前回はお父さんの甲斐性なし! 何でうちはアパート暮らしなの・・・と思ったがためにあれよあれよというまに一家心中する悲劇マンガを紹介しましたが、それよりももっと些細な発端で生まれる悲劇をご紹介します。
タイトルは「だれも許してくれない」。どうとでも取れるけれど、いったん不幸だと分かったらなんとでも味付けできる抽象的な不幸タイトルですね。どんな物語にでも流用可能なタイトルです。作者は「あしたはいつくるの」同様に木内千鶴子。
夜のネオン調な背景にセーラー服、今だったら真先に出会い系とか神待ち娘とかネカフェ住まいなんて言葉がポワーンと浮かぶような表紙ですが、悩みはなんとも牧歌的でした。色エンピツの本数で悩んだりするんです。
主人公美奈子は新しいママ母が、自分の血を分けた妹よりも自分を冷遇しているような気がして不満。妹には服を新調してやってるのに、あたしには色エンピツすら買ってくれず「短くなったならキャップを付けて使いなさい」とケチケチ。ありましたねえ、鉛筆キャップ。
継母じゃダメだとばかり父親に「ね!おねがい!色エンピツ買って!? 6色のでいいの」・・・と甘えてもダメ。6色!赤、青、黄色、緑、あと2色何!? 紫やピンク、グレーは間違いなく入ってない。あまりに些細なおねだりすぎて泣けてきます。
継母は美奈子が素直でしつけがちゃんとしている・・・と周囲の人には自分の娘のように自慢。それがクラスメートの耳に入り「おまえんちのかあちゃん自慢ばっかだな」とディスられ美奈子はブルーに。
そこに友達がクラスのみんなに「ほら36色よ!ドイツ製なんだから」と自慢タラタラ。うらやましがる美奈子。体育の時間に忘れ物をとりに行ったところ、床に色エンピツが落ちていた・・・欲しくてたまらなくなって、あとで返すもん!といいつつ、何故か鞄にしまいこむ。アッ不幸の匂いが・・・。
案の定、友達は「一本ナイ!」と騒ぎ、案の定先生は「もちもの検査するわよ」といい、案の定見つかってしまう。クラスメイトは「おどろいたわねえ ホントニ」「まさか美奈子さんがドロボウするとは」とザワめく。怖いこのカット! 何で目のあたりウルトラセブンみたいになってるの!? 「ホントニ」というカタカナセンスも病的で怖い!
ちなみに雁須磨子先生は「本当に」という単語をマンガで出すときには「本とに」と表現してきますが、今必要なのは全カナで「ホントニ」と言い切る表現かもしれません。
その場から走って逃げさり家に帰るも、しつけにうるさいママ母が許すわけない、叱られるだろな・・・と思ったら案の定激怒りで泣き出す母親&父親。私が悪いんだ! 色エンピツが我慢できなかった私が悪いんだ!と責めさいなむ美奈子。今ごろクラスのみんなが私のことをウワサさしているんだ・・・白い目が睨んでる・・・とあっという間に被害妄想に陥った美奈子が選んだ道は・・・。
エッ!?こういう時って最後に救われて本人反省するのが常じゃないの!?ホントニ死んじゃったの!? 死なせるの!? 容赦ねえなー・・とビックリ。昔の少女マンガはスパルタンですね。残された両親、自慢した級友、強く叱りすぎた先生やはやしたてた級友達はみんなで俺らちょっとやりすぎたかも・・・って反省するも、まさか色エンピツ一本で首つるとは思ってないだろし。
たった色エンピツ一本のために美奈子は死んだ・・・けれど美奈子自身の苦しみはこれで終わっただろうか もしかしたら自殺したために永久にこの苦しみから逃れられなくて あの世とやらでなげきかなしみつづけているのではないだろうか
エンピツ一本で永久に苦しむ・・・罪にさいなまれすぎだよ美奈子! まるで救いのない最後のコマ。色鉛筆一本って80円くらいでしょうかね。80円で首吊り、って気にやむにも程があるというもの。前回の「あしたはいつくるの」と「だれもゆるしてくれない」を読むと、それぞれドロボウはよくない、って言うよりもむしろ「ワガママ全否定」「欲望と嫉妬全否定」くらいの厳しさです。人には欲望とか過ちがあるよね、ってのがもう無視無視。道徳の教科書よりも厳しいし救い無いよ。
今回は70年代の別冊マーガレットからこの話四段ですが、やっぱりこの時代の少女マンガはホントニ読ませます。そりゃ内容や表現でいったら40年前だから今のにかなうわけ無いけど、自分が生きてる時代や未来、世界観に対する否定が全然ないがゆえの強さってのが垣間見えるんです。悲劇は悲劇でもそれは時代や世代が背負わされた暗さから生まれてない、っていうか。70年代は暗いっていわれてるけど今にくらべりゃみな元気だったんですね。今の少女マンガや作中人物には00年以降に対する肯定や時代を担ってる観はないもんなあ。悲劇もだいたい、その世代が背負わされた暗い世相や未来の無さから生み出された悲劇が元になってるし。そりゃケータイ小説で不幸が羅列されても人事のようにしか感じなくなっちゃうというもの。
この年代の少女誌は何かと衝撃受ける作品が多いのでこれからもよい作品が見つかったら紹介していきますね。
タイトルは「だれも許してくれない」。どうとでも取れるけれど、いったん不幸だと分かったらなんとでも味付けできる抽象的な不幸タイトルですね。どんな物語にでも流用可能なタイトルです。作者は「あしたはいつくるの」同様に木内千鶴子。
夜のネオン調な背景にセーラー服、今だったら真先に出会い系とか神待ち娘とかネカフェ住まいなんて言葉がポワーンと浮かぶような表紙ですが、悩みはなんとも牧歌的でした。色エンピツの本数で悩んだりするんです。
主人公美奈子は新しいママ母が、自分の血を分けた妹よりも自分を冷遇しているような気がして不満。妹には服を新調してやってるのに、あたしには色エンピツすら買ってくれず「短くなったならキャップを付けて使いなさい」とケチケチ。ありましたねえ、鉛筆キャップ。
継母じゃダメだとばかり父親に「ね!おねがい!色エンピツ買って!? 6色のでいいの」・・・と甘えてもダメ。6色!赤、青、黄色、緑、あと2色何!? 紫やピンク、グレーは間違いなく入ってない。あまりに些細なおねだりすぎて泣けてきます。
継母は美奈子が素直でしつけがちゃんとしている・・・と周囲の人には自分の娘のように自慢。それがクラスメートの耳に入り「おまえんちのかあちゃん自慢ばっかだな」とディスられ美奈子はブルーに。
そこに友達がクラスのみんなに「ほら36色よ!ドイツ製なんだから」と自慢タラタラ。うらやましがる美奈子。体育の時間に忘れ物をとりに行ったところ、床に色エンピツが落ちていた・・・欲しくてたまらなくなって、あとで返すもん!といいつつ、何故か鞄にしまいこむ。アッ不幸の匂いが・・・。
案の定、友達は「一本ナイ!」と騒ぎ、案の定先生は「もちもの検査するわよ」といい、案の定見つかってしまう。クラスメイトは「おどろいたわねえ ホントニ」「まさか美奈子さんがドロボウするとは」とザワめく。怖いこのカット! 何で目のあたりウルトラセブンみたいになってるの!? 「ホントニ」というカタカナセンスも病的で怖い!
ちなみに雁須磨子先生は「本当に」という単語をマンガで出すときには「本とに」と表現してきますが、今必要なのは全カナで「ホントニ」と言い切る表現かもしれません。
その場から走って逃げさり家に帰るも、しつけにうるさいママ母が許すわけない、叱られるだろな・・・と思ったら案の定激怒りで泣き出す母親&父親。私が悪いんだ! 色エンピツが我慢できなかった私が悪いんだ!と責めさいなむ美奈子。今ごろクラスのみんなが私のことをウワサさしているんだ・・・白い目が睨んでる・・・とあっという間に被害妄想に陥った美奈子が選んだ道は・・・。
エッ!?こういう時って最後に救われて本人反省するのが常じゃないの!?ホントニ死んじゃったの!? 死なせるの!? 容赦ねえなー・・とビックリ。昔の少女マンガはスパルタンですね。残された両親、自慢した級友、強く叱りすぎた先生やはやしたてた級友達はみんなで俺らちょっとやりすぎたかも・・・って反省するも、まさか色エンピツ一本で首つるとは思ってないだろし。
たった色エンピツ一本のために美奈子は死んだ・・・けれど美奈子自身の苦しみはこれで終わっただろうか もしかしたら自殺したために永久にこの苦しみから逃れられなくて あの世とやらでなげきかなしみつづけているのではないだろうか
エンピツ一本で永久に苦しむ・・・罪にさいなまれすぎだよ美奈子! まるで救いのない最後のコマ。色鉛筆一本って80円くらいでしょうかね。80円で首吊り、って気にやむにも程があるというもの。前回の「あしたはいつくるの」と「だれもゆるしてくれない」を読むと、それぞれドロボウはよくない、って言うよりもむしろ「ワガママ全否定」「欲望と嫉妬全否定」くらいの厳しさです。人には欲望とか過ちがあるよね、ってのがもう無視無視。道徳の教科書よりも厳しいし救い無いよ。
今回は70年代の別冊マーガレットからこの話四段ですが、やっぱりこの時代の少女マンガはホントニ読ませます。そりゃ内容や表現でいったら40年前だから今のにかなうわけ無いけど、自分が生きてる時代や未来、世界観に対する否定が全然ないがゆえの強さってのが垣間見えるんです。悲劇は悲劇でもそれは時代や世代が背負わされた暗さから生まれてない、っていうか。70年代は暗いっていわれてるけど今にくらべりゃみな元気だったんですね。今の少女マンガや作中人物には00年以降に対する肯定や時代を担ってる観はないもんなあ。悲劇もだいたい、その世代が背負わされた暗い世相や未来の無さから生み出された悲劇が元になってるし。そりゃケータイ小説で不幸が羅列されても人事のようにしか感じなくなっちゃうというもの。
この年代の少女誌は何かと衝撃受ける作品が多いのでこれからもよい作品が見つかったら紹介していきますね。
中野店 岩井