メガネのつる

今週のスペリオールでついに「ラーメン発見伝」が最終回を迎えました。
ぼく1巻からずっと追ってきただけあって、なかなか感慨深かったですね。作り手ではあってもラーメンマニア的な考え方からなかなか脱却できなかった藤本と、憎たらしい発言ばっかの敵役でありながらも最終的には藤本を導きつづけた芹沢。ラストでこの二人の微妙な関係性をきちんとケリつけて描いていて、最終回にふさわしいまとめ方でした。

情けないことにぼくは最初、話はいいんだけど作画が物足りないなあとずっと思っていたのですが、10巻を越えたあたりからこの連載の絵は河合単先生でないと、と感じるようになってきました。たとえて云うなら同じスペリオールの「味いちもんめ」のような、作品世界になれすぎて、キャラの住民度が高すぎる状況というか。「味いちもんめ」のキャラ造形は古臭いのも間違いないですが、あの造形以外の伊橋はもはや考えられないのとおなじで、藤本も芹沢もスペリオールの住民として定着しすぎているというか。

連載はのべ10年にも及びますが、この10年はラーメン界においては非常に多くの事柄が経過し、たとえば連載当初に名店といわれた店で、いまもなお第一線で活躍している店というのはほとんどなかったりもします。無科調からつけ麺ブーム、二郎インスパイアの隆盛、和洋折衷、汁なしなど流れが速いですね。だってご当地ラーメン、なんて聞くともう古いなーって気すらします。
その流行り廃りの早いラーメン界を描くにあたり、営業の仕方から味の流行、分析が冴えていて原作サイドの勉強はかなりのものでは。他のラーメンマンガは単なるガイド本に過ぎないものが多いので、踏み込んで描かれたラーメンマンガの代表格であり唯一の成功例といってもよいかもしれません。

そんな「ラーメン発見伝」最終回で気になったコマが一箇所。

メガネ1

芹沢のメガネのつるがない。通常バージョンはこっち。

メガネ2

現在、メガネのつるは横顔になったときや、斜め前から見た時に目の表情を邪魔するので、省略する作家もかなり増えています。意識的に見ていないことも多いのですが、こんな感じです。同号スペリオール「医龍」から。

メガネ3

横顔のキメカットのときに、一番の視線が集中する眼球周辺にメガネのつるがあり、眼球が見えなかったり切れると構図上いまいちですし、またマンガ表現上で眼球が隠れていると「そのシーンにおいて客観的な立場をとるものである」もしくは「主人公に対して批判的な意見を言う」キャラクターといった色付けやシーンと、とられることがあるためでもあります。

で、ラーメン発見伝はかなりぼくも長く親しんできただけあって、河合単さんはつる省略派ではなかったし、芹沢もつる省略キャラではなかったはず・・・という無意識の慣れがあったのか、このコマだけ違和感があり、すぐに気がつきました。しかし慣れ親しんでいない人には一番上のコマでも不自然には感じないはずです。

まあこれが意図的省略なのかもしれないので断言は出来ないのですが、単行本化の際に書き足されていたら書き忘れ。このままだったら意図的省略だと思うようにします。でも正解(単行本26巻)がわかるのが9月30日、と、ずいぶん待たないといけないのでモヤモヤしますねえ。

ともあれこの「ラーメン発見伝」コンビでまた新連載がスペリオールで始まり、それもまたラーメンものになるとのこと。安全パイではありますが新鮮味はないのも事実。ちょっと複雑な心境でもありますな。

中野店 岩井

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