バカにされたわたくしの故郷、新潟 / 新潟の雪はどっちにせよギトギト / 二郎食って涙する人々が250万人も。それも日本海側に

今日の大阪は雨降ってて寒いです。あっという間に冬になりそうですね。冬といえば雪。雪といえば新潟です。

僕は新潟県出身ですが、年々降雪量は少なくなってきています。それでも5センチ降雪しただけでツルツル滑って転んで7時のNHKのニュースでさらされるような都民の方とは異なり、タイヤで雪が踏み固められツルツルになった路面でも自転車に乗れる程度には雪慣れしてて、こういうスキルは中々衰えんものだなあと感じたりもします。

さて12月新刊予定表見ていたら「ばりごく麺」が4巻で<完>マークが。いつのまにか連載終了してたんだ、けっこう売れてると思ってたのにな・・・と思いつつ3巻読んでいたら、あまりにバカバカしくてキャッキャいいたくなる描写が登場しました。

「ばりごく麺」はあの能條純一の新作はなんとラーメンマンガ!ということで話題になりましたが、設定はいつもの能条パターン。
能条パターンというと物凄い大雑把にいうと、一人の天才・・・努力系の秀才じゃなくて発想が豊かで感覚が鋭敏なという意味で・・・がその天性を発揮するのを、言葉使いが丁寧なメガネの凡人が「・・・すごいです!」などとレポートする・・・というパターンです。題材がバイオリンだったり外科手術だったり将棋だったりはては超能力だったりしても、天才のレポートであるという点ではかわりがありません。これは傑作「哭きの竜」「翔丸」から確立したスタイルでしょうか。人のいいメガネ男は「月下の棋士」以降からの慣例です。

ほかにも

「ライバルが能面系の秀才もしくは貴公子」
「好きになった女は病気で死ぬ」
「ライバルとまでは行かなくても、主人公に心酔した2番手以降の好敵手はよく死ぬ」
「で死ぬときは血を吐くことが多い」
「主人公は三白眼で黒目が平坦、人付き合いがヘタで、しかも意味不明なところで義理堅い(雨の日に傘をささずに待つのを好む)」
「登場人物にスキンヘッドが多い」
「日本を牛耳る権力者がいて、だいたいそいつは胡坐になって女にフェラさせてる(擬音は「あふっ」)」

などが特徴として挙げられます。
なんだかんだいってやっぱり僕も好きなんです、能条純一先生。翔丸と哭きの竜は2年に一回くらい読み返してますね。

でその「ばりごく麺」は当然ラーメンの天才の話。伝説の中華料理人がラーメンでも・・・という話ですが、いつものように無表情鉄面皮のライバルも出てこんし、病弱な悲劇のヒロインも出てこず、かといってメガネ君の修行・成長ストーリーでもなく。驚愕のテボ湯きり技で度肝を抜かれたものの、正直展開はやりづらそうだなあと感じます。能条先生と題材があんまりしっくりこないというか。
さて今3巻では舞台である来来軒のバイトの子が故郷の新潟に帰るかも・・・じゃあ最後に新潟にちなんだラーメンで思い出を作ってやっか・・・と主人公麺太とメガネ君朗馬がラーメンを作りあう・・・というストーリー。

一応補足ですが、新潟県は縦にダダっ広いので地方独自のラーメンが乱立してて「新潟ラーメン」と一言で括れるものはありません。新潟市内は薄味のしょうゆラーメン、巻は一部で濃厚赤ミソラーメン(丼が茶色いすり鉢系)、中越(燕・三条)は太麺背油ギトギト、長岡は生姜+大量のチャーシュー・・・と地方によって様々ですが、市内以外は一部の人気店のスタイル(こまどり・福来亭・青島食堂)が周囲に広がっていったケースで、既にその地ではあたりまえのようにそういったラーメンが食べられてた・・・というものでもないし、たとえば喜多方ラーメンとか博多ラーメンのような外見的な知名度もないので、知らない人が一目見て「ああこれが新潟ラーメンね」とビジュアル一発で表現できるような外観を持ってないのです。

じゃあどうやって新潟を感じさせるラーメンをつくるのか? と思いつつも読んでいくと、まずメガネ君が作ったのはこんなの。

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粉チーズが雪! ああまた表層的な新潟のイメージで来ちゃった、雪ねえ・・・それはいいけど粉チーズ!? これ正直言うと「なんか白っぽいもの振りかけてえな」っていう前提ありきのラーメンですよね。あといくらバイトの子がパスタ、それも粉チーズいっぱいのクリームパスタが好きだから、っていっても、じゃあ何も無理くりラーメンにしなくてもいいんですよ。パスタ作ればいいのに。だってメンマに粉チーズ。しょうゆで煮込んだチャーシューに粉チーズ。合うわけないじゃないですか! 

で、ラーメンに雪みたく白いのかけるんだったら、もっとラーメンに合うやつあるじゃない・・・というとこうなる。

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なんか次郎みたいなブタ+もやし+キャベツ山脈なラーメン出てきたなーとボンヤリとおもってるとやっぱり平ザルが出てくるわけですよ。

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あいつのラーメンが粉雪なら、おれのはどか雪だ!とばかりに背脂です。まあね、やっぱりね。雪に見立てられそうな白いラーメン食材っていったら背脂しかないですもんな。粉チーズ思いつく方がレアケースです。むしろ粉チーズ使う段階で「気ィ使って何気に先輩立ててんだな、メガネ君」とバイトの子が感づくと思うな。

麺太は新潟の重いどか雪をみるたびに、来来軒ですごした日々、俺の作ったラーメンを思い出せ・・・というが、背脂ギトギトニンニクマシマシ、平ザルの目から背脂がニュッチャニュッチャと振り下ろされる駄イメージが、能条先生の達筆にかかるとこんなきれいなシーンになるんだから不思議です! 

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これラーメンに背脂ジャッジャってふりかけるシーンですよ!?丼のフチには白い飛沫がビッシリ、口の周りはニッチャリ、テーブルふきんは脂でネトネト・・・そんな背脂がこのイメージ!綺麗事すぎます! 
しかし背脂ラーメン食べたら新潟を思い出せ、ではなくて、新潟で雪が降ったら背脂ラーメンを思い出せ、だったりするのもふつうは逆じゃないでしょうか。ああ雪だ、雪が降ってきた・・・そういえば次郎のラーメン喰いてえな・・・ということです。これは叙情のカケラもない初雪の印象ですね。その雪のきれいではかない印象も粉チーズor背脂。どっちにせよコテコテギトギトですね。
上中下越の県民250万人は2月ともなるとどこでも雪で苦しめられますが、この雪も背脂なんだなとおもえばノドが鳴るというものです、都下のラーメン次郎でラーメン見た瞬間にジンワリと涙ぐむ男性がいたら、それこそ新潟県民です・・・ってんなわけあるか! 新潟県民だって「おたくの雪、背脂みたいですね」っていわれたら表面上はニコニコしてても根に持ちますよ!

しかしですね、新潟・燕には背脂系の発祥ともいわれる福来亭系のラーメンがあり、不覚にもこの背脂シーン見てノドを鳴らしてしまう人間も一部いる(僕含む)ということも残念ながらまた事実なのです! 

さて今回のタイトルは県人の忸怩たる思いを代弁したらこんなになってしまいました。県民のみなさん是非「ばりごく」3巻読んでください!

中野店 岩井

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