先日散々発売延期になってた「ジ・アート・オブ・シンゴジラ」がやっっとこさ届きました。思ったより文章の量がはるかに多くて読破するのはきっと当分さきだろうなーと思いますはい。そーいうわけでとりあえず写真とかコンセプト画だけぱらぱらーっと眺めてる日々なんですがこうしているとあの時の感動が蘇ってアアアアアアーーーーーーーーーー!!!!
自分がシンゴジラを結局6回観に行ったのにはそれなりに理由があってですね、あの冒頭の「何が起こってるか全然判んないけどもう状況が取り返しの着かないくらいに進行してる不穏な空気」とかゴジラが初めてまともに画面に映って初めてBGMが流れるシーンとか散々ゲロビームだの内閣総辞職ビームだの言われるみんな大好き放射熱線で東京壊滅するシーンとかそうして苦い思いをさせられ続けて最後の最後にやっとやっと反撃に転じて宇宙大戦争マーチが流れるシーンのカタルシスがもう大好きでアアアアアアアーーーーーーー!!!!そして予約開始されたシンゴジラのブルーレイ三枚組をアアアアアアアアーーーーーーー!!!!!(Amazonでスチールブック付きと一緒にマイケル・マン監督「ヒート」20周年記念ブルーレイを予約する音)
というわけで年末は久しぶりに大学の友人と会って飲んで部屋に泊めたりしてました。どういうわけだ。それは僕にもわからない。密室に男2人で一晩。何も起きないはずはなく…(何も起きませんでした)。
とりあえず久々に会って学生時代のことを話したりして思い知ったのは、学生時代って本当に楽しんでたんだなということでした。レポートに追われてたあの日々が懐かしいです。そんな気分で今回紹介するのはこれです。
ワールドゲイズクリップス(五十嵐藍 著 全4巻 角川書店)
主に高校生の少年少女たちの青春をオムニバス形式に描いた作品。いくつかのエピソード、いくつかの主人公たち。ちょっとした家出とか、文化祭の準備とか、放課後にする無駄話とか、子供時代のほんの一瞬をきりとったばらばらなお話のなかで共通しているのは、これまでとこれからの日々に対する虚無感。漠然とした諦め。空虚感。わかりますか、思春期に感じたアレです。あのむやみなアンニュイさ。あの感じです。「こんなことしててなんか意味あんのかな」っていうアレです。そして何度も何度も訴えてくるのは、意味なんかあろうがなかろうが何もかも必ず変わっていくということ。
「もうすぐ卒業。どう思う?
最近教室に入るとさあ、進路とか将来の話とか、みんなで離ればなれになるための相談をしてるみたい。(中略)時々なんか変なむなしさみたいなものを感じてさ。もうすぐみんなバラバラ。過ぎてく。忘れてく。なくなってく。今までがなんか無意味くさいなって…」(1巻収録「ウォーキングウィズアフレンド」より)
アアアアアアアアアアアアア!!アアアアアアアアアーーーーー!!!!(言葉に出来ない感情の波にもまれて床を転げ回る)
この作品で特に好きなエピソードがあって。家庭に問題がある優等生の委員長と同じクラスの不良が一緒に家出してみる「放課後ロスト」と、まああとは2巻全部なんですけど。
放課後ロストでは、「家出したって状況は何も変わらない」という委員長に対して不良がこんなことを言います。
「最近なにしてた?今の私たちなんか一瞬だよ。クラスメイトとの賑やかな日も過ぎてく。カップルが永遠の愛を誓っても嘘になるかもしれない。悩みもいつか消えてく。明日全部なくなるかも。委員長が望んでも望まなくても嫌でも変わってくよ」(1巻収録「放課後ロスト」より)
そしてこの直後に家出を通じてちょっと仲良くなった2人はあっさり離ればなれになる。
2巻の「橙色の時間とさようなら」では高校を中退した男の子が元クラスメイトの女の子に告白してフラれる。そのときのこんなやりとり。
「どうかさ、ずっとそのままでいてください」
「…んー、無理です。きっと変わっていきます」
(2巻収録「橙色の時間とさようなら」)
アアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!
このさァ、作品通して流れるダウナー過ぎる空気感とか、今悩んでることとか時間が経てばきっとどうでもよくなったりするってどこかで判ってるからこその通過儀礼的な諦念とかがたまらなくてんああああああ!!
だって実際自分が昔どんなことで悩んでたかなんておぼえてないじゃないですか。この作品の登場キャラたちも今でこそ内面的なセカイのことでグジグジ言ってるけど結局はあっさりいろんなことに順応して普通に社会とか外の世界にむかっていくんですよきっと。そういうことを読者もキャラもどこかで悟ってるから感じる「今この瞬間」に感じるセンチメンタルな気持ちなアレやそれがほんとに、ほんとにたまんないっていうか久々に読んだら刺激が強すぎて死にそうたすけて。
基本的にこの作品って登場キャラがみんな揃ってくだらない言葉あそびとか暇つぶしで何となく思いついたことをするだけなのになんだかよくわからない切迫感とかがあって。あえて傍からみてると心底どうでもいいよくわからないようなことで遊んで時間をつぶすのはそれが多分当人たちにとって本当に切実なことだから。どんなことでもいいから今一緒にいる人たちと何かを残した気にならないといつか本当に何もかも消えてしまうと思っているからなんじゃないかなあと思いました。
2巻に登場する里美とユウは、文化祭の準備中に出会って暇つぶしを通じて少し仲良くなるけど、ユウが近々転校することを告げたとたんお互いに距離をとるようになってしまうんですが、そのときのユウの台詞がね。ホントね。
「でもそういうのって、どうやったってあるもんだよね。小学校中学校過去の友達って今も全員友達?(中略)全部は持っていけなくて、ぽろぽろ落としていっちゃうんだ」
ほんとにねー、なんかねー、昔すごい仲良かったのにいつの間にか疎遠になってて、久々に会ったりしたはいいけど全然上手くいかないのって誰にでもあるじゃないですか。ていうかよくよく考えたらその人とどうやって仲良くしてたかもう全然思い出せないし、別にその人がいなくても自分の人生もその人の人生も問題なくまわるし、でも何かが欠けたっていう感覚はまちがいなくあるしでもう何これ、何の話?これ。ほんとね、そんな感じなんでね、本当にこの台詞が当時の自分に刺さっちゃって、なんか涙がとまらなくなったんですわ。お前いつも泣いてんじゃねえかって話なんですけどね、ほんと…ふううううわあああああああああああああああああああああ!!!!!!!もう駄目だだれかぼくを殺してくれ…
始終テンションが低くて諦めや漠然とした絶望ばっかりの漫画です。でも、良いことがあっても、哀しくても悩んでても、時間が経てば何もかもいつかは嫌でも変わっていって全部忘れて行って、そうして全部なくなったって、あの日あのときあなたが感じたなにもかもがあなたにとっては尊くて大切だったのだと、そういう風なわりと前向きなメッセージを伝えてくれている気がします。
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