手塚治虫の後期の1983年の作品「アドルフに告ぐ」を紹介します。
劇画ブームにより青年誌が創刊され、手塚漫画も大人向けの絵に変容して20年程が過ぎて、アドルフに告ぐは手塚漫画の中でもリアルさでいったら1,2を争う作画なのでは。いつもよりランプやハムエッグが背が高いです。
週刊文春で連載されたこともその理由のひとつでしょうか。
「ヒットラーにはユダヤ人の血が流れている!」
第二次世界大戦開戦前夜の頃、世界に公表されたらナチス転覆の危機であろう上記の架空の設定のもとに、
証拠となるヒットラーの出生証明書のコピーや親族の残した手紙を束にまとめた文書を巡って、ナチス、新聞記者、共産主義グループ、
特高、歴史上の人物などの人と人と人と人と人のドラマです。
タイトルのアドルフとはヒットラーのファーストネームです。
アドルフはもう二人出てきて、神戸在住のパン屋のユダヤ人とナチスの父を持つ二人の白人の少年もアドルフという名前。
左がパン屋の子で右がお父さんがナチスです。
ヒットラーはもっぱら「文書」で存在感を示し、神戸在住の二人のアドルフの話がメインです。
ナチス側のアドルフはのちドイツに渡り、親友のアドルフを慕いながらも感化されてゆきます。
非戦や非暴力を訴えるための暴力は、手塚作品最高の作画と周到なストーリーの設定と伏線で、
より強大に描かれます。2人のアドルフの友情は年月も民族も国境も引き裂くことはできませんでしたが・・。
ヒットラーのアキレス腱である文書を亡き弟に託され、巻き込まれることになった、
もう一人の主人公の善良なる新聞記者も追いつ追われつ物語を駆け抜けます。
また、この作品も手塚のスターダムシステムが炸裂!
ランプ、ハムエッグを筆頭に「奇子」の天下市朗、山崎先生が友情出演。
もちろん手塚治虫自身もタクシードライバーとしてカメオ出演されています。
ハムエッグは特高刑事として登場。物語の後半には頭がおかしくなってしまう男を熱演します。
助演男優賞のハムエッグ。
天下市朗。
山崎先生。今回も手塚女性キャラをセクハラ。
とにかく主人公が4人ですし、その他おびたただしい登場人物たちです。
でも、どのエピソードも面白いです。文書は日独を往復し、さっきまで都会にいたかと思ったらひなびた村に移動したりと場面展開も早い。
忘れた頃にあのキャラクターが浮かび上がってきて、ここにつながってくるのかーとなります。
ちょい役の人たちも皆いい味出していて、熟練の身振り手振りとセリフで、その職業の人にしか見えません。
あとがきに「神戸の戦前、戦中の時代の思い出を描いたらという構想があり」とあります。おぼっちゃんな環境で育った手塚治虫先生が望郷の念をこめて、
当時のハイカルチャーな様子も自然に描写されています。
これだけ話が広がってるにも関わらず、一本筋のテーマが通っていて、大団円もある。
子供の頃から読んでましたけど、ふいと久々に再読しまして、物語に感動する自分を発見して驚きました。
何度も感動できる、お得な自分の脳味噌のできを差し引いても、手塚作品の代表作のひとつであることは間違いないです。
未見ならば是非どうぞ!
(担当:南)
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