こんにちわ、岩井です。しばらくはゴルゴ13の話をしていきますのでよろしく。
ゴルゴといえばまずなにを思い出しますか? 超人的な射撃の腕、うん、冷静で頭脳的、それもある、高額な依頼料、コンタクトとるのが大変、そうそう・・・あとは女関係ですね。
プレイボーイというのも違うし、あれはなんなんですかね。
モテるかといわれたら、関わった女の大半がセクシーだとか、なにかといってゴルゴにちょっかい出してきますよね。
思い出す限りでも、スパイだとかの仕事の関係者はもちろん、ブードゥー教の女だとか、セレブ、ベリーダンサー、女教授、尼僧、ヤク中、南米の貧乏母子家庭の母ちゃん、和弓の道場継いでる姉ちゃんまでゴルゴと接触のあった女の大半はゴルゴの股の上にまたがって「おおう~~っ!!」とかいって騎乗位で盛り上がってるわけです。
しかしもっともゴルゴが好んで接触する類の女というと、売春婦ですな。世間の監視が行きとどかない夜の闇に飛び込む、という名目で、安売春宿にもぐりこむわけですな。
これ日本だったらなんだ。ラブホ宿泊してデリヘル嬢呼ぶようなものかな? いやいやゴルゴはデリなんか使わないでしょ。カネはあるからって「120分でお願いします」とかいうゴルゴはイヤです!
かといって出会い系を使うゴルゴというのも想像が付かんし。日本だととたんにロマンのカケラもなくなってしまいますね。
もちろん売春婦にもモテる。だがムダに惚れたがゆえにゴルゴをかくまった売春婦が何人殺されたか考えてみろ。惚れる=死です。
ではもっともゴルゴと相性がよくないのはどの種類の女なのかというと、これは間違いない、レスビアンです。
ゴルゴに関わったレスビアンは全員不幸な目にあっているからです、もれなく。
レスVSゴルゴの第1戦はというと第13巻に収録されている『キャサワリー』。
構成員や幹部を何人もスナイプされ、ゴルゴに恨みをもつアメリカのマフィアたち。いままで幾人もの殺し屋を雇ったが、ゴルゴの相手ではない。車に爆発物を仕掛けてもダメ、ビーフシチューに青酸カリを仕込んでもダメ。
「・・・最後にはVD(性病)持ちの尻軽女をくっつけたことがある・・・・ちょっと見はラクウェル・ウェルチみたいなグラマーだったが・・・ゴルゴ13に梅毒をうつす前に首の骨を折られやがった!」
って、マフィアもいろいろやるものですね。
いままでもゴルゴを消そうとした女は何人もいたが、女であることが邪魔して失敗したと。
つまり例のゴルゴ法則「女の殺し屋を雇っても、そいつがゴルゴに惚れちまうか、白状させられてしまって使い物にならねえ」。これがマフィアのあいだでも通説になってるのがわかりますね。
マフィアがなぜいまゴルゴを狙うかというと、情報筋のあいだでは噂になっていた「ゴルゴの弱点」イコール「儀蘭バレー症候群かと思われる、右手のしびれで射撃に支障が出ている時期」がまさに今なのだという。これはチャンスです!
なのにここからマフィアの話はなぜか脱線。
女はゴルゴのことをオトコとしてみちゃうからダメ→じゃあゴルゴのことをオトコとは思わない、レズの殺し屋を雇おう、という話になります。・・・いやあ、男はもとからゴルゴのことを女目線で見たりしないわけだから、とにかく金に飽かせてスゴ腕の殺し屋を雇えばいいんじゃないですかねえ・・・だいたい相手が女だからといって油断するわけじゃないゴルゴだもん。梅毒もってるだけで首の骨折る男はそうそういないでしょ。
ともかくムダに長い会議をやると、みんな当初の悩みからハズれたおかしな結論になることがあるのは日本の会社だけじゃなくてマフィアでも同様なんでしょうか。ようし、レズの殺し屋を雇うか!って、マフィアの癖に妙に弱腰というか、そんな結論になるってマフィアたち誰も思ってなかったと思うよ。
その「火喰い女(キャサワリー)」のコードネームで呼ばれる美人女殺し屋は、ゴルゴが例の持病(ギランバレー症候群)にかかって療養しているというマルタ島に飛ぶまえに、早速女と一戦交えている有様。アナタって仕事の前は燃えるのよネって、百合どころかガチレズ感アリアリな感じですがな。
何しろこのキャサワリー、レズ+純粋男嫌いなので、ホテルでちょっとクドキいれてきた男に肩をほんのすこし触られただけで、嫌悪感を隠そうともせず、あっという間に殺してしまうのです。もちろん今回の標的のゴルゴとはまったく関係がない、単なる個人的嫌悪でのみ行動。恐ろしい女です。
物語り本筋に関係ない男をほいほい殺したあとは、早速ゴルゴが泊まるホテルに宿泊していろいろとカマをかけるキャサワリー。ハンカチを落としてみたりビキニで誘惑しようとしたり、けっこう大胆な接触の仕方。ゴルゴが本調子じゃないとしってガツガツ行きますな。
そのあいだもゴルゴが通っている病院にいって、医者を拷問してゴルゴの診療状況を問いただす。ゴルゴの右手のしびれは回復の見込みが目下ナシ、と聞いて一気に行動に移すキャサワリー。しかしゴルゴは警戒怠りなく、なかなか寄せ付けない。
車がエンコしたから乗せて! と大胆にゴルゴの車に乗り込むことに成功したキャサワリーでしたが、ハイここの後半のコマをなんとなく覚えておいてください!
ゴルゴ定番の沈黙吹き出し「・・・・」「・・・・」が場を支配するような殺し屋同士のぎこちないドライブの途中、野良犬の姿を見たゴルゴがなぜか態度を豹変するじゃあありませんか。
「あの犬を・・・殺す!」
とかいって、犬を追いかけて車で轢き殺そうとするんですよ!!
エエッなんで、ってなんで?マジで!
「や、やめてちょうだい、かわいそうじゃない!」
と至極ごもっともなことをいうキャサワリーに対し
「老いて牙を使えなくなった犬は・・・死ぬべきだ!」
と、理由になってない理由を吐いてアクセルを踏むゴルゴ。
ここはゴルゴ全182巻の中でもけっこうな理不尽なシーンですな。梅毒を持っているからといっては女の首の骨を折り、老いているからといって犬を殺そうとするゴルゴ。精密機械のように精巧で思慮ぶかいといわれたゴルゴのイメージを崩すシーン連発です。
運良く野良犬は逃げ去ったものの、ドライブ中にギランバレー症候群でゴルゴの手が震えるのを見て取ったキャサワリーはここが勝負だワ、と車を止めさせようとするが・・・。
すっかり殺し屋、それもレズ(ゴルゴ風にいえばレス)だって見抜かれてますがな!!
思い返してください、あの車に乗ってきた時にチョイと手がキャサワリーの尻に触れたとき、ちょっとビクッとしたあの仕草です! あれだけでレズ決定です! 鋭すぎます!!
こんときのキャサワリーのとぼけ方もいい!
「な、なんのことー!?」
むやみにのんきさが伝わるから伸ばす棒は入れないほうがいいかもしれませんが、実際とぼけようとしてこれ口声音化するとけっこう気持ちが上がってくるから不思議です!
さっき車に乗る時ちょっとだけ俺の手がお前の身体に触れただろ、そん時レスボスの女特有の男性拒否反応を示してた・・・って、その年であれが男の手が触れたショックとは言わせないぞ・・・って、ゴルゴは詰めて来ますね。ちょっとビクってしただけなのに「こいつレスボスじゃね」とピーンと来るって過敏としかいいようないですよ。
畳み掛けるように、殺し屋である理由も解説するゴルゴ。さっきの野良犬をひき殺そうとしているとき、お前は俺とおなじ狩人の目をしていたからだと。さっきの野良犬カーチェイスはこんな意味があったのか! と
じゃあ相手がレスボスだと分かったら、俺には対抗策がある!
車を崖にのりあげ、たたみかけるゴルゴ。海中に放り投げられるふたりだが、キャサワリーの拳銃は海水が入って作動しなくなる!
よしゴルゴ、ゴルゴは右手はダメだが左があるぞ、いまこそキャサワリーを撃ち殺すんだ!
という読者の期待もどこへやら、ゴルゴは撃たずに岩陰からヒョイっと頭をだしてくるじゃありませんか!
え。ゴルゴ隠れて全裸になってたんですか! 沈着なゴルゴなら服もきちんと折りたたんでいたのではないかと思わせるほどの冷静っぷりですが、全裸です!
ゴルゴの男根、陰茎、つまりロッドを見て目を見開き恐れおののくキャサワリー。
ちんちんを出しながらも、有無を言わさぬ迫力で滔々と解説、かつズイっと見せ付けてくるゴルゴ。
なぜ全裸に? その理由をもう一回おさらいしましょう。
レスボスの女はROD(男根)を本能的に怖れてるからです!
万人の「そんなこたぁない!」の声が聞こえてくるかのようです。これは男性陣女性陣双方から大ブーイング、そんなわけあるか、といっても、実際にキャサワリーは仕事を放棄して逃げ惑ってるわけだからこれはゴルゴの勝ち、レスボスの負けです!
ていうか逃げ惑うキャサワリーの服を脱がすと、キャサワリーワンピースの下はノーブラどころかノーパン。やられる気マンマンじゃないですか! そしてやられる気マンマンといわれても仕方がない格好してるくせにRODのこと超怖がってるじゃないですか!! この女はいったい何がしたいのかと問われてもなかなか答えは出せません。
なおこの男性作家特有の表現「やられる気マンマン」、つまり上着の下がいきなり素肌だったり、コートの下がいきなり下着だったりという劇画表現はこちらもご覧下さい。
だいたいゴルゴもキャサワリーの目の前で脱ぐのではなく、岩陰に隠れコソコソ服を脱ぎ、ヌオっと全裸で登場するのがいい。隠れててピストルで撃ったほうが安全だと思うけれど、そこにロマンがあるでしょうか!? RODを見せ付けて勝利、これこそがロマンです。ロマンなのです!!
ゴルゴもゴルゴでレスボスの女にはRODを見せ付けますが、よく見てみると読者にはRODが見えないように走ってたりもしてて、なかなか出来ない気の遣い様じゃないですか、これは? ふつうに走ってたらブランブラン震えて見えちゃいますからね。
まあしかし、なんかこう・・・見事RODの力でレスの女を屈服させましたわ、なんて、前世紀的なのもいいところで、今の世ではこんな発言しようものならLGBT差別に理解のある筋から絶対に非難ゴウゴウでしょうし、これが男根主義者的キャラだったらお前なんだクソという気にもなりますが、冷静沈着で非人間的なゴルゴだからこそこれがかえって活きてくるわけで。
まず殺し屋であることを見抜き、その殺し屋の弱点は何かを冷徹に考えていくという基本線がしっかりしているからこそ、枝部分の話ばかりで終ってしまわない。
一方のマフィアとキャサワリーも、ふつうにいったら敵わないことは承知で、ゴルゴ謎の右手のシビレで療養中という千載一遇の弱点を晒しているときに冷徹に攻めている。このお互いのプロの遠慮なさと、深謀遠慮が上回ったほうが勝つというラスト。その辺はやっぱり凡百のそれとは違いますね。
ぜひ13巻「みなごろしの森」を本編で確認下さい!
なにがすごいって、こんな面白い話がタイトルエピソードではないということ。このレベルの出来が中期ゴルゴでは当たり前なんです。同時期の漫画と比べて、脚本レベルの高さを思い知らされます。
「ゴルゴに関わったレスビアンはもれなく不幸」の法則通り、あわれキャサワリーはレスの弱点(?)を突かれて死亡。そしてもうひとつのレスビアンが登場するのが36巻収録『焼けただれた砂』。・・・ですが、RODのせいで長くなってしまったのでこちらは次回紹介します!
中野店 岩井