前略 ごめんなさい。
渋谷店で働いている二宮です。
今回取り上げる漫画は私の一番好きな漫画、もみじ拓の「紅陽」です。
中身をみてみましょう。
でもふざけた漫画じゃないんです。池川伸治や三田京子の社会派作品ってトンデモだけど読むと「良心の領界を守らなきゃ」って読後感を不思議ともたらしますよね?
あんな感じ。時間がない人も「かいじゅうの背番号」だけは読んでね。ラストで泣けなかったら心が壊れてるぞ!イシャはどこだ!
そして後半には壮大なteenage monument「キリエ」が控えています。今日はこっちについて話します。
物語は漫画家志望の紅陽の視線から語られていく。
紅陽は高校に入りポエトリー・リーディングするクラスメイト、キリエに出会う。
「ああいうのは外野から見てれば面白いけど、友達になるのはやだな」
多数決とか全員参加とか、学校生活のしきたりに衝突し何度も呼び出しを食らうキリエ。
考えるところはあるけど、なんとなく妥協点をみつけてやり過ごす紅陽(二番目に好きな女の子とつきあったりとか)。
詩を叫ぶキリエ。
キリエの詩は紅陽の魂に触れた。
失敗を恐れ、失敗してカッコ悪くなることを恐れる紅陽は、
漫画を描いていることをさとられまいと過ごしてきた。
「安全地帯ばかり歩いているこのぼくの言葉は誰かに届くのだろうか?」
紅陽の作品はまだ誰の心にも届かない。でもキリエの詩は紅陽に届いた。
心に届く、ということはわかった。そして紅陽はまた漫画を描きはじめる。
キリエの父はただの会社員だけど若い頃に1冊の詩集を残していた。
主よ 憐れみ給え
主よ 憐れみ給え
何度呟いただろう
この浮遊するキリエを
父親はキリスト教徒であった
私が十五の時に死んだ
私の脳味噌の宇宙を
キリエが浮遊している
今日 私にも子が生まれた
浮遊し続けろ!
キリエよ!
父はキリエにむけて詩を書いた。
でもキリエがそれを読むことは出来なかった(紅陽が図書館で見つけてきたが、女の子に気を取られているうちに紛失)
キリエは父に自分の詩を見せたかった。しかし父は読む前に死んだ。
紅陽はたまたまその両方を読んだ。誤送されてきたメッセージ(しかもひとつは盗み読み、ひとつは誤って消去)。これが郵便的不安なのか!どうかは知らないが借りは出来た。
人は贈与システムに即してしか生きられない。今度はお前が贈り物を用意する番だ。紅陽も、そしてもみじ拓の作品で救われた私たちも。
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渋谷店 二宮