男が読む詩集、といえば「湾岸MIDNIGHT」。どれをとっても印象的すぎる名言が多いのですが、僕の好きなくだりのひとつがこれ。ちょっと長いですが。
この章のライバルである自動車評論家・キジマは主人公アキオのフェアレディ「悪魔のZ」S30に挑むため、マツダのFCを選ぶ。けして現役とはいえないし、ロータリーのなかでも最新でもない旧車・FCをいなぜ選ぶのか?を説明するくだりです。
このくだりをはじめて読んだときに僕はかなり気が楽になったというか、せめぎあわなくて良くなった覚えがあります。
多かれ少なかれあるとは思いますが、それが小説でもマンガでも音楽でも作家でも下手したら食べ物でも、自分が選んだものが人から見てどうなのか、恥ずかしくないのか、正しいのかということを気にしつつ選んでましたし、人に「何が好き」と聞かれて答えるにはそういう対外的な部分においてこっぱずかしくないか、誤りでないかばかりを気にしていたからです。
古本の森に分け入るには自分が正しいコトをしている、そういったものを集めているということを問われたときにそれが正しいと言い切るつまり理論武装であり信仰告白みたいなものが必要だったわけですが、そういったものを気にせず「好きだから」「なんかいいかなと思って」だけで読み集めてもいいんだなと思うと気が楽になりました。
何が万人において正しいかはちゃんとわかってるけど、正しいかどうかなんて実はどうでもいい。正しいことは案外つまらない、って。こういうのをさらっと言えるのが楠みちはる節ですね。
しかしまあ僕も上司には未だに嗜好の部分では気が許せず、たとえばどこの店のラーメンが好きかみたいなことを聞かれてもどう答えるのが正答なのかを気にしてしまってなかなか云えませんが。
ちょうど食べ物の話に上手くつながりましたが、ではその「正しい食べ物」を圧倒的に分かってる男である、山岡士郎がホントに好きなのは何なんでしょうか?
山岡は鋭敏過ぎる舌を持つ男。そして添加物や調味料、残留農薬にもめっぽう詳しく、きちんと作られた食べ物とそうでないものをいくらでも見極められる男。でもしかしじゃあ何が好物なのかはあまり本人の口からは語られてないようですが、僕はこれが好きなんだろうと疑っています。美味しんぼ20巻から。
同僚たちと歌舞伎を見にいき、寝こいた山岡が寝ぼけて大声で「ふわーい !! カツカレーの大盛りねえ―っ!!」と怒鳴る。
閉演後さっきの何よ、恥ずかしいじゃないの!と話題になり、カツカレーってのが恥ずかしいよな、といわれると逆ギレ。めずらしく「あの旨さがわかんないなんて!」
と描き文字で山岡の本音が描かれてます。この山岡が描き文字で本音、というのは、実は長い美味しんぼ中でたった一回しか登場しなかったのでは ? それだけに本気度が高いですね。夢の中では体裁や何が正しいのかなんて考えなくていいので本心からのオーダーに違いありません。本心の欲求がカツカレーの大盛り、というあまりに体育会系なメニューだったりするのが山岡の本質か、と勘ぐりたくなるのも当然。
また栗田が団社長とくっついた!と勘違いしてボケた山岡が社主に朝食会のメニューを考えろ、といわれて出してきたのもカツカレー。
何で朝食なのにカツカレーなんだ!と叱られるが、山岡は昼食と勘違いしてた・・・つまり山岡にとって皆から不平が出ない昼食の代表例がカツカレーだったのです。さらに61巻では、山岡ではないですが副部長がカツカレーの素晴らしさを力説し、周囲も「よくぞ日本人に生まれけり!!」と大喜び。
いやそれにしても副部長みじめな食べ物大会でもトンカツのコロモだけをチョイスしてきたり、山岡も「カツ丼を考えた人はなんて自由人なんだ!」と感動したり、トンカツネタが実は以上に多くて好意的だったりします。ですがトンカツもカツカレーも、食の正しさという観点からはあんまり賛同は選れない感じはするんですよね。もちろん究極VS至高のメニューでも、カレー対決のときにカツカレーを創ってきたりはしないですし。
でもある種の男にとってカツカレーは絶対的にイイことは間違いがないのです。正しくなくともいいんです。正しかろうが誤ってようが知ったことか、というこの振れの幅があるあたりが美味しんぼですが、もっと振れを大きくすると「孤独のグルメ」に行き着きます。つまり正しさなんかはじめから考えてない境地に。
カツカレーは旨いものをふたつあわせたメニューなのでそうそう失敗作は出来ないはずなんですが、府中の免許センターの食堂のカツカレーはすごくまずかったので衝撃を受け、免許更新のたびに食べています。ルーも足りないしぬるいしカツはアブラでギトギトなのです。給食以下です。
なのでそれを渋谷店の飯田さんに「府中の免許センターの地下食堂のカツカレー、すごいまずいから食べた方がいいよ」と伝えたところ、彼は食べに行き、しかも「まずかったです」と報告してくれましたが、よく考えたらまずいから食いにいけと云うのもヘンだし、ちゃんと食べに行く奴もやっぱり問題ですが、何故か二人の間で妙な満足感があったのも事実なので、それはそれでいいんですかね・・・? わざわざあんかけ抹茶スパとかを食いにいったりする感覚でしょうか?
この章のライバルである自動車評論家・キジマは主人公アキオのフェアレディ「悪魔のZ」S30に挑むため、マツダのFCを選ぶ。けして現役とはいえないし、ロータリーのなかでも最新でもない旧車・FCをいなぜ選ぶのか?を説明するくだりです。
このくだりをはじめて読んだときに僕はかなり気が楽になったというか、せめぎあわなくて良くなった覚えがあります。
多かれ少なかれあるとは思いますが、それが小説でもマンガでも音楽でも作家でも下手したら食べ物でも、自分が選んだものが人から見てどうなのか、恥ずかしくないのか、正しいのかということを気にしつつ選んでましたし、人に「何が好き」と聞かれて答えるにはそういう対外的な部分においてこっぱずかしくないか、誤りでないかばかりを気にしていたからです。
古本の森に分け入るには自分が正しいコトをしている、そういったものを集めているということを問われたときにそれが正しいと言い切るつまり理論武装であり信仰告白みたいなものが必要だったわけですが、そういったものを気にせず「好きだから」「なんかいいかなと思って」だけで読み集めてもいいんだなと思うと気が楽になりました。
何が万人において正しいかはちゃんとわかってるけど、正しいかどうかなんて実はどうでもいい。正しいことは案外つまらない、って。こういうのをさらっと言えるのが楠みちはる節ですね。
しかしまあ僕も上司には未だに嗜好の部分では気が許せず、たとえばどこの店のラーメンが好きかみたいなことを聞かれてもどう答えるのが正答なのかを気にしてしまってなかなか云えませんが。
ちょうど食べ物の話に上手くつながりましたが、ではその「正しい食べ物」を圧倒的に分かってる男である、山岡士郎がホントに好きなのは何なんでしょうか?
山岡は鋭敏過ぎる舌を持つ男。そして添加物や調味料、残留農薬にもめっぽう詳しく、きちんと作られた食べ物とそうでないものをいくらでも見極められる男。でもしかしじゃあ何が好物なのかはあまり本人の口からは語られてないようですが、僕はこれが好きなんだろうと疑っています。美味しんぼ20巻から。
同僚たちと歌舞伎を見にいき、寝こいた山岡が寝ぼけて大声で「ふわーい !! カツカレーの大盛りねえ―っ!!」と怒鳴る。
閉演後さっきの何よ、恥ずかしいじゃないの!と話題になり、カツカレーってのが恥ずかしいよな、といわれると逆ギレ。めずらしく「あの旨さがわかんないなんて!」
と描き文字で山岡の本音が描かれてます。この山岡が描き文字で本音、というのは、実は長い美味しんぼ中でたった一回しか登場しなかったのでは ? それだけに本気度が高いですね。夢の中では体裁や何が正しいのかなんて考えなくていいので本心からのオーダーに違いありません。本心の欲求がカツカレーの大盛り、というあまりに体育会系なメニューだったりするのが山岡の本質か、と勘ぐりたくなるのも当然。
また栗田が団社長とくっついた!と勘違いしてボケた山岡が社主に朝食会のメニューを考えろ、といわれて出してきたのもカツカレー。
何で朝食なのにカツカレーなんだ!と叱られるが、山岡は昼食と勘違いしてた・・・つまり山岡にとって皆から不平が出ない昼食の代表例がカツカレーだったのです。さらに61巻では、山岡ではないですが副部長がカツカレーの素晴らしさを力説し、周囲も「よくぞ日本人に生まれけり!!」と大喜び。
いやそれにしても副部長みじめな食べ物大会でもトンカツのコロモだけをチョイスしてきたり、山岡も「カツ丼を考えた人はなんて自由人なんだ!」と感動したり、トンカツネタが実は以上に多くて好意的だったりします。ですがトンカツもカツカレーも、食の正しさという観点からはあんまり賛同は選れない感じはするんですよね。もちろん究極VS至高のメニューでも、カレー対決のときにカツカレーを創ってきたりはしないですし。
でもある種の男にとってカツカレーは絶対的にイイことは間違いがないのです。正しくなくともいいんです。正しかろうが誤ってようが知ったことか、というこの振れの幅があるあたりが美味しんぼですが、もっと振れを大きくすると「孤独のグルメ」に行き着きます。つまり正しさなんかはじめから考えてない境地に。
カツカレーは旨いものをふたつあわせたメニューなのでそうそう失敗作は出来ないはずなんですが、府中の免許センターの食堂のカツカレーはすごくまずかったので衝撃を受け、免許更新のたびに食べています。ルーも足りないしぬるいしカツはアブラでギトギトなのです。給食以下です。
なのでそれを渋谷店の飯田さんに「府中の免許センターの地下食堂のカツカレー、すごいまずいから食べた方がいいよ」と伝えたところ、彼は食べに行き、しかも「まずかったです」と報告してくれましたが、よく考えたらまずいから食いにいけと云うのもヘンだし、ちゃんと食べに行く奴もやっぱり問題ですが、何故か二人の間で妙な満足感があったのも事実なので、それはそれでいいんですかね・・・? わざわざあんかけ抹茶スパとかを食いにいったりする感覚でしょうか?
中野店 岩井