「この報告書は、まんだらけのオタク社員たちに富士登山を挑ませた熱血取締役の記録である
普段ろくに運動もせず好きなことだけやっているオタク社員たちが登山部活動の中から健全な精神を培い、
わずか数ヶ月で富士登山をなし遂げた奇跡を通じてその原動力となった、信頼と愛を余すところなく記録化したものになる予定である」

2020年 7月31日 番外編 赤岳登山記録【赤岳】

昨年夏の八ヶ岳主峰赤岳登山の記録です。
約一年を経過しての登山レポートで心苦しくは思っています。
当日集ったメンツが現中野店長小山さん、高橋宗さん、そして私のヴィンテージ部門の配下でしたので、その時は社長(当時副社長。以下副社長)の趣味のお供、と思っておりました。
しかし先日、あの日の登山は準公式扱いから格上げの公式試合だった事を知らされたので、慌ててレポートを記載する無礼お許しください。
思い出しながら記載します。

メンバー
副社長(当時)、小山カオス店長(当時)、高橋宗(カオスVIN)、大井(JPA出向中)

午前6時30分ころ、出発時の東京の天気予報は雨でしたが、霧雨程度でしたので傘を持たずに新宿駅に向かいました。まだ通勤ラッシュ前の駅は閑散としていましたが行き交う人々の流れは早く、逆行するように9番ホームへ。

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午前7時あずさ1号新宿駅を発つ
茅野駅到着は9時過ぎの予定
車中副社長は山頂の天候と下山後の食事を気にされています。
「午後5時台に街に戻り午後6時閉店の信州そばの名店に寄りたい」とのお言葉。
そんな軽い感じでお話されているので、けっこう簡単に下山できるのね、ぐらいの認識でした。
しかし山の熟練者とビギナーの認識には隔たりがあることを、当方は甘い認識だったことを後に痛烈に実感する事態に間もなくなることを、この時は知る由もありませんでした。

私自身、初めての登山なので装備は万全にしたつもりだったので何とかなるだろうという呑気具合でした。隣に座っている高橋宗氏も初参戦。
彼の涼し気な表情からは体力自慢の自信が伺える。頼もしい。羨ましい。

懸念は、寝不足はいつも通りだからよいとしても、2年前から比べると運動を全くしなくなったせいで15kg以上肥えた体重、そして昨夜ご馳走していただいトンカツやラーメンはまだ排出されていない腹の状態。もしかして不安で緊張しているのか??
車内トイレに2回入っても何も出ず、という深刻な状態で茅野駅に到着してしまう。
なるようにしかならないので考えるのを止めました。

9時過ぎ茅野駅到着。駅チカのレンタカーで赤岳登山口へ向かう。
道中コロナ禍で山荘はどこも開いていない様子。
登山口の美濃戸山荘で出発前の記念撮影。
南沢コースで山頂を目指すとの事。小山さんからルート地図をいただく。

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しきりに副社長は曇りがかっている頂上を見上げ山頂の天候を気にされている。
こんなに暑く30℃ほどなのに、頂上は20℃を下回る気温とのこと。

10時45分美濃戸山荘出発

最初はハイキング程度に思っていて、皆さんについていくことも問題ないように思えました。

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渓流の風情を眺めながら木橋で渡り、雨上がりなので清々しい杉の木の香りが漂ってきて正に森林浴を堪能できます。

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そして、森が途中開けたところで山頂を望むことができ、頂きの晴れ具合を確認できて安心しました。しかしまだモヤっている様子が伺え、到着時間頃にはまだどうなるか分からないとの事。

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とにかく麓の天候はとてもキレイな夏空。深い緑が目に優しい。
ブラキストン線で隔たれたシベリア亜区の大自然に慣れ親しんでいる北海道民の私でも、気持ちが晴れる北海道とは違う濃い森の澄んだ空気。
と思っていましたが20分も経過する頃には、ちょっと呼吸が整わずに、自然を堪能できなくなっている自分がいるのが分かりました。
体が重いし、朝からずっとだけど大きい方のトイレに行きたい...
なので体が思うようにコントロールできないのか...?
そんな私を余裕で写真に収める高橋氏。彼も初心者のはずだが...
足が止まった。

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登山としてはむしろゆったりペースなのでしょうが私にとってはハイペースと思える皆さんの歩調。
とてもついていけないな、と思ったのは30分経過していないと思います。

辛い、とてもツライ。モロに体重がかかっているからか足首も股関節も痛くなってきた。
何故私は登山について来たのだろうか?
サーラではJPA部門の合宿中で、いつものようにJPAのみんなと一緒にいればこんな苦しみには味合わなかったのに。
苦行としか思えない。

見かねて小山さんからは歩幅は小さく登った方が良いというアドバイスをいただき、やってみる。
以降歩幅は小さく、を意識して登る。
多少は改善される。
何でも技術や呼吸方があるのだと教えていただきました。

そしてようやく13時頃、行者小屋に遅れて到着。
既に着いていた副社長は山頂の天候を気にされている。
そして日本手ぬぐいの優位性を教えていただく。
保水力が在りながら薄くて通気性が良く、なおかつ水切れがよく、両端が縫ってなく切りっぱなしになっているために速乾性が高く衛生的にも優れている。
私はただのコットンの手ぬぐい。ずっと汗を吸いっぱなしで重たい。
こんなたかだか数百グラム程度の重さも気になるぐらいで、首に巻くのを止めました。

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気持ちは山頂までたどり着けるかだけが心配で、体はこのままずっと休憩していたいぐらい。
小山さん高橋氏は、もぐもぐタイムとばかりに街のコンビニで買ったパンやおにぎりをつまんでいる。
私は既に疲れて果てて固形物はとても口にできない。
用意した1リットルの水(500ml2本)はもう尽きている。なので湧き水で補充。とにかく水分しか口に受け付けない。
こんな調子で山頂に行き、戻って来られるのだろうか?

「ここからが本番でキツくなってくる」と、余裕で揚げ鶏などなどを軽く口にされながらの副社長からのご指導。
えー!これ以上キツくなるのですか!と心の中で軽いパニック状態。
しかし副社長は、やっぱり到着後のお目当て信州そばを食べられる時間に下山できるか気にされている。
とにかく、こんな状況で脂っこいモノをよく食べられるなと感心してしまう。
仮に戦時下の前線にいたとして突撃前でも晩ご飯の心配をされているのかもしれないと勝手に想像していると少しは気が紛れてきた笑

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ほんとにキツイ。峻険な勾配やリズムが取りずらい凹凸の道やゴロゴロとした岩の上を歩くのが難しいというよりも、とにかく普通に思うように歩けないのがツライ。
前にも横にも後ろにも重心を代わる代わるかけたりして試して慎重に登っても自重がキツすぎる。自分の体重がこれほどまでにキツイとは生まれて初めて。
そんな状況で、勾配のキツイ岩場に作られた工事現場で用いられるパイプをクランプで組んだ簡素な足場。私の様なビギナーの為に作られたモノであろうか。
大自然の中の何気ない人工物はとても有難く思える。
ツラくて目線を下すと先ほどいた山小屋がとても小さく見える。屋根がある場所が恋しくなってくる。
トイレ行っておけばよかった...

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そして、標高が計測できるアプリで測ってみると
2,575m。
聞くに山頂は2,899m。
残り300m。平地なら3分ちょっとで到達できる距離なのに・・・その距離を縦じゃなくて横にしたい...山頂まではまだ1時間はかかるとの事。

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息を整え、体を慣らしながら何も考えずに登り続けること1時間、
途中、女王と言われるコマクサ等、まばらながら高山植物がお出迎えしてくれている。
なので撮影するという口実で改めてホントに束の間の休息を勝手に取る。

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そしてようやくキレット分岐。まだ標高は2,700mほど。
随分前に到着されている副社長からゲキが飛ぶ。
もう少しで山頂だから根性みせろ!的な。
平時でも、平地でも、会社でも、標高2,500m越えていても、いつでもゲキが飛ぶ。
とにかくゲキが飛ぶぐらいもう体がついていけない。
しかしビギナーのはずの高橋氏は2番手でついて行っているらしい。ちょっと羨ましいと思う狭量の私が嫌になる。

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キレット分岐から頂上方面を見上げると、もう道ないじゃないですか・・・
岩肌むき出しの崖じゃないですか・・・
事前にちょっとは勉強してきた山のこと。山頂付近は「開析された火山山体急斜面」ですねえ、という予備知識なんて何のクソの役にも立たない。というかその情報を活かす手段が分からないので全くいらなかった。
もう体力の限界はとっくに過ぎているのに、ロッククライミングの様に更にここを登っていくの??
と思っていた矢先に我先にとよじ登って行く先頭のお二人。

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リュックを捨てたい。帽子もうっとうしい。
目線を落とすとはるか下に麓が見える。緑は美しい。
このまま落ちたら楽になるかな、と弱音を吐く。

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曇ってきた。視界が開けない。上へ登っている以外どこにいるかも分からない。
とにかく何も考えず上へ上へと手足を動かしていると、かすかに人々の声が聞こえてくる。山頂に集った人々の楽し気な声か。
ようやく山頂なんだな。と安堵する。なぜか力が湧いてきた。
小山さんが調子悪そうに見える。

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14時45分
スタートから丁度4時間
2,899m
山頂に到着

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残念ながら曇りで眼下は開けてません。
ですので独特な湿り気のある冷気は雲の中の頂きを感じますが、あたりが確認できない状況だと、足場が小さい安定しない場所に立っている実感はほとんどありませんでした。
そして、みんなで記念撮影。

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とみるみるうちに、雲が分かれて視界が開けてきました。
こんなに高いところまで登ってきたのね。
月並みにしか言えないけど、下界とは隔絶された全てのモノが小さく感じられる景色。
よく登ってきたなア。

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と体を休ませながらなんとなく感慨にふけっていたら、副社長はもっと先の足場の悪い崖に一人で登っていて周りを見渡している。
そして、早く下りないと信州そばが食えねえな!
・・・ああ、
この人には何をやっても適わないな。と改めて思いました。
はい!速やかに下山!
山頂滞在時間ってこんなもんなんだ。15分なかったくらい?

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下山ルートを足早に下りていく前方にいる副社長と高橋氏に必死についていく。
とにかく下りる。
わかったのは、登りよりも足が痛い、とにかくつまさきがとても痛い。
私のペースを見守るように後から来こられる小山さんのペースを乱さないようにと考えて、なるべく同じリズムで下ってゆく。
しかし尻もちはつくは、足はグネるは、ほぼ本能のみで足を動かし続けました。

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必死でひたすら黙って下っていたので写真はほとんど撮れなかったのですが、途中、ニホンジカに遭遇。こちらを伺っている。
エゾシカを頻繁にみている北海道民にとって鹿ぐらいでは何とも思わないけど、何よりも生き物の生息圏内に戻ってきているのだと安心しました。
それよりもニホンカモシカに会いたかったなあ、遭遇できないのかな?
という思いは届かず。
いつかカモシカに遭遇したい、と思う次第。

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18時
3時間ほどかけて出発点に到着

既に副社長は下山していて我々の到着を待ち詫びておられたご様子。
笑ってらっしゃいました。
「もうそばは間に合わないな...風呂入って帰ろう」

麓から離れたところにあった温泉はとても癒されました。皆様もサッパリと気持ちよさそう。
サウナに入り水風呂に浸かっていられて生を感じました。
何よりもトイレ行ってスッキリできるって幸せと思いました。

障害物のない平地を歩ける普通に幸せを感じ、心は解放感でいっぱいだったので、つい数時間前の肉体的な苦しみを忘れたかの如く、つま先が痛い以外は他はさほど問題なく思えます。
しかし帰りの車中では、体の節々が痛くなってきている感じがありました。
そんなもんか。

しかし申し訳ありません。
信州そば食べられなくて。

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最後にビギナーでも登れるような登山コースを選んで頂いたかもなのに時間通りに下山できなかった申し訳なさを副社長にお伝えすると
「中の上ぐらいでま、まあまあな登山。初心者にはなかなか難しい方」
との事でした。
そんなに出来は悪くなかったのかも、と希望が見えました。
高橋氏と私の登山部セレクションの合否はさておき、私自身は無事東京に帰って来られて、新宿でお食事を頂きながら「登山って良いな」と有り体ですが思いました。
階段は普通に登れなくなっているから、翌日からのJPA合宿がまともに動けるかどうかはさておき。

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当日の歩数は28,763歩。約19kmほど歩き1,300キロカロリーの消費。2kgほど体重減。数字を確認するには思ったほどでもなかったのかも。
キツく感じたのは、ただ単純に運動不足と、つきまとい続けた便意により厳しい道のりとさせていたと思いたい。

ということで正式な登山部の活動だったのですが、既に50回という記念登山は今年6月に行われていましたので、開催回数表示のない非公式のような扱いになってしまいました。
まあ、我々ヴィンテージ本担当らしくナンバーレスのAP版の豪華本の様です!??

次回は体を絞って、大きい方も早めに済ませて軽くなってハイペースで登って下ります。それでそばを食べます。
なので個人的に、北海道の山々で高度順応してから本州の山に挑もうと思っていたら、最近北海道の各地で羆が頻繁に出没注意!
機会を見計らって、北海道登山個人活動を行いたいと思います。

2020年7月31日 番外編 【赤岳】

札幌店ヴィンテージリーダー、現JPA部門出向中 大井健一朗

札幌店 大井

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