雑誌で読む派にとって、木曜日というのは月曜日(ジャンプ・スピリッツ・ヤンマガ)につぐよい日。ヤンジャンとモーニングが出るのです。
ただぼくの順序とすると優先度が高いのはモーニング。その次がヤンジャン。その次がチャンピオン・・・という順序。何しろ休憩1時間のうちに全部を読もうと思ったら、これがなかなかに大変です。ただ今週は、見るべきところが多いなと思ったのはヤンジャンのほうでした!
現在のマンガ界における巨頭といって名前があがる存在といえば、鳥山明・井上雄彦・尾田栄一郎・・・といったジャンプ勢が思い当たりますが、尾田と鳥山は絵柄的なフォロアー、模倣者が大量に出て、そのあとのマンガ界の絵柄を大幅に変えた、というところまでは至らなかったと思います。二人とも個性的過ぎて、咀嚼して自分の色を加えて出す、というような消化の仕方ができなかったのかもしれません。絵柄の似ている少数の作家、がいるにとどまっています。
ですが、井上雄彦の絵は模倣されまくって今に至っています。スラムダンク以降、井上雄彦の男性の描き方は少年マンガから青年マンガを席巻しましたし、いまでも普通にどの青年誌にも井上フォロアーはいるはず。
たとえはチャンピオン、ヤングキング勢に多い不良マンガは、高橋ヒロシ調の絵柄によく似ていますが、絵柄の変遷でいうと井上雄彦の傍流ともいえます。これは「クローズ」後半、本人も作中欄外で認めている通り、高橋ヒロシが井上の絵に影響を非常に受けたものに変わっていったためです。高橋ヒロシは自分の色を加えて「ワースト」からは絵柄を完全に自分のものとしていましたが、高橋ヒロシフォロアーで高橋ヒロシ以上に不良をかっこよく描けている作家がまだあまりいないのはちょっと興味深いです。
余談ですが「ワースト」から入った派が多い高橋ヒロシファンにとって、「クローズ」の最初の頃の画はけっこう読み続けるのがそれなりに難しかったというか、なれるまで違和感がありましたね。
そんな、男を描くのが上手い井上とともに、女性を描かせたら天才的な才能を持つのが桂正和。もちろん桂正和も井上武彦も、女性も男性もカッコよく描けますが、この両者が競演したらすごいことになるのかもな・・・というのも夢見ちゃうところ。
でもそれを考えただけならともかく、実際にやってみた人がいたのにはビックリした! 「ロンジコーン」というマンガです。
こうやってみると、歴代YJ系に多い桂正和のタッチのマンガなのかと思いきや・・・
そこに突如井上雄彦タッチのキャラクターが登場。なんかバスケのユニフォームみたいなタンクトップ着てますね。え?そんな井上雄彦タッチじゃないだろ、って? じゃあ・・・
どこかで見たようなポーズ、目と眉間周りの表情、服のシワの書き方・・・影響を受けてますね。この井上タッチが主人公で、こっちの桂正和タッチの男がライバルのようですが
同じページにあってもさほどの違和感がない。絵自体はきれいに書ける人なんですね。上手いです。ただ、
第3話目で主人公が女子を救ってみたら、相手は女子の兄だったという展開は花道とゴリとハルコさんの関係みたいだし、主人公がデフォルメキャラになったときも花道のソレそっくり。よほど好きな人なんでしょうね・・・物語としてはまだ3話目なのでなんともいえませんが、けっこう気になりますね。
で、この「ロンジコーン」は美容師マンガという珍しいジャンルで、作者ももと美容師という変わった経歴の持ち主。ゆえに髪型にはこだわりぬいていますが、一方、こういう髪型もヤンジャンには登場します。
これを見た同僚は「なんでこんなみんな頭頂部のボリュームないんすか」といってましたが、まったくもってその通りです!
ぼくも「自殺島」の登場人物がみんな同じ髪型でミョーにペッタリしてるのが気になってましたが「ここは物資のない無人島。整髪料もないしな」「みんなフロに満足に入れなくて、油髪なんだよな」となぜか作者が何か言う前から勝手に自分で納得していたのですが、「デストロイ&rボリューション」の舞台はここは物資も有り余ってる現代日本です! 大槻もユウキもちょっとどういう髪のすき方したらこうペッタリコになるのか教えて欲しいものです!
しかしよく考えたら「デストロイ&レボリューション」というタイトルもなかなかに味わい深いですね。中学生が社会について怒ったときに書いたブログ記事のタイトルみたいです!
さてそんな効用が続きながら、「カウンタック」を読み始め。先週の「早乙女ちゃん・・・」もあれだったしな・・・と思って読むと、主人公・空山の友人のジャズピアニストが登場! 過去に峠でヤリあった仲の様。あのときのバトルを再現したいから、聞いてくれ空山!といって即効でピアノを弾く・・・
すると空山には、あの日のバトルがまるで今起きていることかのように目の前に浮かんでくるのだった!
まあこのあたりはね、「頭文字D」のゴワシャアア、みたいなクルマがボワワワーンと走りまくる構図なんですが、なんかしげの秀一のソレとくらべて妙にファンキーだな、ゆかいだな・・・と感じちゃうんですよ。なんでかな?よく見てみたら分かった、これです!
擬音が音符で出来てたからなんです! ・・・超絶だせえ!! 90年代の姉ちゃんのパジャマの柄みたい!
空山はあの日の極限バトルを思い出すかのような激しいメロディにシビれ、こんなことをいうのです! なんたるクソ真面目! 「お前は何をいってるんだ」の大合唱が次候補にならざるを得ない場面ですが、空山はいたって大真面目、ふざけてるところなんて何にもない!
片方が即興でピアノをひくなら、片方はそれを頭で再生、もちろん擬音は音符だ! 親友というのは高めあうもの。かくありたいですな。
かつて「サルまん」にて、竹熊健太郎は「音楽のマンガは音楽をマンガで表現することが上手く出来ないがゆえに流行らない」といったものの、それは「BECK」の登場で覆されたわけです。
しかし「BOY」でさんざんロックをネタにしていたあの梅澤春人先生も、こういう表現になってしまうのが悲しいといえば悲しいところですね。しかしそれは「BOY」「ソードブレイカー」そして「カウンタック」と、世間になんといわれても己のかっこよさをどこまでも追求する梅澤先生らしい・・・といわれたら、超絶・「梅澤先生らしい」ですよ!
ダサいというのは「カッコいい」の反対ではなく、実はミリ単位の近さで向かい合ってるんだよな、と実感させられましたね。
そんなヤンジャン、ここ最近の好調ぶりって、良くも悪くもこう野放図なところにあると思うんです! 今週は「極黒のブリュンヒルデ」がのってなくて残念でしたが、この調子でいって欲しいところ!
中野店 岩井