秋も深まり冬の気配を感じるこの頃……。
茶屋の縁台に腰掛け、紅葉を眺めながら団子を食べ熱いお茶をすする。ただ時間を忘れ、ゆったりとした空間を楽しむ。時に、年配の観光客に声をかけられるも「これ一興」と、シャッターの一つ二つ押した縁の深さを胸に残し、和の心をもってその場を去る。
これぞジャパニーズテイスト。今年もまた京都に紅葉を見に行こうと思っている山崎デース。
今回紹介するのは情緒溢れるこの作品。
不成仏霊童女:花輪和一
温情というよりは怨情。因果応報とはまさにこの事と思える一冊。
花輪和一先生といえば、平安時代の日本を思わせる世界観の作品が多く。魑魅魍魎・悪鬼羅刹、神仏ほとけに至るまで、怪奇幻想を散りばめた異色の漫画家として多くのファンを現在も魅了し続けています。そして当時の時代を知っているかのような緻密で彩のある背景。喜怒哀楽をこれでもかと言わんばかりに表現した力強い表情、過激な暴力描写。
読み進めるうちに腹の底に溜まるような“黒い感情”は、ペンに込められた怨情や呪いがページを伝って流れ込むようで花輪作品の独特の味として楽しむ(?)ことが出来ると思います。
また、自身の獄中体験を描いた『刑務所の中』では獄中に経験した内容を、おもしろくも分かりやすい内容で描いており異色ながらも読みやすい作品になってます。
今回、記事として書かさせていただく『不成仏霊童女』は花輪作品の中でも(個人的に)屈指の名作で、人間の業によって繋がる負の連鎖、残酷な事件や仕来たりなど…仏教的な考えをベースに展開するちょっと宗教色の強い作品。
分かりやすく言えば「悪い事をすれば地獄に落ちる」といった感じ。この世も十分苦しくて、そんな“現世という地獄”でもがき苦しむ人達を、不成仏霊(童女)の視点から観察する内容なのだけれど…この童女がすごい。
この質問に対して
「気がいたらここに…」なんて次のコマで話すんですが、不運というかなんというか。この時代なら落ちていた魚を食べてもおかしくないのでしょうが、なんというか不憫。
さらに、今なら(仮死状態だから)現世に戻る事が出来るチャンスも棒に振ったあげく
差しのべられた手を振り払う様なこの一言。
「「「えぇぇぇぇぇぇ~~~???」」」と言わんばかりの表情が最高。
童女(メンタル)つょぃ……。不幽霊とかってこんな感じで生まれるのかと思うとぞっとします。
この後、童女は修行僧と共に旅をしていくのですが、行く先々で巡り合わせる残酷な事件を第三者目線で観察する事になっていきます。
人を殺めた罪で死刑の確定した二人。
一人は己の罪を悔い改め懺悔するも、もう一人は己の行なった悪行に一片の後悔もない。
恐らく、現代で言うサイコパス的な青年。
娘を殺された母親は、怨念から心が地獄と繋がってしまい呪いの言葉を発する日々。
死刑当日に溜めに溜めた地獄汁をサイコ青年に飲ませる。
サイコ青年が地獄に落ちる事を願い、村人も祈り続ける。
ここから食べ物飲み物は無し。ただ地獄汁を飲まされ続ける日々が続き(10日以上)サイコ青年は命を落とす。
サイコ青年は鬼の厠地獄へ落ち、殺された娘二人と罪を悔いた青年は天国へ。
母親も、恨みが消え老婆の様な姿から元の姿へもどってめでたしめでたしとはいかないのが花輪作品である。
背中でゴキブリを飼う謎の女……。
その正体は。
地獄汁を飲まされ死んだサイコ青年の母親(銀さん)。
子どもを殺された恨みから、自分の背中に地獄怨霊虫(ゴキブリ)を飼いならし村人に仕返しをするつもりで怨念だけで生きているとんでもない人。
童女が真意を確かめるために時空を越えて過去を覗き見した結果は
黒。そしてとんでもないセリフと共に石をぺろりと……本気で危ない人間だった。
真実を知った童女は、そのことを銀さんに伝えるも
銀さんは聞く耳を持たず。そればかりか恨みは募るばかり。
なんとかしてあげたい童女。しかしどうすることも出来ないまま。
結局、自分の込めた呪いで死ぬ事となってしまった銀さんは自分自身が地獄怨霊虫となって地獄に落ちてしまう。そこには鬼の糞尿を受け止めるわが子がいるのに飢餓感から気がつかない。
ためらいなくわが子の血をすする母。
腹が満たされれば正気に戻るが、すぐに現れる飢餓感によってまた息子の血を吸うという無限地獄。
そして親子共々、地獄で責め合いながら永劫の時間を過ごす羽目になるというとんでもないスケールのエンディング。
己から出たものは己に帰って来る。因果応報。
悪い意味でもいい意味でも、多くを考えさせられる作品です。
いい縁に恵まれますよう。
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