「この報告書は、まんだらけのオタク社員たちに富士登山を挑ませた熱血取締役の記録である
普段ろくに運動もせず好きなことだけやっているオタク社員たちが登山部活動の中から健全な精神を培い、
わずか数ヶ月で富士登山をなし遂げた奇跡を通じてその原動力となった、信頼と愛を余すところなく記録化したものになる予定である」

2025年5月23日 第七十六回 谷川岳 西黒尾根ルート

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2025年5月の山は谷川岳。
谷川岳は太宰治や新田次郎の小説にも登場する超有名な百名山のうちの一つで、登山部としてもいつかは登ってみたいと思っていた山です。
上越新幹線の上毛高原駅から谷川岳行きのバスがあり、ロープウエイを使えば案外気楽に登れる山でもあるため、登山客の年齢層の幅広いです。
この谷川岳、日本一、いや世界のギネスの記録を持っている山で、その理由は一番滑落による死亡者が多い山とのこと。
一口に谷川岳と言ってもルートは色々あり、私たちはもちろんそんな滑落ルートは計画していません!

せっかく谷川岳に登るのなら「西黒尾根ルート、行っちゃいますか?」と竹下常務。
西黒尾根は日本3大急登のうちの一つで、将来を見据えて体力のあるうちに登っちゃおうということらしい。
今回のコースはロープウエイ乗り場から西黒尾根を通って山頂まで行き、そこから天神尾根ルートで帰りはロープウエイで戻ってくる計画です。

参加者は、竹下、めぐちゃん、久しぶりの参加の成海くん、そして私、西田です。
上毛高原高原からレンタカーで登山口付近まで行って、帰りは温泉に浸かり、どうしてももつ煮が食べたい竹下のために車を走らせる予定です。

集合は東京駅、新幹線は6時36分発、その名も「たにがわ401号」。
私が東京駅に行く時はいつも千代田線で二重橋前で下車して東京駅まで歩きます。
念のために1本遅れても大丈夫なように6時過ぎに二重橋前に到着する電車に乗車。
駅から新幹線乗り場まで歩いて13分。出発には十分間に合います。
早朝の電車は、無言でそれぞれの職場に向かっています。
登山のリュックを背負っているのは私だけ。電車は比較的空いていて、とりあえず荷物の整理でもしようかとシートに座り、リュックの中をゴソゴソ・・・
確実に入れた記憶があるけど、念のために免許証をチェック。
(え⁉うそ!)←心の声
入れたと思っていた免許証の代わりに入っていたがなんと保険証!
これではレンタカーができない!!

急いで次の駅で電車を降り、反対側の電車を待っている間に竹下に連絡。
「免許証忘れたから取りに帰るわ」
「次、1時間後ですね・・先に上毛高原行っときます」
まぁ先に行っても運転できるのは私だけだけど?

「1時間遅れても下山間に合う?」
「多分、大丈夫です」

全力で自宅に免許証を取りに帰り、再び駅へ。
なんとか6時30分に二重橋前に到着する電車に乗れた!
そこから新幹線が出るまでは6分間。もしかすると間に合うかも?
ふたたび竹下に連絡。
「間に合うかも知れない!」
「弁当買っときましょうか?」
いや、間に合わなかったらそれ誰が食べんねん?要らんでしょ!

リュックのベルトをしっかり締めて、靴紐も結び直し、全速力で走れる態勢を取って、
電車の扉が開いたと同時に走り出す。
最近走り込みが足りないせいか体力が持たない。
息が切れる。もう諦めようかな・・という思いが湧き上がってくる。
JRの改札に入った時には残り1分。
新幹線の乗り場までが遠い。
最後のエスカレータを駆け上がっているとドアを閉める音が聞こえた。
(あ~もうダメだ・・・)
その時に、前の人が少し道を譲ってくれたので、最後の力を振り絞って駆け上がり、
ドアが閉まる3秒前に滑り込めた!
山に行く前に疲労困憊。

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上毛高原までは1時間ちょっとですぐに都会の喧騒を離れ、静かな朝の空気の中、レンタカーは
駅の目の前。
今更だけど、免許証があるか再確認。
レンタカー屋のオープンと同時に入店。蜂も一緒に入店したらしく、店員は蜂を追い出そうと必死。
今までのレンタカーの中で最速で手配完了。
車を走らせること30分ほどで登山口に到着。

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ロープウエイ乗り場はあるけれどももちろんこれは帰りに取っておく。
行きは西黒尾根を登るのだ。
チケット売り場のお姉さんが「西黒尾根ですか?気を付けて」と言って送り出してくれた。

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西黒尾根は急登と言いつつ、初番はそれほどでもなく、順調に歩みを進めていく。
雪渓に差し掛かったところ、後ろから来た男性は、アイゼンも付けず、慣れた様子でサクサクと抜かしていきました。
竹下が「アイゼンは12本爪で!」と事前情報をくれたことで、アイゼンの準備はバッチリ、でも「ピッケルは要らないっスね」ということで、ストックを準備。

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この雪渓、上の方はかなり斜度がある。さっきの男性、これをアイゼンなしとはどういうこっちゃ?と思いつつ、竹下は怖さから後ろを振り返らずに進んでいく。
一番怖い箇所を全員何とかクリアし、まあ、帰りはここ通らないしねと安堵の一行でした。

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雪がなくなったのでアイゼンを外し、代わりに登場したのがガレ場(岩場)。
足の置き場所がなかなか見つからず、岩に打ち込まれた杭にぶら下がったクサリを頼りに登らねばなりません。
歩幅がある男性陣が超えられた岩も女性陣は行けるかどうかがわからず、上から見てもらおうと名前を叫んでも、彼らは先に進んでしまっていて声が届かない。
まったく大切な時に役に立たない!

なんとかめぐちゃんと二人、協力して難所を超え、先で待っていた二人に追いつき、一休み。
谷川岳を甘く見過ぎていました。
一番怖いのが、クサリに全体重を掛けないと登れないので、万が一、その瞬間にクサリが抜けてしまったら良くて大けがです。
最悪の事態も容易に想定できるこの山に気軽に来てしまったことを深く後悔した次第です。

今回でこの山は最後、帰りは違うルートだし、二度と来ることがない山だと思いながら歩みを進めてきました。
休憩も取ったし、そろそろ出発と思っていた時に、山頂方面から来た男性が、「山頂直下はかなり危ないですよ」と忠告してくれました。
「写真見せましょうか?」と言ってスマホを取り出して、「ホラ、こんな感じです」と見せてもらってもそこがどれだけ危ないのかが実感できず、とりあえずお礼を言って、そこまで行ってから山頂にアタックするかどうかを決めようということに。

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私たちはどうしても山頂を目指したいわけではなくて、来た道を戻るのが嫌だっただけです。
しばらく進むとめぐちゃんが急に「引き返すならもうここで引き返しません?」と。
簡単に引き返せる感じもしないので、時間を要することも考慮すれば早目の撤退はスマートな判断かも知れない。
協議の末、私たちは、今来た道を引き返すことに!
下りにかかる時間を考慮してのめぐちゃんのナイス提案でした。

一方でまたあのクサリを通るのか・・・とクサリ場が怖い私と、雪渓を無事に下りられる気がしないと雪渓が怖い竹下と、心は重く、全員で離れず、慎重に下りようとチームはまとまりました。

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動画たち ↓

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クサリ場に差し掛かると、下から成海くんと竹下が、「そこです!そのまま下にいけば大丈夫ですよ!」と指南してくれる。
これは行きと違ってかなり安心感がありました。
それに岩場にも少し慣れた?
行きほどの怖さはなく、クサリに全体重をかけるしかないと覚悟を決めて下りることにしたことも結構スムーズに下りられました。

最後は竹下が超怖がっていた雪渓を残すのみ。
随分下ったところで、「あれ?雪渓下らずに下りちゃったんじゃないですか?」と成海君。
あんなにがんばって雪渓登らなくても横に別のルートがありました。

無事に下りられることがわかってみんな元気を取り戻し、またチャレンジしたいねという喉元過ぎれば熱さを忘れる登山部のメンバー。

下山後は、土合駅に立ち寄ってちょっとした観光気分を味わうことに。改札に行くには400段も階段を下りなくてはならないという珍しい構造の駅で、もちろん写真撮影だけで終了。とても下ってまた上る気力はなかったです。

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温泉は鈴森の湯。玄関で岩魚を焼いていて温泉宿の風情があります。
今回の竹下の目的の一つが谷川岳パーキングエリア内にあるもつ煮込み。
谷川岳PAは鈴森温泉からすぐそこだけど、果たして高速道路上に歩いていけるのか?
そこが問題です。

温泉から上がると竹下が暖簾のところで待ち構えていて、
「西田さん、大至急報告が2件あります」
「一つは、岩魚を先に焼いてもらっています。もう一つはパーキングエリアには徒歩で行けませんでした」

仕方がないので、今回は鈴森の湯で、岩魚とざるうどんかそばを食べようということに。
ざるうどんは20分ほど時間がかかると言われたけれども、温泉水で作ったうどんが食べてみたくて注文。
あれ?もしかして、新幹線の時間に間に合わないかも?
うどんを1分で食べないと間に合わないことが判明。
どうせなら、新幹線1本遅らせてゆっくり帰ろうということに。

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車も無事に返却し、再び上毛高原駅に。ここは新幹線の停まる駅なのに、駅には私たち以外に人の気配なし。
かろうじてホームにもう一人乗客があっただけで、なんと静かな駅なんだろう。

こうして、今回も無事に登山を終えることができました。
めぐちゃんは、恒例の東京駅でグランスタでお買い物。
私は朝にダッシュで来た東京駅を今、ゆっくりとライトアップを見ながら岐路についています。

次回は久しぶりにロングなコース、空木岳の予定です!

(記事担当:西田)

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