孤独のグルメの作中でもっとも有名なシーンといえば、やっぱりアームロックでしょう。
井之頭五郎が洋食屋に行く。ギリギリランチのハンバーグ定食に間に合う。コワモテの主人は言葉もママならない中国人留学生と思しきアルバイトを客の前でなじる、叱る、文句を言いまくる・・・飯が不味くなる五郎。ついに我慢が出来なくなってアームロックで締め上げる・・・という話ですが(省略アリ)、メシの味云々じゃなく、メシを食うときには雰囲気も大事なんだ。特に自分みたいにひとりで飯を食う人間にとっては・・・と印象深い回です。
その後になってガンバレガンバレフトシ!の回ではジイサンに「あんたいい体してるね」といわれ、さらに入院したときには「家が古武道をやってまして」と五郎の体格のよさや育ちが明かされ、先日も見知らぬサラリーマンを投げ飛ばすとか、五郎無双が繰り広げてきたわけですが、テレビ版ではそんなことにもならずでちょっとだけ物足りなかったりして。
だってさぁ、シャイで目立たないけれど、若き女優と恋してたりと女性遍歴もそれなりに豪華、で個人事業主で人にぺこぺこしないで生きててそれなりカネがあり、それでいて人の気持ちも分かる男でしかも過去に武道やってて肉体的に強いって、そりゃ無双過ぎるよ。欠点ってほとんどないじゃん! それは男があこがれるわ。俺だってジローちゃんになりたいよ!
まあだからこそ、男の理想像みたいなものを突きつけられてんのにそりゃ長嶋一茂だよね!ってきたら、んなことあるか!って猛反発されるわ。だって一茂はダメなところ表に出すぎてるもん。一茂は男の理想にはなれません!今回テレビ版でゴローちゃんやってる人は事前情報でどこがダメかが分からなかったからスンナリいったんですね。
というわけでアームロックの回の話ですが、そんな店があるの?という謎に関しては、ネット上を見る限り、やっぱり過去にそういう店主がいたようではある(ただし現在では代替わりしていて、今の店主はそういった風評にちらっと被害を受けている・・という話もあります)。今回、原作者の久住さんがどういう体験をしたかの裏づけが取れました。
というわけでこの本ですが、久住さんと伊達めがねという人が組んだ、辞書形式の4コママンガ本。いってみれば大ヒットした「コージ苑」の二番煎じ企画の「イミデス」です!88年度版と89年度版があることを確認してますが、それ以降も出たのかは不明。
伊達めがねというヒトが、いろいろなマンガ家の絵を模写して4コマと時事問題を絡めてギャグニするのですが、本家コージ苑にくらべて著しくギャグがつまらない!たんなる模写作家で、ギャグにはクスリとも笑えないものが大半。画は似ていても、ギャグについては相当にセンスない方がやってるな、と感じます。で、その4コマについている小コラムを久住氏が書いているんですね。そんな中にこんな体験談が。
中国人留学生かどうかはわからないけれど、やはりこういった実体験が確かにあったわけです。このあとで久住氏がアームロックを決めていたら本当にいい話だったのになあと悔やみたくもなるのだけれど、それくらいしたっていいよ!と感じる横暴主人ですね。
店の名前ですか? 店がある地名と、豆腐、洋食、あたりで考えるとなんとなく・・・。
ただ、ですが、先ほども触れたように、既に代替わりしててその店主ではない方が店をやっていて、今は非常によい店といううわさも聞きます。豆腐を使ったカラシ焼きが絶妙とか。
あるファンが聖地巡礼とばかりに店にいったところ、手元にあった「孤独のグルメ」をチラとみた店主が「こういった情報に惑わされないで下さいね・・」とさびしげにいった、という話もネット上で読んだ記憶があります。
さてそれ系の話題がもうひとつ入ってて、
もうこっちは店がなくなってるから言ってもいいと思いますが、荻窪にあった丸福ですね。3人くらいおばさんがいて、背の低い店主がけっこうな緊張感を周囲に撒き散らしていた記憶があります。東海林さだおが書いてたけれど、品書きには「中華そば」って書いてあり、でもひとりくらい「ラーメン」って言う人がいてもおかしくないのに、全員が「中華そば」って注文するような感じ。本とラーメン道場みたいだった。
それでもあの名物店主が亡くなって、店が休業していたとき。店の前で張り紙を見て、ぼんやりと店の前に立つ男どもが散見してるのを見て、みなが怖いながらもけっこう慕ってたんだよな・・・と胸が熱くなったりもしましたよ。
この「イミデス」いろんな意味で駄本ですが、ここにしか書いてない情報もそれなりにあり、久住さんのファンには楽しめます。
さて、ずっと休んでた当ブログですが、またしばらくはちょびっとずつ更新していきます。末永くお付き合いお願いしますね。
中野店 岩井