイドルのサクセスストーリーと侮るなかれ!ってやつです
まず、この作品で驚いたのは主人公・浦山実というキャラクターです。
実在するアイドルが題材の漫画で、なんと主人公が男子高校生なのです
普通に考えれば、アイドルという女性社会を描くなら女主人公を据える方が自然かと思えますが、
その定石を打ち破る男子高校生という選択にまず惹かれました。
そして、次に考えたのは「じゃあヒロインがアイドルとかいういわゆる少女マンガ的な話なのか?」ということでした。
・・・なんとそれもまた違います。この漫画はなんと、

ごくごくふつうの男子高校生が、女装した姿・"浦川みのり"としてAKB48に所属し、
本気でアイドルとして成り上がっていくという前衛的過ぎる作品なのです。
しかも、いわゆる流行りの男の娘さん的な巻き込まれ的展開や
莫大な借金を返さなくてはならなくてやむなく・・・というテンプレ事故だったわけではなく
すべて主人公の実くん自身の意思で選んだ道だというから驚きなのです。
じゃあ、そんな彼が主人公の作品とはどういう作品なのか?

主人公の浦山実くんは、本当にどこにでもいる高校生です。
ある日、彼はクラスの気になっていた女の子・吉永寛子がAKB48前田敦子に憧れ、
アイドルへの道を志していることを偶然にも知ります。

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そのひたむきで眩しい想いに触れた実は、彼女を傍らで応援したいという純粋な気持ちから
なんと女装した別人"浦川みのり"として同じ研究生オーディションを受けることに!?
様々な波乱がありながらも、その真っ直ぐな気概が秋元康氏と前田敦子の目に留まった
みのり・寛子の両名は、心身を酷使する厳しいレッスンや火花散る女同士のセンター争い、
ファンの心というまるで空を掴めといわれるような課題が押し寄せる
本当のアイドルの世界へと足を踏み入れます。
当然ながら、秋元氏に面白がられている二人には多くの試練が課せられました。
研究生のみの公演なのに一万円でチケット販売して二ヶ月で満席にしろとか
デビューシングルをウン万枚売れとか、かなり無茶な要求ばかりです。
しかも毎回、自身の解雇やそれに相当する何かを秤にかけられます。
本気を求められていると理解しつつも、みのりは苦しみのたうちまわり
その度に持ち前の根性と不屈の精神で立ち向かっていきます。

壁に怯まず意地でも前に進んで見せるという姿は、男女問わず胸を打ちます。
アイドルという華やかな世界を題材にしながら、その実、超熱血スポ根漫画であるというのが
この漫画が知られないでいるには勿体無いと言われる所以なのです。
どんなに苦しくても、つらくても、全編を通してみのりは一ミリもブレることなく
寛子を本当のアイドルにするために一番近くで支えとなり、時に互いに叱咤激励しあって
スターダムを駆け上がっていきます。
初めは、寛子さえのし上がってくれればという気持ちでこの世界に飛び込んだみのりでしたが
アイドルの笑顔の裏側に隠された途方も無いくらいの汗と涙を知り、次第にチーム、ひいては
AKB全体のために全力で舞台に立つことを選ぶようになります。

その強かな背中は、そばにいる寛子はもちろんのこと、先輩、後輩、同期、
そしてファンの瞳にも輝かしい姿として写り、それが伝播し多くの人の心を動かすことになります。


劇中には、実在する人物と架空の人物が混在して登場しています。
物語の中で、実際に起こった事件が端々に描かれることもあります。
この作品では、実在する人物とフィクションの人物とがぶつかりあったり
関係性を深めていくシーンも多数あり、実際のAKBチームを追いかけているファンの
興味をそそるような話もたくさんあります。
各回サブタイトルが実存する曲名というのもなかなか乙なことをしてくれるなと思いました。
現実世界での真実は我々一般人にはわかりませんが、この作品が醸し出すリアリティにより
もしかしたら、現実の彼女たちにも一般の人が知らないテレビの裏側で
こんな場面があったのかもしれないな・・・と
アイドルに明るくない読み手でも読み進めていて非常に感慨深くなることがあります。
※AKBグループにとっては最大のイベント、総選挙もきちんと注釈つきであります。非常にわかりやすい。
※ネット界隈で今回の2017総選挙での名言とされている言葉が、何年も前にこの漫画で出ているなんて。
この漫画に描かれていることが全てアイドルの真実だとは思いません。
ですが、されどアイドル漫画として端から敬遠するには非常に惜しい熱量を内包した
作品であることは間違いないです。
作中において、みのりと寛子の関係は、最初こそ淡い憧れから始まるものですが
物語が進むにつれそれは友情・愛情・家族・仲間。またはそれ以上の感情。
性別を超えた名前をつけることができないような非常に強い関係に見えてきます。
いつまでも彼女たちの活躍を見ていたいと思う反面、終わりを迎えてしまって淋しさを感じてもいます。
ですが、実と寛子の二人や、まさに偶像(アイドル)そのものである"浦川みのり"がたどりついたその結末は、
とても爽やかで潔く、読後感も充実したすばらしいものでした。
みのりの「いつまでも、正体を偽り続けるのには限界がある」という気持ちと
「どこまでもこのままみんなとAKB48として走ってゆきたい」という板ばさみの葛藤なんかは読んでいて目頭が非常に熱くなりました。
この本は、ただ現実にいるアイドルをコミカライズしたという単純なものじゃないです。
こんなアイドルだったら、推してもいい。と思えるようなまぼろしの49人目の姿を描いています。
できることならAKB48を、生のアイドルを知らない人にこそ読んでほしい作品だと思います。
読むときっと、世間に氾濫しすぎてどこか食傷気味にすら感じているアイドルに対して、すこし印象が変わるかもしれませんよ!
中野店 まりな