「YとKには眠る事があったのだろうか それでもYは何度も夢にうなされた Yの夢は同じものだった それを何度も見た
その一つは男たちが手を後ろで縛られて首を吊られてる風景だった もう一つは」
という不思議なお話から始まるのは伊藤重夫さんの「ワルキューレ1」という青春漫画です。
青春漫画、と聞くとどんなストーリーを想像しますか?
一心不乱に打ち込む運動部、悪ふざけが過ぎる日常、淡い恋、ケンカする街の不良たち
。
…とまあ色々ありますが、今回紹介する青春漫画は上記のような派手さを持たず、
しかし独特の切ない余韻によって、読み手に異質の読後感を与えます。
物語は先述の序章の後、フツウの高校生男子・南を主人公に据えて幕を開けます。
6人しかいない野球部の主将である南の、マネージャー(兼恋人)や部員たちとふざけ合う日常。
部の存続問題よりも恋人との関係が気になる…それはそれで純粋無邪気、
自分と周囲が盛り上がる・楽しむことを核とする南のコミカルな毎日が描かれます。
しかしそれは突如現れたミステリアスな少年・山岡慎によって軌道を変更。
成り行きで南家に居候することになる慎。
居候のお礼に夕食を作ってあげる慎。
居候しながら南の彼女に「技巧派やな」と感心する慎。そして、
「どうしたんや」と無垢な表情で尋ねる南、と、無表情の横顔。つらい…
伊藤重夫作品の特徴と言える「不器用さ」「喪失感」「不明確さ」によって構成された青春。
少年と少女の表情、その理由、説明の少ない物語はしかし、想像の余地を与えることによって読み手が登場人物に感情を移入しやすくなり、一際深い切なさが胸を貫きます。
「知りたいけれど知る術もなく最後まで答えがハッキリとしない気持ちの悪さ」が絶妙な具合で封じ込められた青春漫画はやけにリアル。
伊藤重夫「ワルキューレ1」は現在単行本未収録、載っているのは北冬書房の「夜行13号」。
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(中野/せき口)
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