素晴らしい本が入ってきました。「うばすてやま」です。
先月中野店に入荷し、その時に読ませてもらって衝撃を受け、久しぶりに読んでるうちにワクワクしてきました。
あれです。変な本に当たったとき独特の高揚感です。おいちょっと待てよ!と心の中で声がしつつページをめくる感じ。「何だか分からないけれどとりあえず大変なことになっているのは間違いないな」という確信。それがグランドカオスにも入ってきたんです。
モーターとバッテリーをつないで、電源をONにいれる。確かにモーターはブルンブルン周ってるんだけど、モーターの軸とギアが噛んでないから、ただ軸だけが物凄い勢いで回ってる状態。せっかくの力がどこにも反映していない。でも労力も電力も同じように消費してる。たとえていうならプロペラのない扇風機。「強」ボタンを押そうが風は一切流れてこない・・・でも物凄い勢いでモーターは回転してるんですが。モーターの中に行き場のないパワーがあふれてるんだけど、肝心の力の行き先が全然ないというか。この本の作者、池川伸治、および、彼が主催していた太陽プロは、僕にはそんな印象です。
貸本マンガというどっちかというと中流以下の読者層を相手に、しかも少女向けホラーマンガというジャンルでありながら、教条的な内容だったり道徳的だったり世の中を正そうという主張がビンビンで、女子供をヒエーと怖がらせればいいんジャンというスレッカラシで割り切った作風が横行してた生活苦貸本少女ホラー作家の中ではありえない社会派ぶりで異彩を放ってました。
でも社会派なら社会派で、70年代劇画のように青年の心を打ちオルグされたりすることもあったかというとそんなことはなく、白土三平でマルキシズムを学んだ学生はいても「若い頃はさ、池川伸治で資本主義の限界を学んだよ」などと述懐する団塊の世代にはあったことがありません。先ほどもいったように女子供をヒエーと叫ばせるのが目的の少女ホラーが主戦場なんだから、やっぱりちょっと違うんでしょうね。
ただ池川伸治は当時かなりの売れっ子で人気作家。基本書下ろしで、今みたいに編集と話の方向性についてお互い意見を言い合って・・・なんて事が無かった世界ですから、池川先生の書きたい内容がそのまま本にできたわけです。ゆえに妙ちきりんでとんでもない作品が大量に生まれています。
さて、それでは「うばすてやま」を今回から何回かにわたって紹介していきましょう。
ジャケット。
「現代にもうばすて山はある !! 」。
もう何マンガの表紙なんだか分かりませんね。ジャンルでいうと「少女スリラー」を自称していますが、ジジババ4人が栄養悪そうな顔してそいで目が皆赤くて、口半開き。
一人のジイさんにいたっては顔ミドリ色だよ。古くなった10円玉みたいな色してますね。で真ん中に「現代にもうばすて山はある !! 」、で大きく下に赤文字で「うばすてやま」。口頭で説明すると前衛的な舞踏かなんかのポスターかと思われかねませんが、池川先生にかかればこのスカスカさ。どう考えても貸本なのにコレを借りよう、と言う気が起こらないんです。それを押し通せるだけ池川先生が当時人気作家だったんだなあとは感じますが。
そして少女スリラーらしくないスタート。社会はキレイばかりじゃないよ、底辺だってあるんだよ・・・と言うところでカエルを食べるヘビ。こういうときは見栄えのいいものだって醜いとこあるんだぜという画像にすべきなんだから、嫌われモノのヘビを出したって意味ないのでは。ペルシャネコが狂ったみたいに交尾してるとか、アイドルが鼻から粉すってるとか、そういう絵のほうがいいようにも思うのですが池川先生は知ったこっちゃないよとばかりにすすめます。
じょじょに大きくなったあばら屋。その中には・・・
ハイ、主人公であるジジババ4人です! 夢も希望もないコマですね。内職、寝たきり、気難しそうなジジイ・・・この4人がどんなことになるのか? 続きは次回です!
先月中野店に入荷し、その時に読ませてもらって衝撃を受け、久しぶりに読んでるうちにワクワクしてきました。
あれです。変な本に当たったとき独特の高揚感です。おいちょっと待てよ!と心の中で声がしつつページをめくる感じ。「何だか分からないけれどとりあえず大変なことになっているのは間違いないな」という確信。それがグランドカオスにも入ってきたんです。
モーターとバッテリーをつないで、電源をONにいれる。確かにモーターはブルンブルン周ってるんだけど、モーターの軸とギアが噛んでないから、ただ軸だけが物凄い勢いで回ってる状態。せっかくの力がどこにも反映していない。でも労力も電力も同じように消費してる。たとえていうならプロペラのない扇風機。「強」ボタンを押そうが風は一切流れてこない・・・でも物凄い勢いでモーターは回転してるんですが。モーターの中に行き場のないパワーがあふれてるんだけど、肝心の力の行き先が全然ないというか。この本の作者、池川伸治、および、彼が主催していた太陽プロは、僕にはそんな印象です。
貸本マンガというどっちかというと中流以下の読者層を相手に、しかも少女向けホラーマンガというジャンルでありながら、教条的な内容だったり道徳的だったり世の中を正そうという主張がビンビンで、女子供をヒエーと怖がらせればいいんジャンというスレッカラシで割り切った作風が横行してた生活苦貸本少女ホラー作家の中ではありえない社会派ぶりで異彩を放ってました。
でも社会派なら社会派で、70年代劇画のように青年の心を打ちオルグされたりすることもあったかというとそんなことはなく、白土三平でマルキシズムを学んだ学生はいても「若い頃はさ、池川伸治で資本主義の限界を学んだよ」などと述懐する団塊の世代にはあったことがありません。先ほどもいったように女子供をヒエーと叫ばせるのが目的の少女ホラーが主戦場なんだから、やっぱりちょっと違うんでしょうね。
ただ池川伸治は当時かなりの売れっ子で人気作家。基本書下ろしで、今みたいに編集と話の方向性についてお互い意見を言い合って・・・なんて事が無かった世界ですから、池川先生の書きたい内容がそのまま本にできたわけです。ゆえに妙ちきりんでとんでもない作品が大量に生まれています。
さて、それでは「うばすてやま」を今回から何回かにわたって紹介していきましょう。

ジャケット。
「現代にもうばすて山はある !! 」。
もう何マンガの表紙なんだか分かりませんね。ジャンルでいうと「少女スリラー」を自称していますが、ジジババ4人が栄養悪そうな顔してそいで目が皆赤くて、口半開き。
一人のジイさんにいたっては顔ミドリ色だよ。古くなった10円玉みたいな色してますね。で真ん中に「現代にもうばすて山はある !! 」、で大きく下に赤文字で「うばすてやま」。口頭で説明すると前衛的な舞踏かなんかのポスターかと思われかねませんが、池川先生にかかればこのスカスカさ。どう考えても貸本なのにコレを借りよう、と言う気が起こらないんです。それを押し通せるだけ池川先生が当時人気作家だったんだなあとは感じますが。


そして少女スリラーらしくないスタート。社会はキレイばかりじゃないよ、底辺だってあるんだよ・・・と言うところでカエルを食べるヘビ。こういうときは見栄えのいいものだって醜いとこあるんだぜという画像にすべきなんだから、嫌われモノのヘビを出したって意味ないのでは。ペルシャネコが狂ったみたいに交尾してるとか、アイドルが鼻から粉すってるとか、そういう絵のほうがいいようにも思うのですが池川先生は知ったこっちゃないよとばかりにすすめます。
じょじょに大きくなったあばら屋。その中には・・・

ハイ、主人公であるジジババ4人です! 夢も希望もないコマですね。内職、寝たきり、気難しそうなジジイ・・・この4人がどんなことになるのか? 続きは次回です!
中野店 岩井