さて、うばすてやまの2回目です。
現代にもうばすて山はある!と社会を告発するかのような、しかしどう考えても貸本としてはビジュアルがショボショボなジャケットで攻めてきた池川伸治。主人公のジジババたちはいったいどんな境遇に置かれるのか?

ジジババたちは世間には春が来たというのに我々にはあたたかい生活は無縁、とグチ利はじめる。足を痛めたゴンじい、寝たきりのじいさん、そしてヨボヨボのバアさんの4人は、窓ガラスも割れ雨漏りがし、すきま風吹きすさぶあばら家に4人で暮らしてるのです。いずれも子供達に厄介視されたりでこの吹き溜まりのような空家にしか居場所がない4人。政治が悪い社会が悪いんだ!と叫んでも現実は変わらない・・・うんざりな出だしですね。
しかし彼らにも楽しみがあるんです。午後4時になると、少女がひとり慰問にくるんです。
わー4時だ!とばかりにババたちの表情も明るくなる。

4時に遊びに来る少女・美江子は、毎日何かしらのお土産やおやつを持ってくるんです。ババたちは慰問がうれしいんじゃなくて、このお土産が目当てなんですな。
まあちょっと聞いたところによると老人ホームに学校の吹奏楽部が慰問にきたりしても、うるさいばかりで当の老人は全然うれしくなくてハタ迷惑とすら思ってて、最も喜ばれるのは食べもんの差し入れだったりするらしいそうですから、リアルってこんなもんですね。
でも毎日ここに来るたびにお土産やおやつをもってきたらお小遣いが大変じゃないかい? とババが気を使うも
わたし月に2万もらってるから大丈夫ヨ、とニコニコしてこたえません。高校生の小遣いが月2万は、平成のこの世でも多いくらいですから、この本が発行された今から40年前1968年の物価に相当すると、大卒初任給やなんやかやで換算するとざっと今の3倍から4倍ですから、この子は月10万の小遣いもらう超ハイソというわけです。甘やかしすぎですな。
まあそれくらいのハイソでもないと自分の小遣いでおばあさんにおやつを毎日買っていこうなんて到底思わないんでしょうが・・・。2万の小遣いときいて「毎日しょうちゅうが飲める!」とノドを鳴らすジイさん。
しかしそんな美江子にも悩みが。年頃らしく恋の悩みですが、

友人はその男、安信のことを「陰気野郎」「大きらいよ!」とバッサリ。

どんな男かというと、ロクに学校にも行かず家に閉じこもっており、劣等感の塊で自虐的。陰気で暗いので誰からも疎まれてる、という安信。元気出して学校に行きましょうよ!と美江子に声をかけられるも「ほっといてくれ!」「僕は駄目な男なんだ!」と額にタテ線いれて答えるのみ。まあ今で言うところの引きこもりの人ですね。

陰気な顔で陰気な動作で、群れからポツンとはなれてる安信を見て、なぜか構いたくなってきた美江子。母性本能なのか恋心なのか、このダメ男を守ってあげたい。陰気な性格を明るく変えて快活になってもらいたい。そうすればあたしとも上手くいくのに・・・と夢想する。

屈託ナイ美江子はあばら家のババに相談。するとババ二人は耳打ちをしてコソコソと相談するではないか。

彼の性格を変えるにはこの方法しかないですよ、とその手段を美江子に話す。あまりにあんまりなその方法に、エッとおどろく美江子・・・ババたちの考えた「安信の陰気を吹き飛ばして、引きこもり脱却!社会復帰だよ大作戦」はどのようなものなのか?

それにはまず安信に、今の性格を直したい!と本気で考えてもらわなきゃ、と説得に向かう美江子。それでもウジウジとヤダヤダいってる安信、ホントムカつきますね。今だったらともかく高度成長期でみんなアゲアゲになってるこの時代にこんな腐れっぷりでは、アメリカだったら「ベトナムに行け!」の7文字で終わりになると思います。
やっとのことで「この性格が直るんならなんでもする!」「君の言うとおりにするよ」「つれてってくれ!」と美江子の誘いにのる安信。
そして休日、ババたちの家に行くことに・・・この時点では、まだ自分がなにをするのかが安信、わかってません。
「おばあちゃんきているとおもうわ」。って、おばあちゃんに何かするのでしょうか。陰気な青年のこころを回復させるのになぜバアさんが必要?
さあとあばら家に入ってみると、そこには両手を縛られたバアさんが・・・「棒をとりなさい」? 何が起ころうとしてるのか? 棒? 両手縛られ? で、棒 !? ・・・不穏さがジワジワと増してきましたね!

「さあそれで私をはたくのです」
「エッ」
「あなたのためなのよ! いわれたとおりにやって!」
「あなたの性格が直るのよ! さあ早く!」
唐突のことに悩む安信。殴るの、棒で!?
しかしババは
「なにをしてるんだね」「わたしは叩かれるとつかれがとれるんだよ」「さあはやくやっておくれ!」と挑発。
殴るのか安信、殴ったらダメだぞ、ここは儒教の国だぞ、年長者殴るのはフツーに考えてダメだろ、お前・・・

あーあ。やっちゃった・・・。
さんざ殴ったあげく、ババを残して去り行く安信と美江子。ババの傍らには金の入った封筒が・・・。

そう、次の冬までにこのあばら家を改築しないととても次の冬は越せそうにない。ババたちは殴らせるかわりにカネを美江子にそれとなく要求してたのです。カレシの性格変えるためには、私達を殴らせればいいんだよ、そうすれば性格が変わるから・・・と吹き込んだんですね。なんだその理屈! きいたことないよ!
でも平成に生きる僕らが聞いたことがないだけで、実際安信がどうなったかというと・・・


アレ? 明るくなっとる! 明るくなっとるよ!
ババ殴ってスッキリした安信はさっきまでの陰気な表情はどこへやら、一転、ほほを染めて美江子と公園を走る快活な少年になったのでした・・・。なんだろうこの腑に落ちないモヤモヤしたものは? 内にこもってたものを外に吐き出せばいいんだ的理屈? あれ、イライラしたときや失恋したときに、漫画的文法でバッティングセンターに行くのとおんなじ理屈? でそれがババに置き換えられただけじゃないって? そんな置き換えあるか! そして何が怖いかって、ババたちのほうからこの話を持ちかけてるあたりです! カネを得るならと割り切って殴らせる・・・わかりません!
さて、では「なぜババを殴ると陰気な性格が快活に?」の謎は次回に残しておきましょう! 本を傷められないため読みにくい写植が多くてゴメンなさい!
現代にもうばすて山はある!と社会を告発するかのような、しかしどう考えても貸本としてはビジュアルがショボショボなジャケットで攻めてきた池川伸治。主人公のジジババたちはいったいどんな境遇に置かれるのか?


ジジババたちは世間には春が来たというのに我々にはあたたかい生活は無縁、とグチ利はじめる。足を痛めたゴンじい、寝たきりのじいさん、そしてヨボヨボのバアさんの4人は、窓ガラスも割れ雨漏りがし、すきま風吹きすさぶあばら家に4人で暮らしてるのです。いずれも子供達に厄介視されたりでこの吹き溜まりのような空家にしか居場所がない4人。政治が悪い社会が悪いんだ!と叫んでも現実は変わらない・・・うんざりな出だしですね。
しかし彼らにも楽しみがあるんです。午後4時になると、少女がひとり慰問にくるんです。

わー4時だ!とばかりにババたちの表情も明るくなる。

4時に遊びに来る少女・美江子は、毎日何かしらのお土産やおやつを持ってくるんです。ババたちは慰問がうれしいんじゃなくて、このお土産が目当てなんですな。
まあちょっと聞いたところによると老人ホームに学校の吹奏楽部が慰問にきたりしても、うるさいばかりで当の老人は全然うれしくなくてハタ迷惑とすら思ってて、最も喜ばれるのは食べもんの差し入れだったりするらしいそうですから、リアルってこんなもんですね。
でも毎日ここに来るたびにお土産やおやつをもってきたらお小遣いが大変じゃないかい? とババが気を使うも

わたし月に2万もらってるから大丈夫ヨ、とニコニコしてこたえません。高校生の小遣いが月2万は、平成のこの世でも多いくらいですから、この本が発行された今から40年前1968年の物価に相当すると、大卒初任給やなんやかやで換算するとざっと今の3倍から4倍ですから、この子は月10万の小遣いもらう超ハイソというわけです。甘やかしすぎですな。
まあそれくらいのハイソでもないと自分の小遣いでおばあさんにおやつを毎日買っていこうなんて到底思わないんでしょうが・・・。2万の小遣いときいて「毎日しょうちゅうが飲める!」とノドを鳴らすジイさん。
しかしそんな美江子にも悩みが。年頃らしく恋の悩みですが、

友人はその男、安信のことを「陰気野郎」「大きらいよ!」とバッサリ。

どんな男かというと、ロクに学校にも行かず家に閉じこもっており、劣等感の塊で自虐的。陰気で暗いので誰からも疎まれてる、という安信。元気出して学校に行きましょうよ!と美江子に声をかけられるも「ほっといてくれ!」「僕は駄目な男なんだ!」と額にタテ線いれて答えるのみ。まあ今で言うところの引きこもりの人ですね。


陰気な顔で陰気な動作で、群れからポツンとはなれてる安信を見て、なぜか構いたくなってきた美江子。母性本能なのか恋心なのか、このダメ男を守ってあげたい。陰気な性格を明るく変えて快活になってもらいたい。そうすればあたしとも上手くいくのに・・・と夢想する。

屈託ナイ美江子はあばら家のババに相談。するとババ二人は耳打ちをしてコソコソと相談するではないか。

彼の性格を変えるにはこの方法しかないですよ、とその手段を美江子に話す。あまりにあんまりなその方法に、エッとおどろく美江子・・・ババたちの考えた「安信の陰気を吹き飛ばして、引きこもり脱却!社会復帰だよ大作戦」はどのようなものなのか?

それにはまず安信に、今の性格を直したい!と本気で考えてもらわなきゃ、と説得に向かう美江子。それでもウジウジとヤダヤダいってる安信、ホントムカつきますね。今だったらともかく高度成長期でみんなアゲアゲになってるこの時代にこんな腐れっぷりでは、アメリカだったら「ベトナムに行け!」の7文字で終わりになると思います。
やっとのことで「この性格が直るんならなんでもする!」「君の言うとおりにするよ」「つれてってくれ!」と美江子の誘いにのる安信。
そして休日、ババたちの家に行くことに・・・この時点では、まだ自分がなにをするのかが安信、わかってません。

「おばあちゃんきているとおもうわ」。って、おばあちゃんに何かするのでしょうか。陰気な青年のこころを回復させるのになぜバアさんが必要?

さあとあばら家に入ってみると、そこには両手を縛られたバアさんが・・・「棒をとりなさい」? 何が起ころうとしてるのか? 棒? 両手縛られ? で、棒 !? ・・・不穏さがジワジワと増してきましたね!

「さあそれで私をはたくのです」
「エッ」
「あなたのためなのよ! いわれたとおりにやって!」
「あなたの性格が直るのよ! さあ早く!」
唐突のことに悩む安信。殴るの、棒で!?
しかしババは
「なにをしてるんだね」「わたしは叩かれるとつかれがとれるんだよ」「さあはやくやっておくれ!」と挑発。
殴るのか安信、殴ったらダメだぞ、ここは儒教の国だぞ、年長者殴るのはフツーに考えてダメだろ、お前・・・

あーあ。やっちゃった・・・。
さんざ殴ったあげく、ババを残して去り行く安信と美江子。ババの傍らには金の入った封筒が・・・。

そう、次の冬までにこのあばら家を改築しないととても次の冬は越せそうにない。ババたちは殴らせるかわりにカネを美江子にそれとなく要求してたのです。カレシの性格変えるためには、私達を殴らせればいいんだよ、そうすれば性格が変わるから・・・と吹き込んだんですね。なんだその理屈! きいたことないよ!
でも平成に生きる僕らが聞いたことがないだけで、実際安信がどうなったかというと・・・


アレ? 明るくなっとる! 明るくなっとるよ!
ババ殴ってスッキリした安信はさっきまでの陰気な表情はどこへやら、一転、ほほを染めて美江子と公園を走る快活な少年になったのでした・・・。なんだろうこの腑に落ちないモヤモヤしたものは? 内にこもってたものを外に吐き出せばいいんだ的理屈? あれ、イライラしたときや失恋したときに、漫画的文法でバッティングセンターに行くのとおんなじ理屈? でそれがババに置き換えられただけじゃないって? そんな置き換えあるか! そして何が怖いかって、ババたちのほうからこの話を持ちかけてるあたりです! カネを得るならと割り切って殴らせる・・・わかりません!
さて、では「なぜババを殴ると陰気な性格が快活に?」の謎は次回に残しておきましょう! 本を傷められないため読みにくい写植が多くてゴメンなさい!
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