岩井の本棚 「マンガにでてくる食べ物」 第43回 |
最凶の料理人・カレー将軍鼻田香作
(図1)
モチより米のほうが美味しいだろ
(図2)
すごい「なぜなら」
(図3)
どんな商法だよ
(図4)
いやな青年実業家だな
(図5)
激辛カレー=エサ説
(図6)
これやってみたい
(図11)
胃液逆流味のカレー
(図12)
ドドド
(図13)
よく見ると、金払ってない
(図14)
すまないのだ
(図15)
スッパゲッティ
(図16)
江戸っ子のそば食いみたい
(図17)
さすがグレイテスト!
(図18)
味平は中卒です
(図19)
カレーうどんみたいな味かな
(図21)
実は見栄はりな鼻田
(図22)
少年のことを一生懸命考えるカレー将軍
(図23)
危険物
(図26)
何度見ても最高のコマ
(図27)
ポワーン
(図28)
中毒の第一歩
(図30)
トローン
(図31)
ポカーン
(図32)
モヒカンにコック帽
(図33)
おばさんもトリップ
何かを観たり体験するたびに、自分ランキングを整地する人がいますね。
小説や映画でよくある「オールタイムベスト10位」とか「おいしいラーメンランキング」みたいなものです。
あれは「自分株式相場」みたいなもので、いってみればあれは、 中学生男子が「クラスの女子かわいさランキング」つけてるのとなんら変わりません。
ニキビが目立つから、って順序下げたり、走るときの腕の振り方がかわいい、っていって順序上げたり。 転校生がきたらその子の順位も割り振らないといけない。ホント男子はバカですね。
僕はそういうの考えるのが著しくヘタクソで、今まで観た映画やマンガをそもそも全部記憶してないし、 ランキングやオールタイムを構築できるだけのウンチクも語れないし、甲乙もつけられません。
たぶん頭が悪いんだとおもいます。
なので僕の中では、つねに暫定1位と、それ以外、しかいないのです。
なぜ暫定かと言うと、すぐに感化されてコロコロ1位が変わってしまうからですね。
では今もっともカッコいい男は? と聞かれたら、ちょっと悩んだ末こう答えます。「そりゃ鼻田香作だよ!」と。
その暫定1位が登場するのが「包丁人味平」。
このあいだ「包丁人味平」をセットで買いました。
読む前は、まあアレでしょ、美味しんぼ以前の、ビッグ錠と牛次郎の、 下品で垢抜けない食べ物バトル? ウンチクマンガでしょ?みたいな、勝手な印象で知ったかぶりをカマしてたのですが、 いやぜんぜんです、めちゃくちゃ面白いです。
いま僕の中では「湾岸MIDNIGHT」の次くらいに、最高にゴキゲンなマンガですよ。
知ったかで通してくとこういう宝をスルーしちゃうんですね。読んでみないと何事もわかりません。
包丁人味平読んで驚いたのは、ってけして味対決、料理勝負ではないところ。
「肉の宝わけ勝負」は肉の塊をロースとかヒレに切分ける勝負だったし、 有名な「荒磯焼き」は荒海の中、船に乗りながら魚を焼く、というなんだかわからん勝負だったりします。
しかも焼け、つってるのに片方は火炎放射器を用意し、片方は魚をゆでる始末。
だいたいあんな荒海の中、舟に乗ってまで魚食おう、って客いないよ。
いずれにせよどっちがおいしいものを作れるか、って勝負にならないのがステキですね。包丁を使った曲芸勝負なんですよ。
そんな味平が初めて味を競って客を集める勝負をするのが、この「カレー勝負」の話です。
すごい名編ですよ。面白すぎて手が震える!!
「るろうに剣心」だったら志々雄真琴死亡の回、「キン肉マン」だったらミート死ぬ直前にバッファローマンのツノが飛んでくる回、 小川VS橋本だったら第3戦くらいの山場感を感じさせる回です。
物語は包丁勝負に勝ち、次の目標がさだまらない味平がふとしたことからカレーの屋台を持ったところから始まります。
労務者相手のカレーでは一般人には辛すぎ、一般人に合わせると、 労務者たちには塩気が足りないと不評・・・誰もが食べておいしいといえるカレー、 ってあるのか? 真の大衆料理って何だ? が今回の味平のテーマです。
やがて駅の南北をはさんでデパートが同時にオープン。
デパートの集客で最も効果があるのはレストラン、ということで片方のデパートは最も人気のカレーチェーン、インド屋を誘致。
もう片方のデパートの重役たちはそれに匹敵するカレー屋を! と意気込むがなかなか見つからない・・そんなときそこに味平が現れた! 大繁盛の屋台を目にしておどろく重役たち。どんなカレーだ? すると・・・(図1)。
雑煮カレー!! カレーにモチですか! アアッと仰天しましたが、みな
ニチャニチャのお餅がピリ辛! 黄色く染まったモチ!オエ〜〜。試してみようとも思わないです!
この雑煮カレーの好評に目をつけたデパート社長が味平をスカウトして、 味平VSインド屋はデパート二つの代理戦争、という図式が成立したのです。
インド屋とはどんな店か、というと、アメリカ帰りの成金社長のマイク・赤木が経営する店。
マイクはこの店で日本のカレーを征服しようともくろむ。まあアメリカ帰りだけあって自己主張も強く
服装はストライプのスーツに蝶ネクタイ、髪型はアフロに赤っ鼻、アメリカ帰りの松鶴家千とせ、って感じですか。
新聞に載るときなど、写真では常にピースサイン、(図3・4)。臆面なさすぎですね。
ちなみに味平とマイク赤木が初対面のときに「からけりゃいいだけなら料理じゃねえ、エサだ!」(図5)と挑発。
ていうかマイク、いくらアメリカ帰りの成功者だからって、高校にも行かず、 屋台で港の人足相手に商売してる子どもの味平相手にそんなこというなんて大人げなさすぎだね。
案の定鉄火肌の味平は金を受け取らず、キャッツアイみたいにピシッとたたき返す(図6)。すげえスマート。身につけたい職能だ!
そのマイクがインド屋のチーフコックとして招いたのが、そう、彼です。
カレー将軍! 自分で自分のことを将軍、って言って恥じない男! さすがマイクの下で働くだけある。
ガンダムの階級でいうんならブライトやシャアよりもずっと上。
レビルやドズルと同格ですよ。アムロやランバ・ラルなんかパシリで使っていい身分ですよ。
自信満々ですが、鼻田はその自信を裏付けるだけの実力がある男なのです。
たとえば初登場時。
インド屋カレーの複雑な味の秘密がどうしてもわからず、 懐に入れた牛乳ビンにカレーを入れて味を盗む味平。
チラッと通りかかっただけで鼻田はインド屋のカレーを盗んだ、と見抜く(図8)。 鋭い鼻の持ち主だ・・・ってアレ? 鼻に何か付いてるよ?
そう、鼻田はカレーに精通するあまり6000種ものスパイスをかぎわける力を持っているのです(図9)。
鼻こそが武器。武器を人前にさらすわけないじゃないですか!
いくらちんちんが大きいからと言っても、チャックをおろし露茎させたまま闊歩するわけにはいかんのと同じです!(図10)
じゃああのモヒカンは? いや、アレは別にカレーにも何にも関係ありません。ただの趣味です。
やがてデパートが両方オープン。出だしは好調だった味平カレーだが、 本格的な味のインド屋には徐々に差をつけられていく。マイクの陰謀もあり、このまま店がガラガラだと、 別の店にテナントを明け渡せと迫られる。
なぜインド屋のカレーが人気かというと、本格的な上、辛さが5段階に分けられていて誰の口にでも合うようになっているのです。
それをマネするわけにもいかず悩む味平。そんな中、味平が作ったカレーは辛すぎる、と子供が工夫しているのを見て味平がひらめいた!
そりゃカレーの味をまろやかにするために生クリーム入れる店があるってことは知ってるよ。
でも小学校のとき、牛乳をカレーにこぼしてしまい、 でもそのクラスが「残すの禁止」だったため泣く泣く食べさせられたイヤな思い出がよみがえりました。
子供たちのあいだでミルクカレーはクチコミで広がり大人気に。
しかし偵察に来た鼻田はあっというまにレシピを見抜き、その場で作ってしまう! 鼻田の天才ぶりに恐れをなす味平。
高笑いしながら去る鼻田。「クアーッカッカッカッカカカカ」(図12・13)
ニワトリみたいですね。これねえ、実際に試してみるとわかるんですが体力のいる笑い方ですよ。 やってごらんなさい。2回やったらもうヘトヘトになります。
だが鼻田は意外にもミルクカレーで子供客を奪われたことにプライドを傷つけられ、打倒ミルクカレーを誓う(図14)。 そしてできたのがこれだ!
・・・たしかに子供が好きだろうけれどなあ、 カレー将軍が作ったものだと考えるとちょっとチャチくないですか。
また客側の無理解で「ズー」「ズズー」「ズルル・・・」「ズルルー」(図16)
と食べられるスパカレー。あーあ、こんなに勢いよく食べたら服にシミつくよ。
それにしても何で日本人はファミレスでスパゲティ食べるときはきちんとフォークに巻くのに、 コンビニのとかカラオケボックスのやつとか、安っぽいやつだと急にフォーク巻きを放棄するのはなぜでしょう。
インド屋ではスパカレーが大当たりで、またしても味平の店は閑古鳥が鳴く羽目に。大喜びするマイク赤木(図17)。 デパートの集客はカレー屋しだい、なので味平側のデパートもガラガラになってしまい、 味平はついにデパートのテナントから追い出されてしまうのです。
味平は自分だけの味、をなんとかだそうと苦心していたのですが、追い出される間際の日、 ほんの偶然でついに独自の味を生み出すことができた・・・その名も「味平カレー」(図18)!!
・・・・・・・・・・そのままじゃないか!
どんな味かと言うと、しょうゆを大量にブチこみ、一晩寝かせたカレー。 しょうゆ入りカレーです(図19)。しょっぱそうだ! 隠し味程度で入れるのはアリですが、そんなドバドバ入れたら塩分高いぞ! オエ〜〜。 試してみようとも思わないです!
偵察に来た鼻田、あまりの味平カレーの美味しさに感服。
味平を認め負けを感じる・・・ここ、カレー食うだけで15コマも使ってます(図20)。
あとマイクに6000種区別できるっていってなかったか?(図9) 3000種もサバ読んでたのかい。
あまりの美味しさに落胆する鼻田、客を寄せるカレー戦争には勝ったが味の勝負では負けた・・・と、新たなカレーを作り出すことを誓う。
デパートを追い出された味平は屋台を連ねて味平カレーを売り続ける。
大人気で長蛇の列ができる・・・って、いくら自信あるからって、 自分の名前をこれだけ「味平カレー」「味平カレー」って大量に書き連ねて売るって神経がわかりません。自己顕示欲強いんですね。
鼻田は味平カレーにとられた客を取り返すため新カレーのスパイス調合でこもりきりになる。 必ず勝ってみせると意気込んではみても、その精神は少しずつ崩壊の兆しを見せていたのです・・・。
でもこのシーン、味平のことを考えてるシーンなんだけど、これじゃ少年の肢体に悶々としてるホモにしか見えないよ(図22)。
しまいにはスパイスの調合しながら「ギャーッ!!」と奇声を上げるように(図23)。それを見たマイク赤木、
マイクは流れてしまった客を取り戻すために、大赤字を覚悟しつつインド屋カレーを半額にしてしまう。 高級カレーが250円で食えるとあって客殺到。 流れは大きくインド屋に傾いたが、気が狂ってるスキにそんなことされた鼻田は怒って半額をやめさせてしまう。 プライドがとにかく高いカレー将軍。勝負はまた膠着状態に・・・。
一方味平カレーはインド屋と違って辛さを一種類しか選べない。
必然的に中庸になってしまい、全員の好みに合った味にはならない・・・それが弱点だと言うことは鼻田も味平も気づいていた。 福神漬けをつけたり、冷たい水をつけたりの試行錯誤が続く・・・だが根本的な解決には至らず、あくまでもマイナーチェンジ。
そしてついに鼻田が、新カレーを完成させる。その名もずばり「ブラックカレー」。
カレーは世界に数あれど、そしてカレーマンガ数あれど、いまだにこのブラックカレーを超えるカレーは登場していません。
想像世界を含むカレーで、もっとも美味なのがブラックカレーです。 にもかかわらず誰も真似しないのはなぜか? 店でブラックカレーが出てこないのはなぜなのか?
なぜって、このカレーを食べると背景がまだらになるからです。
まだら? 背景がまだらって、なんだ?
ブラックカレーを初めて試食したのはマイク赤木。
コールタールのように真っ黒なルーをみて「こんなものが食えるのか」と恐れおののきつつ、震える手でやっと口に運ぶと・・・(図26・27)。
ほら、まだらになった!!
ブラックカレーはさっそく店に出されるが、なかなか客が付かない。
そんな中、味平と一緒にカレーを作っているおっさん(日雇い労働者)がブラックカレーをたべる。 コールタールのように真っ黒なルーをみて「こんなものが食えるのか」と恐れおののきつつ、震える手でやっと口に運ぶと・・・(図30)。
まだらになった!
まだらになっただけではなく、なんだか変な、ポワンとした感じになっちゃった!
食べた人もみななんだか変なカレー、と口にしつつも、毎日徐々に客が増えていく。
味平が万人の口に合うカレーを求めて足踏みしている間にも、ブラックカレーはどんどん差を詰めてきたのです。
不思議に思った味平は、面が割れないように女装してブラックカレーを食べに行く。
コールタールのように真っ黒なルーをみて「こんなものが食えるのか」と恐れおののきつつ、震える手でやっと口に運ぶと・・・(図31)。
やっぱりまだらになりました! 味平でもかなわないのか、まだらの力には?
このまだらになる効果は何なのか? みな首をひねりつつ考えるがわからない。
わかることは、ブラックカレーを思い出すと、口にしないと収まらなくなること。
そして毎日でも食べたいと思うこと。おかげで日を追うごとに客が押し寄せるインド屋。日本中の料理関係者のあいだでも話題になる。
その考案者はそのころ、やっぱりおかしくなっていた(図32)!
もう重症です。大丈夫かカレー将軍!
味平は味平で、つけあわせの水の冷たさでカレーの辛さを緩和できる、 カレーは辛いからこそ美味しいんだと悟り、案の定味平カレーは大売れに売れる! だが、 味平カレーを食べた客達がみなインド屋にも向かっているのを知り愕然。
負けだ! ブラックカレーに負けたんだ! と鼻田相手に、負けをついに認める味平。
その瞬間、ついに緊張の糸が切れて鼻田が覚醒してしまったのです!
あれは「自分株式相場」みたいなもので、いってみればあれは、 中学生男子が「クラスの女子かわいさランキング」つけてるのとなんら変わりません。
ニキビが目立つから、って順序下げたり、走るときの腕の振り方がかわいい、っていって順序上げたり。 転校生がきたらその子の順位も割り振らないといけない。ホント男子はバカですね。
僕はそういうの考えるのが著しくヘタクソで、今まで観た映画やマンガをそもそも全部記憶してないし、 ランキングやオールタイムを構築できるだけのウンチクも語れないし、甲乙もつけられません。
たぶん頭が悪いんだとおもいます。
なので僕の中では、つねに暫定1位と、それ以外、しかいないのです。
なぜ暫定かと言うと、すぐに感化されてコロコロ1位が変わってしまうからですね。
では今もっともカッコいい男は? と聞かれたら、ちょっと悩んだ末こう答えます。「そりゃ鼻田香作だよ!」と。
その暫定1位が登場するのが「包丁人味平」。
このあいだ「包丁人味平」をセットで買いました。
読む前は、まあアレでしょ、美味しんぼ以前の、ビッグ錠と牛次郎の、 下品で垢抜けない食べ物バトル? ウンチクマンガでしょ?みたいな、勝手な印象で知ったかぶりをカマしてたのですが、 いやぜんぜんです、めちゃくちゃ面白いです。
いま僕の中では「湾岸MIDNIGHT」の次くらいに、最高にゴキゲンなマンガですよ。
知ったかで通してくとこういう宝をスルーしちゃうんですね。読んでみないと何事もわかりません。
包丁人味平読んで驚いたのは、ってけして味対決、料理勝負ではないところ。
「肉の宝わけ勝負」は肉の塊をロースとかヒレに切分ける勝負だったし、 有名な「荒磯焼き」は荒海の中、船に乗りながら魚を焼く、というなんだかわからん勝負だったりします。
しかも焼け、つってるのに片方は火炎放射器を用意し、片方は魚をゆでる始末。
だいたいあんな荒海の中、舟に乗ってまで魚食おう、って客いないよ。
いずれにせよどっちがおいしいものを作れるか、って勝負にならないのがステキですね。包丁を使った曲芸勝負なんですよ。
そんな味平が初めて味を競って客を集める勝負をするのが、この「カレー勝負」の話です。
すごい名編ですよ。面白すぎて手が震える!!
「るろうに剣心」だったら志々雄真琴死亡の回、「キン肉マン」だったらミート死ぬ直前にバッファローマンのツノが飛んでくる回、 小川VS橋本だったら第3戦くらいの山場感を感じさせる回です。
物語は包丁勝負に勝ち、次の目標がさだまらない味平がふとしたことからカレーの屋台を持ったところから始まります。
労務者相手のカレーでは一般人には辛すぎ、一般人に合わせると、 労務者たちには塩気が足りないと不評・・・誰もが食べておいしいといえるカレー、 ってあるのか? 真の大衆料理って何だ? が今回の味平のテーマです。
やがて駅の南北をはさんでデパートが同時にオープン。
デパートの集客で最も効果があるのはレストラン、ということで片方のデパートは最も人気のカレーチェーン、インド屋を誘致。
もう片方のデパートの重役たちはそれに匹敵するカレー屋を! と意気込むがなかなか見つからない・・そんなときそこに味平が現れた! 大繁盛の屋台を目にしておどろく重役たち。どんなカレーだ? すると・・・(図1)。
雑煮カレー!! カレーにモチですか! アアッと仰天しましたが、みな
「へえーこんなモチのたべ方があったのかあ」と、意外にも大好評。
「カレーのついたモチてうめえもんだな」
ニチャニチャのお餅がピリ辛! 黄色く染まったモチ!オエ〜〜。試してみようとも思わないです!
この雑煮カレーの好評に目をつけたデパート社長が味平をスカウトして、 味平VSインド屋はデパート二つの代理戦争、という図式が成立したのです。
インド屋とはどんな店か、というと、アメリカ帰りの成金社長のマイク・赤木が経営する店。
マイクはこの店で日本のカレーを征服しようともくろむ。まあアメリカ帰りだけあって自己主張も強く
「必ずやってみせる!いややらなければならないのだ!! なぜならわたしはマイク・赤木だ!」(図2)などとその説得力、自分以外には通用しないよね、というアメリカ的主張を展開。
服装はストライプのスーツに蝶ネクタイ、髪型はアフロに赤っ鼻、アメリカ帰りの松鶴家千とせ、って感じですか。
新聞に載るときなど、写真では常にピースサイン、(図3・4)。臆面なさすぎですね。
ちなみに味平とマイク赤木が初対面のときに「からけりゃいいだけなら料理じゃねえ、エサだ!」(図5)と挑発。
ていうかマイク、いくらアメリカ帰りの成功者だからって、高校にも行かず、 屋台で港の人足相手に商売してる子どもの味平相手にそんなこというなんて大人げなさすぎだね。
案の定鉄火肌の味平は金を受け取らず、キャッツアイみたいにピシッとたたき返す(図6)。すげえスマート。身につけたい職能だ!
そのマイクがインド屋のチーフコックとして招いたのが、そう、彼です。
「クックッククク・・・カレー将軍と呼ばれカレーにかんしては世界中にも右に出る者はいないといわれるこの鼻田香作のカレーの味にこれだけ接近したのは今までおまえひとりだ」(図7)
(図7)
すごい自画自賛
(図8)
モヒカンに鼻マスク、ソフト帽
自信満々ですが、鼻田はその自信を裏付けるだけの実力がある男なのです。
たとえば初登場時。
インド屋カレーの複雑な味の秘密がどうしてもわからず、 懐に入れた牛乳ビンにカレーを入れて味を盗む味平。
チラッと通りかかっただけで鼻田はインド屋のカレーを盗んだ、と見抜く(図8)。 鋭い鼻の持ち主だ・・・ってアレ? 鼻に何か付いてるよ?
(図9)
カレーに使うのはせいぜい30種です
(図10)
これこそ武器
いくらちんちんが大きいからと言っても、チャックをおろし露茎させたまま闊歩するわけにはいかんのと同じです!(図10)
じゃああのモヒカンは? いや、アレは別にカレーにも何にも関係ありません。ただの趣味です。
やがてデパートが両方オープン。出だしは好調だった味平カレーだが、 本格的な味のインド屋には徐々に差をつけられていく。マイクの陰謀もあり、このまま店がガラガラだと、 別の店にテナントを明け渡せと迫られる。
なぜインド屋のカレーが人気かというと、本格的な上、辛さが5段階に分けられていて誰の口にでも合うようになっているのです。
それをマネするわけにもいかず悩む味平。そんな中、味平が作ったカレーは辛すぎる、と子供が工夫しているのを見て味平がひらめいた!
「ミルクカレー」牛乳を混ぜたカレーです(図11)。オエ〜〜。試してみようとも思わないです!
そりゃカレーの味をまろやかにするために生クリーム入れる店があるってことは知ってるよ。
でも小学校のとき、牛乳をカレーにこぼしてしまい、 でもそのクラスが「残すの禁止」だったため泣く泣く食べさせられたイヤな思い出がよみがえりました。
子供たちのあいだでミルクカレーはクチコミで広がり大人気に。
しかし偵察に来た鼻田はあっというまにレシピを見抜き、その場で作ってしまう! 鼻田の天才ぶりに恐れをなす味平。
高笑いしながら去る鼻田。「クアーッカッカッカッカカカカ」(図12・13)
ニワトリみたいですね。これねえ、実際に試してみるとわかるんですが体力のいる笑い方ですよ。 やってごらんなさい。2回やったらもうヘトヘトになります。
だが鼻田は意外にもミルクカレーで子供客を奪われたことにプライドを傷つけられ、打倒ミルクカレーを誓う(図14)。 そしてできたのがこれだ!
「スパカレー」カレーがかかってるスパゲティーです(図15)。
・・・たしかに子供が好きだろうけれどなあ、 カレー将軍が作ったものだと考えるとちょっとチャチくないですか。
また客側の無理解で「ズー」「ズズー」「ズルル・・・」「ズルルー」(図16)
と食べられるスパカレー。あーあ、こんなに勢いよく食べたら服にシミつくよ。
それにしても何で日本人はファミレスでスパゲティ食べるときはきちんとフォークに巻くのに、 コンビニのとかカラオケボックスのやつとか、安っぽいやつだと急にフォーク巻きを放棄するのはなぜでしょう。
インド屋ではスパカレーが大当たりで、またしても味平の店は閑古鳥が鳴く羽目に。大喜びするマイク赤木(図17)。 デパートの集客はカレー屋しだい、なので味平側のデパートもガラガラになってしまい、 味平はついにデパートのテナントから追い出されてしまうのです。
味平は自分だけの味、をなんとかだそうと苦心していたのですが、追い出される間際の日、 ほんの偶然でついに独自の味を生み出すことができた・・・その名も「味平カレー」(図18)!!
・・・・・・・・・・そのままじゃないか!
どんな味かと言うと、しょうゆを大量にブチこみ、一晩寝かせたカレー。 しょうゆ入りカレーです(図19)。しょっぱそうだ! 隠し味程度で入れるのはアリですが、そんなドバドバ入れたら塩分高いぞ! オエ〜〜。 試してみようとも思わないです!
(図20)
手が震えるほどうまい味平カレー
「味平カレーか・・・みごとなカレーだ!!」おいおい鼻田、いくらインドで修行してたからってしょうゆの味がわからないってどういうことでしょう。
「しかも三千種類のスパイスをかぎわけることのできるこのおれの鼻でさえあのカレーのスパイスはわからなかった!」(図21)
あとマイクに6000種区別できるっていってなかったか?(図9) 3000種もサバ読んでたのかい。
あまりの美味しさに落胆する鼻田、客を寄せるカレー戦争には勝ったが味の勝負では負けた・・・と、新たなカレーを作り出すことを誓う。
デパートを追い出された味平は屋台を連ねて味平カレーを売り続ける。
大人気で長蛇の列ができる・・・って、いくら自信あるからって、 自分の名前をこれだけ「味平カレー」「味平カレー」って大量に書き連ねて売るって神経がわかりません。自己顕示欲強いんですね。
鼻田は味平カレーにとられた客を取り返すため新カレーのスパイス調合でこもりきりになる。 必ず勝ってみせると意気込んではみても、その精神は少しずつ崩壊の兆しを見せていたのです・・・。
でもこのシーン、味平のことを考えてるシーンなんだけど、これじゃ少年の肢体に悶々としてるホモにしか見えないよ(図22)。
(図24)
一応チーフコックなんだけれどね
(図25)
勝手に入って勝手に出てくマイク
「だめだ! こいつ気が変だぞ」・・・それだけですか! それで済ますなよ!
「キミいこう」(図24・25)
マイクは流れてしまった客を取り戻すために、大赤字を覚悟しつつインド屋カレーを半額にしてしまう。 高級カレーが250円で食えるとあって客殺到。 流れは大きくインド屋に傾いたが、気が狂ってるスキにそんなことされた鼻田は怒って半額をやめさせてしまう。 プライドがとにかく高いカレー将軍。勝負はまた膠着状態に・・・。
一方味平カレーはインド屋と違って辛さを一種類しか選べない。
必然的に中庸になってしまい、全員の好みに合った味にはならない・・・それが弱点だと言うことは鼻田も味平も気づいていた。 福神漬けをつけたり、冷たい水をつけたりの試行錯誤が続く・・・だが根本的な解決には至らず、あくまでもマイナーチェンジ。
そしてついに鼻田が、新カレーを完成させる。その名もずばり「ブラックカレー」。
カレーは世界に数あれど、そしてカレーマンガ数あれど、いまだにこのブラックカレーを超えるカレーは登場していません。
想像世界を含むカレーで、もっとも美味なのがブラックカレーです。 にもかかわらず誰も真似しないのはなぜか? 店でブラックカレーが出てこないのはなぜなのか?
なぜって、このカレーを食べると背景がまだらになるからです。
まだら? 背景がまだらって、なんだ?
ブラックカレーを初めて試食したのはマイク赤木。
コールタールのように真っ黒なルーをみて「こんなものが食えるのか」と恐れおののきつつ、震える手でやっと口に運ぶと・・・(図26・27)。
ほら、まだらになった!!
「こ、こんな料理ははじめてだ!!」このあとの自己顕示ぶりがいかす!
「ひと口たべればもうひと口たべたくなる・・・ま、まるで魔術にかかったように手がのびていく・・・」
「いったい何という料理かね、これは!」(図28)
(図29)
えばり放題
「カレー将軍鼻田香作が五日間研究室にこもり 世界中のあらゆるスパイスを駆使して完成した世界でただひとつのカレー!!」 「ブラックカレーッ!」(図29)カッコイイ!! 鼻田超カッコイイ!! サインくれ!
ブラックカレーはさっそく店に出されるが、なかなか客が付かない。
そんな中、味平と一緒にカレーを作っているおっさん(日雇い労働者)がブラックカレーをたべる。 コールタールのように真っ黒なルーをみて「こんなものが食えるのか」と恐れおののきつつ、震える手でやっと口に運ぶと・・・(図30)。
まだらになった!
まだらになっただけではなく、なんだか変な、ポワンとした感じになっちゃった!
食べた人もみななんだか変なカレー、と口にしつつも、毎日徐々に客が増えていく。
味平が万人の口に合うカレーを求めて足踏みしている間にも、ブラックカレーはどんどん差を詰めてきたのです。
不思議に思った味平は、面が割れないように女装してブラックカレーを食べに行く。
コールタールのように真っ黒なルーをみて「こんなものが食えるのか」と恐れおののきつつ、震える手でやっと口に運ぶと・・・(図31)。
やっぱりまだらになりました! 味平でもかなわないのか、まだらの力には?
このまだらになる効果は何なのか? みな首をひねりつつ考えるがわからない。
わかることは、ブラックカレーを思い出すと、口にしないと収まらなくなること。
そして毎日でも食べたいと思うこと。おかげで日を追うごとに客が押し寄せるインド屋。日本中の料理関係者のあいだでも話題になる。
その考案者はそのころ、やっぱりおかしくなっていた(図32)!
もう重症です。大丈夫かカレー将軍!
味平は味平で、つけあわせの水の冷たさでカレーの辛さを緩和できる、 カレーは辛いからこそ美味しいんだと悟り、案の定味平カレーは大売れに売れる! だが、 味平カレーを食べた客達がみなインド屋にも向かっているのを知り愕然。
「味平カレーをたべた客はやっぱりブラックカレーもたべたくなるらしい」つまりカレー連続食いするってことですか? 昔の人は胃が大きかったんですね。 そんなバカな! と味平は思わずインド屋に突入。そこではみんなまだらになっていた(図33)。
負けだ! ブラックカレーに負けたんだ! と鼻田相手に、負けをついに認める味平。
その瞬間、ついに緊張の糸が切れて鼻田が覚醒してしまったのです!
(図37)
神は鼻マスクしないでしょ
「クアーツカッカッカッカッカカカ・・・」狂った鼻田は救急車で運ばれていく。残された味平は鼻田の尋常でない有様をみて、ついにブラックカレーの秘密を知る。
「いったいこの俺を誰だと思ってるんだね」
「いいか俺はカレー将軍鼻田香作だぜ カレーに関しては世界中で俺に勝てるヤツは誰もいねえんだ!」
「それがたかが屋台のカレー屋小僧が勝てると思っていたのかい クアーッカッカッカッカカ・・・」(図34・35)
「こいつらはもう俺のブラックカレーなしでは生きていけなくなるんだぜ クアーッカッカッカッカカカ・・・」
「俺は神様よ そうカレーの神様さ クアーッカッカッカカカ」
「さあみなの者このカレーの神様の足元にひざまづくのだ!」
「俺は神様だ クァーッカッカカカカカ 神だーっ」(図36・37)
「奴は変になったんじゃねえ!」 「中毒だ」(図38)
(図38)
「中毒だ」「えっ中毒!」
(図34)
喜びの絶頂
(図35)
スピード感あるなー
(図36)
将軍から神に。北朝鮮的ですね
(図39)
なんかヤってるようにしかみえないんですけど
カレーのスパイスの中には麻薬に近いものもある。そんな、スパイスに慣れ親しんでいた鼻田はいつのまにか麻薬中毒になってしまったのだ・・・(図39)。
ブラックカレーの魅力とは中毒に近いもので、常習性をかもし出す「何か」が入っていたから、日にあけず食べようという気持ちになったのですね。
そりゃ背景まだらになるのも当然だよね!
民衆たちは
「やれやれもう少しでおれたちも麻薬中毒になるところだった」といたってノンキです。
「しっかしおどろいたねカレーに麻薬なんて」
おまえら背景まだらにさせられといてそれだけかよ!
みなさんもカレー食べたら、自分の背景がまだらになってないかどうか確認してください! もしまだらになったとしたら、いまたべてるものこそブラックカレーです!
(図40)
さようならカレー将軍
しかしそのカレーにかける生き様は多くの人々に影響を与え、 大麻かなんかで自分の背景をまだらにしてみたい、とうっかり感化される若者があとを立ちません。
ダメ。ゼッタイ。ですからね! 大麻とシャブはぜんぜん違いますがやってみる前に「エンドレスドラッグウォーズ リスク」(マンガけもの道第12回)を読むように。
余談ですが、きょう札幌のカレー屋さんで食事してたところ(味平に感化されここ一週間ずっとカレーです)、 見るからに温和そうな60過ぎの店のおばさんが若い店員に向かって
「覚醒剤ってあれよね、やると体がポカポカするのよネ」などと、うそ!! マジで!! と思うような不穏な発言をしていました。
どうやら誰ぞが覚醒剤で検挙されたニュースを受けての発言のようですが、 店に客が僕一人しかいないとはいえ、シャブの話なんぞカレー食ってるときにされると「もしやこのカレーにシャブが!!」などとブラックカレーつながりで連想して 震える僕のようなバカもいますので慎んでいただきたいものです。
どうですか、僕の選ぶ暫定一位は? え、ダメ。
ああ、そうですか・・・まあそういう見方もアリかもしれんよね・・・そうですよね・・・。
包丁人味平は文庫サイズが最も手に入りやすいです。
まだらになんかなるもんかとお思いの貴兄は、まんだらけ各店へ急げ!
※この記事は2006年3月15日に掲載したものです。
(担当岩井)