はじめまして。中野店のマリナです。
1回目のブログなのにいきなりちょっとアンニュイな内容で気が引けなくはありませんが
今月31日で、「わたしの狼さん。」「dear」「妖狐×僕SS」など華奢なのに柔らかむっちり
というフェチ系おれたち大歓喜の作品を世に送り出してくださっていた
藤原ここあ先生の訃報からちょうど1年になります。
15歳のデビュー当時からファンだった自分が、その報せを聞いたのはまさに仕事中でしたが
あまりの衝撃に本を持つ手が震え目頭がカーッと熱くなったのを必死に堪えたこと
今でもしっかりと覚えています。
長らく親しんでいた漫画がある日突然潰えるということ。
その大きな喪失感を埋めるのは、存外とても大変なのだと実感しました。
あれから、1年。
もはやお蔵入りなのでは!と危ぶまれていた「かつて魔法少女と悪は敵対していた。」の3巻刊行(嬉しい!)と
ファンが渇望していた「藤原ここあ画集」の発売が決定し(凄く嬉しい!!)、
同じように先生の著書を読み返そうとしている方や
ここあ先生って昔どんなものを描いていたんだろう…と気になっている方がいるかと思われます。
そんな方々に自分からこちらの一編を薦めたいと思います。
「私は」
お嬢様と妖怪執事 藤原ここあ短編集 収録作品
まんだらけのHPを見に来て下さっているということは、
少なからず何か忘れられない大切なものや趣味があるのではないでしょうか?
もちろんそれを素直に表に出せる環境ではない人もいらっしゃるかと思います。
価値観の違いからしまっておかなければならない人や糾弾されてしまった過去をお持ちの人もいると思います。
そんな悔しい思いをしたとき、趣味を抱えたまま自分はひとりだと感じたときに
自分はいつもこのお話に目を通します。
主人公は卒業を間近に控えた一人の女子高生。
趣味は写真。幼少時のあるきっかけから写真撮影を続け、
高校在学中は写真部に所属していました。
真面目な性格でも決して不器用なタイプではなかったため、人並みに友達もたくさんできました。
しかし、写真のことを本音で語り合えるような友達はついに作ることはできませんでした。
卒業記念に写真展に出品しようという話にも友人はこの反応。
彼女はそんな日常に寂しい思いを抱きつつも当たり障りのない
学生生活を送っていました。
唯一、彼女が写真のことを話せたのは
行きつけの時代遅れなカメラ店を経営している寡黙な店主。
しかし、彼女はその店主にすら自分の写真を見せることを避けていました。
これもトラウマというのでしょうか
卒業式で何故だか泣けなかった経験、ありませんか?
写真には撮り手の内面が出てしまう。
好きなものを追い続けることで、孤独になっていった自分の空虚な気持ちが
自分の写真にはそのまま写っている。
彼女は店主にそれを見透かされてしまうのが怖かったのです。
しかし、店主はその言葉を受け彼女にこう伝えました。
誰かと分かち難いほど、好きなもの。
誰かと共有したいけれど、うまく言葉にできないほどの大切なもの。
上手にほかの人と、関われない。空を掴むような距離感。
寂しいはずのことが寂しく思えない空しさ。
それを抱えることの後ろめたさ。
そんなものがぐるぐると渦巻いていた彼女は、その言葉を受けて
写真を始めようと思った最初の出来事を思い出し、自分は空っぽなんかではなく
好きなもので満たされているのだと気づきました。
人それぞれ温度差はあります。好きなもの嫌いなものだって違います。
それでも伝えたいことはきっとどんな形でも吐き出した時点で誰かに伝わるもの。
言葉というツールだけではなく、彼女の場合は写真を通して受け取り
写真を通してまた誰かに伝えていくことができると気づいたことで、前に進むことができました。
ここあ先生の作品は初期の頃から往々にして日常系やほのぼのコメディが多く
強いメッセージ性や物語性というよりは平凡な日々の中にある小さな幸せに着目した作品が
多かったのですが、この一編と新装版が発売された「dear」の後半部分。
そしてメディアミックスされたことでここあ先生の名前が広く知れ渡ることとなった
「妖狐×僕SS」は強いメッセージ性のもと展開したシリアスな作風だったんじゃないかなと思います。
今日紹介した「私は」は、藤原ここあ先生の短編集「お嬢様と妖怪執事」の巻末に収録されています。
ほかにもイケメン座敷童と虚弱お嬢様が奮闘する表題作はもちろんのこと、初期の作品「ストレイドール」。
何もかもを超越したナルシスト山田が担任の一世一代の告白をサポート?するコメディ「山田」など
毛色の違う4編が収録されているので一冊で大変おなかいっぱいになれますよ。
(担当:マリナ)
レベル2000の優男魔王と、プリティだけどレベル1の貧乏勇者の
愛と絆の物語を読みたい方は…
→わたしの狼さん。(旧装丁)
ドジっ娘将軍とその部下2人が魔王様を追いかけて頑張る物語が読みたい方は…
→わたしの狼さん。THE OTHER SIDE OF LYCANTHROPE(旧装丁)
さらに上記2つを収録したハイブリッド! →わたしの狼さん。(新装丁)
山育ちで世間知らずの人狼少女と、彼女から不死の力を分け与えられた美少年の
友情から愛情へと育つ想いの物語を読みたい方は…
→dear (旧装丁)
(新装丁)
藤原ここあ先生の最早代表作。いぬぼくを読みたい方は…
→妖狐×僕SS
中野店 まりな
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