ついに、KADOKAWAさんから十文字青先生の「ノラ猫マリィ」が発売しました。
ヤバイです。手が震えています。どれほど待ち望んだことかと。
今回は「ノラ猫マリィ」へと続く、
美しくも心強かな“真紅”マリアローズの物語。
十文字青先生のデビュー作「薔薇のマリア」をご紹介したいと思います。
薔薇のマリア/著:十文字青 画:BUNBUN
(
まず、十文字青先生についてですが、頁あたりの字数に対してかなり筆が早く
現代・ラブコメ・青春小説など多方面の作風でご活躍されています。
台詞量は重い言葉で少なめ、地の文での独白や感情の吐露が非常に多く
一人称で読み進めると途中で入り込みすぎて泣きそうになるぐらい
アニメ化もされた「灰と幻想のグリムガル」や、SoundHorizonのノベライズなんかでも有名な方ですね。
今回、特に担当がごりっごりに推したいのが十文字青先生の異世界ファンタジー!
異世界!そしてファンタジー!剣と魔法!襲い来るモンスター!
うわっ・・・ いま日本のライトベル界で一番目にする文字の羅列・・・。
そう思った方は、その食わず嫌いの概念をとりあえず置いてきてください。
安心してください、「薔薇のマリア」に現代産最強主人公は出てきません。
「薔薇のマリア」はいうなればジョブスタイルの幻想世界で織り成される群像劇です。
明らかに日本ではない、もしかしたら地球でもない。純粋な本物の異世界。
そこにはわたしたちの知らない街があり、ダンジョンがあり、人の数だけ冒険があります。
“腹を膨らませるための稼ぎを得たい”、“己の強さを証明し名をあげたい”
さまざまな種族・職業に身をやつした冒険者たちが自分だけの信念や欲望を抱え
ダンジョンに蔓延る異界のものどもとの死闘を繰り広げています。
そんな群雄割拠の世界を、決して強者ではない主人公・マリアローズが
かけがえのない仲間たちと燃えるように生きてゆく、そんな物語です。
主人公=強キャラ(もしくはチート技能)といった流行の中で
なんの特殊技能も身体能力もない凡庸な主人公が輝くのは、とても難しいことだと思います。
おまけに十文字先生の作品にご都合主義や主人公補正はほとんどありません。
主役級でも人気キャラでもガチで死ぬときは死にます。気を抜いたらイチコロです。
しかも、良い扱いをされたキャラほどなかなかに救いがない死に方をします。
ゲームでいったらハードゴアぐらいの人生難易度を設定されているに違いない・・・
しかし、それこそが十文字青作品の魅力“異世界の中のリアリティ”です。
「これはほら、ファンタジーだから!」というようなご都合主義に逃げない姿勢。
きちんと裏づけされた世界観と、それを裏切らない独創性に富んだ文章表現。
甘やかされない登場人物。これぞ大人が読むべき純粋なファンタジーなのです!
ちなみに先生の著書の中で、もっとも“異世界の中のリアリティ”さが作風に反映されていたのは、
アニメ化もされた「灰と幻想のグリムガル」なのですが
また別の機会に触れるとして今回は割愛させていただきます。
どこがどう異世界的リアルな部分なのか?という一例として
“音声表記の異彩さ”を紹介しようと思います。
一般的なファンタジー小説ではモンスターの唸り声や叫び声は
「グルル・・・」だったり「ギャオオオー」だったりするところ
十文字先生の世界だとこうです。
魔法の呪文ならこうです。
ご覧のとおり、読めません。
たぶん、端から読ませる気がないのだと思います。
人間の声帯ではおおよそ発音ができなさそうな字面が並んでいます。
ファンタジー小説を読んでいる誰しもが一度は考えたことがある
「モンスターの鳴き声は、人間の発音と変わらないんだろうか?」
「なぜ、召喚先の異世界で言葉が通じるのか?」
「なんで、古代の魔法のはずなのに現代語の呪文で発動するのか」などなど、
書き始めたらきりがない、突っ込んではいけない異世界モノのお約束。
「それはね? ファンタジーだからさ!」という一言で片付けられてきた
異世界小説における矛盾点を、十文字先生はあえて逆手に取り突き抜けた個性に変えています。
咆哮は人語で表記しないことで、言葉が通じない得体の知れない生物と
対峙しているという恐怖感を、主人公たちと同様に読者も感じることができます。
魔法の呪文を難解な文字の羅列で表現することで、それを使っている人物が
読者には発音できないような発音を理解している有識者なのだと強調しています。
どれも読者に非常に生々しい臨場感を与えてくれるスパイスとなっており、主人公たちと同じ目線で
物語に入り込むために大事な要素をつくりあげています。
ほかにも、紹介し切れませんが「薔薇のマリア」を構成する魅力的な部分はたくさんあります。
性別を越えた愛を声高に謳うストーカー野郎が実はめちゃくちゃかっこよかったり、
敵が圧倒的すぎる大悪人でそれはもうすごい強くて
「これほんとに勝てるの?」と思ってしまうぐらい先が読めなかったり。
絵師のBUNBUNさんの絵が毎度ながら美麗すぎて卒倒しそうだったり。
現代で擦り切れるまでに使い古されてきたファンタジーの王道を地でいきながら
ハードな生き方をしてきた主人公たちを据えることで、ぬるま湯の世界で生きている
わたしたちの目にはとても鮮烈な作品に見えてきたりもします。
そして、何より30日に発売された「ノラ猫マリィ」は「薔薇のマリア」からの地続きの物語です。
美しき冒険者マリアローズが20数巻分戦って。生きて。泣いて笑って。辿り着いた終わり。
その鮮烈なる終わりから、遥か未来に進んだ物語です。
普通のファンタジーや学園ファンタジーじゃもう足りないんだよー!という貪欲な方や
「ノラ猫マリィ」で十文字青先生の世界観を覗き見た方に、
是非「薔薇のマリア」をお勧めしたいと思います。
(中野店/まりな)
中野店 まりな
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