皆さんは、"ゲーム実況"というコンテンツはご存知ですか?
ニコニコ動画やYouTubeなどの人気動画サイトを利用 していない方は、
「ゲームを?実況?なんのことだ、さてわからん」、となる方が多 いと思います。
"ゲーム実況"とは、大声でリアクションしたり、細かいゲームの 考察をしたり、
みんなでわいわい騒いだり、様々なプレイスタイルでゲームをプレ イしていく様子を、
録画して動画サイトにアップしている動画コンテンツのことです。
そして、そのおしゃべりしながらゲームプレイという動画コンテン ツで
活躍しているゲームプレイヤーを、巷では"ゲーム実況者"と呼ん でいます。
おしゃべりしながらゲームをプレイ!といえば、
ゲームセンターCXの有野課長を思い浮かべる方が多いと思います 。
敵に攻撃されたときに「いたいいたい!」と悲鳴を上げ、
小さなミスでゲームオーバーになってしまったときには「あ~~~ ッッ!?」と肩を落とす。
何時間もプレイしてやっとの思いでクリアしたときには「やったぞ ー!」と歓喜の雄たけび。
あの番組が今のゲーム実況スタイルのパイオニアと言われている説 も・・・?
近年では、投稿される動画バリエーションの多彩さと、子供でもわ かりやすい面白さから
ファンの年齢層がググーッと下がり、小中学生の将来なりたいもの のひとつとして
挙げられてしまう程の人気になっています。
今回は、そんな新時代のコンテンツ"ゲーム実況"で、
なんと家族を養っている有名実況者さんに密着した一冊をご紹介し ます。
KADOKAWA 「パパはゲーム実況者 ~ガッチマンの愉快で平穏な日々~」
この本は、難易度高めなホラーゲームを中心に、恐怖演出に動じな い落ち着いた解説と、
ハイレベルなゲームの腕前で知られる有名実況者・ガッチマンさん の生態に、
奥様であり同じくゲーム実況者でもあるトラちんさんが密着したほ のぼのエッセイ漫画です。
担当自身もガッチさんの動画が大好きで、月額費を毎月お支払いし て動画を拝見している程なので、
「本を出される! しかも奥様が描いた漫画!」と聞いたときは、とてもうれしかった です。
現役のゲーム実況者さんが、自らの生活事情を本にするのは、
もしかして初めてではないでしょうか。前例のない題材と言う点で目新しさが際立ちます。
(起きてから寝るまで。自宅のゲーム部屋でゲームプレイする日々。
ご自宅には、年齢制限のあるソフトをプレイする仕事部屋と、リビングに
それぞれ1台ずつゲーム機本体が一通り揃えてあるそうです)
ゲームをやりながら、ひたすらトークをかましていく。
時には肉声で、時には音読ソフトで。
ひとりでも、ふたりでも、たまに仲良しグループでも!
ひとえにゲーム実況と言っても、そのプレイスタイルは多岐にわた ります。
まったくやったことのないゲームをプレイして純粋な反応を見せる "初見プレイ"。
ゲームシステムとは関係なく、自ら何か禁止事項を課して(例:ア イテム使用禁止とか)
難易度を上げてプレイする"○○縛りプレイ"。などなど、いろん なスタイルがあります。
プレイ人数も、単独、コンビ。はたまた多人数グループでの実況も あり、
中には、そのゲームのプレイ時にしか集合しない限定的な組み合わ せに固定ファンがつくことも。
(同時期に操作ボタンの配置が異なるゲームをプレイすると、
頭の中がしっちゃかめっちゃかになるそうです)
今回、登場するガッチマンさんのプレイスタイルは、主に"解説プ レイ" 。
クリア済みのゲームを中心にプレイし、要所要所の攻略のコツや、
ゲームをプレイするだけでは気づきにくい世界観・設定の補足説明 などを、
実際にプレイしながら解説していく比較的落ち着いた実況スタイル です。
しかし、入念なテストプレイや、事前の情報収集などが必要な、
時間と手間のかかるプレイスタイルでもあります。
この本では、動画を作成するにあたり、準備する機材のこだわりか ら
どんな気持ちで撮影に臨んでいるのかなども細かく説明しています 。
(職業病は、開始時にどんなゲームでも武器を探してしまうこと。
ホラーゲームを主体にプレイされているガッチマンさんらしい職業病ですね)
(遠征先での一幕。ホテルの同室になった共演者の本名が分からない事件)
絵柄はとても読みやすいシンプルなタッチの4コマで、枠外の注釈 や噛み砕いた説明などを用いて、
ゲーム実況を知らない人にもやさしく、日頃から実況動画を楽しむ ファンの人にも
目から鱗な情報をゆるゆると説明してくださっています。
(元々会社員と兼業だったらしいです)
ゲーム大好きパパの内向きの顔と外向きの顔。
そもそもどうして、ゲーム実況者になったのか?
いまのゲーム関連の仕事一本に絞るまでの家庭のひと悶着。
ゲームに関わる意外なお仕事事情。普段のおうちでの生活。
そしてかわいい一人娘・茜ちゃんを溺愛するひとりのパパとしての 顔などを、
身近な奥様の視点から、リアルに迫って描いています。
途中、仲良しのこれまた超有名実況者・レトルトさんとの対談も収 録しており
なかなか明るみに出てこないゲーム実況界隈のこぼれ話も聞けます。
(聡明な一人娘・茜ちゃん(※一部ファンの間では茜様と呼ばれている)は、
早くもパパの仕事を理解している様子。しっかり見張っています)
個人的には、ガッチマンさんがTVゲームのCMや、
ゲームの公式ホームページで流れているゲーム画面のサンプル動画 に
携わっていることもあるという話にめちゃくちゃびっくりしました 。
あれって開発者さんやデバッカーさんだけのお仕事じゃないんです ね・・・!
発売前のゲームの動画作るなんて社外秘のオンパレードでしょうか ら
まさか外注のお仕事になっているとは露にも思いませんでした。
「子供の頃、友達と一緒に遊んだゲームが楽しかった」
「怖いゲームは難しいから出来ない。でも、作品のストーリーが気 になる」
「やったことがある好きなゲーム。自分ではない違う人がやったらどんな感想を 言うんだろう?」
人それぞれの理由で、ゲーム実況と言うコンテンツを楽しむ人が増 えていて、
実況者さんの方も、声が良い、トークが上手い、プレイが上手い、演出が良いな ど
個性もプレイスタイルもばらばらになってきています。
リスナーの需要とうまくマッチングすればたくさんの人に見てもら えますが、
それだけでしっかり稼いで生計を立てられる人はそうはいません。
(こちらがガッチさんの鬼シフト・・・これが本当のゲーム漬け・・・)
この本は、好きが高じて仕事になったというある種のサクセスストーリーで ありながら
その様子を家族視点で「今となっては~」と、思い出しながら話しているので、
まるで実家の親戚の話しを聞いているようなあったかい気持ちになる本でした。
想像もできないような職業事情を支える家族との絆にほほえましさすら感じます。
ゲームの新しい魅力を発見できる、ゲーム実況の世界。
この本はきっとその入門書としても役立つ一冊になると思います。
中野店 まりな