古本体質その1

前回の岩井の記事では、古本体質について少し説明しましたが、これは最初古本屋あるあるネタとか古本好きあるあるネタのひとつかなと思ったけれど、よく考えるとちょっと違うのかもしれないですね。

古本あるあるっていうと、
「100円棚に出たら買おう、と思った本に限って、その後パタリと100円では出会えなくなる」
「逆に100円では出ないと思って筑摩書房の文庫買ったら、よく見たら100円棚にあった」
とか
「買うか買わないか悩んだ本に限って、どんどん値上がりする」
「高くなったから売ろうと思った本に限って、再版されて相場が下がる」
みたいな、ジンクスというかイップスというか。

古本体質というのはそうじゃないんですよね。これも上手い言葉があればいいんですけれど。
物語とか作品じゃなくて物質材としての本がどんなだったかとか、雑誌版と単行本の違いとか、初版再版のちがいとか、作家名がいつから変わったかとか、異本がでたときにどういう加筆があったかとか、ゾッキ・特価本が出たとか、なんかそういう方向ばかりが気になってしまうという。これはもう嗜好というよりは体質だと思うんですよね。

これはうちで本に配属されたスタッフがみなかかる病ではなく、幾%かがそうなってしまうものです。

僕の過去の記事だと

「あざといは正義」
「Water.三種類の差」
「孤独のグルメまめちしき」
「初版買ってちょっとガッカリ」

このあたりが古本体質的な記事ですね。
これはもう、誰かが面白がってくれるだろうって気持ちがほとんどなく、これ残しておくといずれ誰かの役に立つかもナと思って書いた記事です。
ネット以前の時代のマンガ本のそういう、この本は初版と再版がどうこうとか帯がどうこうとか、もうそういうのは価値がついてる本はともかく、そうでない本はネットでも書誌がわからないことが多々あります。僕が入社したてで本に配属されたころは、そういうのはもう先輩とお客様にきいて身につけてくしかなかった。

いまは多少なりとも画像がネットに出てる本が大半だし、レビューのなかに有益な情報があったりで楽になりましたが、それでも、ドの版まで誤植があったとか、どの版についてる帯が初版帯とは違うとか、そこまでいくと分からないことばかりです。

極論すれば、すべての事実はデータに残ってるべきなんです。誰がやるかはまた別として。
これは単に作品のレビューが大量にあればいいだろとか、そういうのとは違うんですよね。内容ではなく、書誌情報なんです。
それでもあの時代に古いマンガ読みの人がこういう記事残しておいてくれてよかったよな、と感謝する、独自の情報に満ちた記事って、かなりあるわけですよ。でもそれ以外は、先人の知識が途絶せず継承されていくほかないですね。双葉社版の「坊ちゃんの時代」はやたら中割れ本が多い、とか、そんなん覚えておいても古本屋しか得しないんですけれど、それでも記録に残すべきだとおもうんですよね。たぶん共感は得られないとわかってはいますが、ハイ。

なので古本マンガ屋として気がついたことは、いずれ誰かのためになるかもしれないから残しておこう、と思ったりしてます。

たとえば、発売されたばかりの「BLUE GIANT」の7巻。これ、第53話に、雑誌掲載時は誤植がありました。

ここ。「子僧」になってますね。

CJi4_s2UEAAaxIX-001.jpg

これが初出時にけっこう感慨深かったんですよ。比較的優秀な小学館の、それもビッグコミック本誌で、しかも巻頭カラーページに誤植出すんだ、って。編集の人はこれ叱られたんじゃないかな?

これがきちんと直す・・・誰かから指摘があったか、単行本作業中に気がつくか・・・というのが気になってまして、さあ発売されたばかりの7巻を開いてみたら・・・、

1203__ 1

直ってました!
画像小さくてごめんなさい!

そう考えると直ってるから問題ないジャンなんだけれど、雑誌で間違えてた事実って、ここで記録しておかないと残らない気がして。
あと、雑誌掲載で間違えて、初版で直ってないこともあるよ。
たとえばこれ。

これは前触れたことがあるけれど、「それでも町は廻っている」の初版。178P、はじめて紺先輩が出てくるシーンで・・・。
151203033.jpg

あまりに自然で分からないかもしれないですが、再版ぶんからは直ってましたね。

1203__ 2

ここ、再版で修正されたは修正されたけれど、第何版から直ったかを僕、当時確認し忘れたんです。
まあ本腰入れて調べる問題でもないから放置してますが、いずれきちんと報告します。
それ以外でも、たしか「それ町」は、初版時の誤植ってほかにもあったんですよね。それも調べるためにまた家に帰って読まないとなあですな。

で、人の誤植が気になる私ですが、じゃあオドレの本はどうなんじゃいといわれたら、これはもう平身低頭するほかありません。拙著「マンガけもの道」(扶桑社)はですね、いや、誤植はあるわ、目次に書いてあるページをたどっても別の記事に行き着いたりするわで、チェック甘かったなあと実にまあ汗顔の至りであります。ハイ。ヒトの粗ばかり指摘してるといい生き方しないよ!といわれているようですね、ええ、まあ・・・。

いま弊社HPがちょっと工事中で、まんだらけHPからこのブログに飛べなくなってますが、こちらのブログもすこしづつ改装中。カテゴリを右に表示して過去の記事を調べやすくしてますが、そういった古本体質な事象は「古本ねた」のカテゴリにいれております。これで「うばすてやま」「超愛の人」だけ読みたい方もラクになりましたね!

いまはスタッフがさまざまな記事を毎日更新している「岩井の本棚・SAHRAの本棚」。古本マンガの通販サイトとしては、単一出品者としてはまちがいなく最大級のSAHRA通販。ビンテージ古書マンガから最新刊まで、これだけの層と物量で揃っているところは他にないはず。
これからもどんどん通販更新していきますので、こちらの記事ともどもよろしくおねがいします!

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