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作家生活10周年だそうです

はいどうも、斧でございます。

 

 スティーブンキング原作の「セル」を観た。今年2月に公開の映画で、携帯電話を使ってた人たちが怪電波で凶暴化する話なんだけれど、日本では僕が中学のときに出た小説でそのときには映像化が決まってた気がするからもう10年越しくらいでようやっと出来た実写版ということになるね。実は密かに楽しみにしてた。作品の出来はまあ正直うん...って感じの午後ロー枠C級映画だったのだけれど僕はどうしても嫌いになれなかった。ちゃっかりサミュエル・L・ジャクソンが主演だったりするし。そういえばこの映画では彼は「マザファッ●ー」って言わなかったね。だいたいあの人「マザ●ァッカー」って言うんだけどね。まあそんなことどうでも良いんだけれども。

 

 そういえば今年は邦画界隈では実写化ラッシュでございますね。今は銀魂とか東京喰種とかジョジョとかやってるけれども、皆さんはどれかご覧になっただろうか。僕はこの中では東京喰種を公開されて真っ先に観に行った訳だけどいやなんかトレイラーで英語字幕とかついてて世界市場に向けて作った感満載だし、そんな強気な売り出し方してるコミック原作の邦画なら観るっきゃねえべっていそいそと新宿ピカデリーに行ってみた。前半は...前半は好きですよ、はい。あの人間側が使ってるクインケって武器、漫画だと違和感ないけど実写でみるとそれ絶対戦いにくいだろってもうそればっかり気になってクライマックス集中できなかった。あと最近流行ってるんだろうか、アクションシーンの途中でしょっちゅうスローになるのもどうかと思った。僕はね。

 なんていう感じでいきなりディスりからスタートした今回の私の駄文ですが、近頃のファッ●ン熱いなか皆さんはいかがお過ごしだろうか。いや待ってほんとに暑すぎないかな。まじマザファ●カーなんですけど。僕はSFスリラー映画「ライフ」を観てわーい!たーのしー!ってなったりしてた。大金をかけた午後ロー映画って感じの密室空間でクリーチャーに襲われる系映画なんだけれど、もう火星で見つかった地球外生命体カルビンくんが手に巻き付いて骨をバッキバキに砕いたり口から体内に入って内蔵食い荒らしたりしちゃってもうてんやわんやの地獄絵図。観客の予想通りのバッドエンドを迎えてからのエンドロールでやたら明るいこの曲が流れた瞬間、

https://www.youtube.com/watch?v=-cXrEPNvRO8

フーーーーーーーーー!!サイコーーーーーー!!!ってなりましたね。僕はね。やっぱりクリーチャーものは楽しいですなあ。遊星からの物体Xとかね。あれは続編の「ファーストコンタクト」で顔バッカーンなって触手どーんってなるシーンがめっちゃ好きなんですよね。うわあそっちかよ!ってなって(観てない人には伝わらない文章)。

 そういえば最近は第9地区とかのニール・ブロムカンプ監督がネットで短編を無料公開してたりしてますね。その中の「Zygote」に出てくる接合体っていう人間のパーツをぐっちゃぐちゃにひっつけた悪い冗談みたいな見た目の怪物が僕のどストライク。

https://www.youtube.com/watch?v=pKWB-MVJ4sQ

 ニール・ブロムカンプ監督といえば、エイリアン5を撮るって話もありましたね。3以降をなかったことにした「真エイリアン3」になるって噂もありましたね。密かに楽しみにしてたのにいつの間にかポシャっていた。なんてこった。

 ていうか今年はエイリアン:コヴェナントが公開しますね。プロメテウスの続編って聞くとめっちゃ微妙な気持ちになるけどエイリアンの前日譚って考えるとオラわくわくすっぞ。

 えぇーとはい、そんな感じで思いつくままに書いていたけど脱線しまくって全然本題に繋げられないので僕はもう諦めまーす。今回紹介するのはこれでーすおつかれさまでーす。

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嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん11 ××の彼方は愛(電撃文庫 入間人間 著)

 数年前に完結したシリーズ者のラノベのまさかの続編。発売していることにひと月以上気付かなかった。それくらい漫画も活字も前ほど読まなくなったなあとしみじみしたのはさておき。

 作者の入間人間といえば筆が超はやいということで有名で月刊入間なんていう異名を持っていることでも知られていますね、たぶん。最近ではガールズラブものの「安達としまむら」で僕のハートをわしづかみにしたことでも有名だ。知ったこっちゃないけど。しかしながらその筆の早さゆえファンも引くくらいの複数のタイトルを世に送り出しておきながら打ち切りなのか途中でやめたのか、とにかくちゃんと完結しないまま音沙汰のない作品も結構あったりする。そしてほぼ全ての作品の世界観が繋がってて時系列順に並べるとものすごいことになったりする。

ファンから「みーまー」の略称でよばれるこのシリーズは著者のデビュー作。

 概要としては、小学生のとき誘拐事件の被害にあった主人公みーくんとヒロインまーちゃんが高校時代に再会。事件のトラウマとかでふたりとも確実にどこか歪んで壊れているのだけれど、それでもそれなりにいちゃいちゃラヴラヴなバカップルライフを満喫したり、そんな日々に横やりを入れてくる殺人事件やら猟奇犯罪やら変態やらになんやかんやで巻き込まれつつゴリ押しで解決してみーくんがどんどんボロボロになっていくお話だ。たぶんだいたい合っている。

 シリーズはほぼ一貫してみーくんの一人称で語られて、一人の人間(若干おかしい)が脳内で思い浮かべたことをそのまま書きなぐったような文章は「読みにくい」と賞賛される。みーくんがそもそもびっくりするくらいすぐ嘘を吐くのが(「嘘だけど」が口癖)、読みづらさに拍車をかける。

 そもそも登場キャラがみんなどこかしらおかしい。動物の解体が趣味のみーくんの妹、世界をきれいにしたくて人を殺す美化委員、ロリコンの探偵、そもそもの始まりの誘拐事件を起こしたみーくんの父親。毎巻毎巻ろくでもない事件が起きて、起きていることのあまりのひどさに人が死ぬたびに思わずシニカルな笑いが漏れる。たいていはみーくんの身近な人間が犯人だったり被害者だったりして、それゆえ彼も率先して事件の渦中に飛び込まざるを得なくなるわけだけど、そんな中でやりすぎなくらいまーちゃんのために身体と命を張りまくるみーくんの姿には確かに胸を打つものがある。まあこんな短期間に猟奇殺人の被害者と加害者が出まくる高校ヤバすぎるだろとか、そういう突っ込みはさておき。

 みーくんがまーちゃんのことをそれこそ異常なくらい優先するのは、彼の父親が起こした誘拐事件のせいだ。頭のおかしかった父親が、当時小学生だったまーちゃんとその彼氏の「みーくん」をつれてきて、自宅に監禁して3人まとめて嬲ったからだ。そのせいでまーちゃんは心が壊れて本当はみーくんじゃない彼のことを「みーくん」と呼ぶようになり、まーちゃんは彼の父親を殺し、本当のみーくんは事件とまーちゃんのことを記憶から締め出すことになったからだ。同じ目に合いながら、誘拐の被害者と、加害者の子供という関係になったからだ。まーちゃんが自分を「まーちゃん」と呼ぶ人間を無条件に「みーくん」と認識するようになったからだ。そういう負い目から、みーくんは「みーくん」を演じる。嘘を吐く。何よりも父親が壊してしまった一人の人間を幸せにするために足掻いて命を張りまくる。

 こんな笑っちゃうくらい悲惨で陰鬱な設定のこのシリーズの読後感が妙に爽やかなのは、それでもみーくんとまーちゃんが幸せそうだからだ。どんなに歪んでいてもどうしようもなく価値観は普通でどうしても壊れきれなくて、ほかのなにもかも犠牲にしようとするのにできなくて必死でまーちゃんの側にいようとする彼はダークヒーロー的なかっこよさもあると思う。

 不幸のどん底でひどい人生のなか、どうしても捨てきれないちっぽけな何かを必死で握りしめてきたふたりが、大きすぎる犠牲を払いつつもようやく報われたシリーズ最終巻(10巻)に溢れているのは純粋な優しさだ。それでも生きていていい、幸せになっていいというメッセージだ。

 そしてそういう感じで幕を閉じたお話の続編。舞台は前巻から何年もあと。みーくんとまーちゃんの子供、双子の姉妹が主人公。妹のまいは天真爛漫で笑顔を絶やさないけれど学校へは行かずに金属バットを手に町を徘徊。「悪い奴を殺すため」らしい。姉のあゆはそれなりの常識人で慎ましく日々を過ごす。ただ側にいるはずの「妹を認識できない」らしい。

 目に見えない妹を探す姉と、そんな姉を見守りつつ悪いやつを探す妹の視点で話は進む。過去に起きたことのせいで大事ななにかを壊されたけど、その壊れたものをなくさないように必死で握りしめている姉妹の話

 みーまーの続編自体は、著者の公式サイトでちょいちょい公開されていたし、そっちもみーくんまーちゃんの娘が主人公だったけれど、それとはどうやら別物っぽい。

 目にみえなくても、姉として妹のことを思い続けるあゆと、自分が見えていない姉のことを、妹として一途に慕い続け、姉のために行動するまいの姿は、どこか両親であるみーくんとまーちゃんと重なる。そんな2人に対して苦労して父親やってるみーくんとか、相変わらずおかしいけど母親としての愛情とか優しさが垣間見える仕草をたまにみせるまーちゃんとか、もうそれだけでシリーズ追ってきた身としては涙腺にくるものがある。

 それでもこの作品を自分の中で消化するのはもう少し時間がかかりそうかもしれない。というのも、作中で起きたことがシリーズ中最大級に胸くそ悪いからだ。今までもたいてい人がバラバラになったりカニバリズムだったりそういう意味ではえげつなかったけれど、今回のアレは今までなかった性的要素もあいまって本当に惨い。「ルーム」かよ。姉のあゆが妹のまいを認識できなくなったきっかけであるところの「具合がいい」という台詞も相まって今巻に登場する「悪いやつ」はまあシリーズ屈指の外道といって差し支えないと思う。

 せっかく10巻で奇麗に2人が報われて終わったのに、その子供たちをわざわざ続編でこんな目に合わす必要があったのかとも思う。続きが読めたのはうれしいけれども。

 でも姉妹が短い時間ではあるけれどようやく「再会」する場面とか、お互いがお互いを守るためにどうしようもなく不器用ではあるけれどまっすぐに行動する感じとか、最後にはやっぱり報われたってことが確かに分かるラストとか、なんだかどうしても好きなのですわ。作中にもあるとおり夢と人生を食いつぶされてぼろぼろになった彼女たちが、とっくに終わった人生の中でそれでも本当にゆずれない何かを必死に、必死に握り続けてきて、長い時間をかけて、やっと、それなりに幸福を得る。そこにはどうしようもなく優しさとか愛とか絆とか、そういうものが溢れていて、だから僕はこのシリーズがやっぱり好きだ。

 なんだかまた読み返したくなってきたけど、全巻実家に置いてきてしまった。取りに行こうかなあ。

(担当 斧)

中野店 斧

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