前々回にも触れたホンワカ風4コマのジャケにも関わらず、切なくなるシーンの多い4コママンガ「いってきまーす」。もう少しだけ、読んでる皆さんを切なくしてみたいとおもいます。
「いってきまーす」はタイトルの件もそうですが、ときおり1作で完結せず、話の連続の中で切なくさせることがあります。作者の意図に気がついた瞬間に切なさが倍増するので、なかなかに要注意です。たとえば
これだけ読むとファミリー4コマ的なオチです。面白くもなんともありません。ただのつまらないマンガですが、次のページをめくると・・・
運動会の最中、手を振る父さんを見つけたお兄ちゃん。でも母親思いの兄はそのことを母親の前ではいえないし、父さんも一ヶ月に一度の面会という枷が(たぶん)あるから母親の前では会えない。遠くから手を振るだけ。父さんに会えたのがうれしい反面、こういうふうにしかいまはもう会えないんだな・・・ということを実感しているから、お兄ちゃんは浮かない顔だったんですね。
そして母親の前ではずっといえなかったそのことを寝る寸前になってようやく妹に告げるというこのシーン。来てくれただけでうれしいお兄ちゃんと、まだ二人がもっかいくっつくんじゃないかという淡い夢を持ってる妹との対比が、胸がきゅっとなりますね。ここで読み返してやっと「おもしろかった」の4コマ目で何故おにいちゃんが憤慨しながらも何もいえなかったかが分かります。
こう、文字にするとけっこうな行数ですが、マンガだとたった8コマなんです。
両親が揃っている家庭に対して妹がまっすぐな視線を向けたとき。残った母親とお兄ちゃんはどうしたらよいのか。
つねに「お父さんがいる家族に憧れていたわけじゃないもん」とオチをつけてはいるものの、テレビで「犯人の両親は早くから離婚し・・・」と言っただけで瞬時に寝たふりをするような妹なので、これが本心なのか、母親やお兄ちゃんを傷つけまいとあえて言っているのかが実は読者にはわからないというところがミソです。妹の素なのかそれとも気遣いだか分からない・・・というのではこれが一番堪えました。
留守番電話を買ったからという名目で、たぶんお父さんに電話したんでしょう。お父さんが用件ではなく「元気ですか」と話していることからもそれはわかります。そして兄と妹が両方とも「ききたいのはこれとちがう」「ききたかったってのはこれかいな」と云っていることから、兄と妹がお互い二人ともとうさんにこっそり電話していたこともわかります。ひょっとしたら兄は妹に、妹は兄に父さんの声を聞かせてあげたいと思って頼んだのかもしれません。切なすぎです。家で読んでたら泣きますよ。
こういう話だけ抽出したため全体がこんなトーンなのかと思うかもですがそんなことはありません。大部分は普通の4コマです。作者はさいわい徹という方。版元も小さいですし大阪を中心に活動されているようなので容易に見つかるとは思えない本ですが、当コラムで気になった方は一読をおすすめです。
「いってきまーす」はタイトルの件もそうですが、ときおり1作で完結せず、話の連続の中で切なくさせることがあります。作者の意図に気がついた瞬間に切なさが倍増するので、なかなかに要注意です。たとえば
これだけ読むとファミリー4コマ的なオチです。面白くもなんともありません。ただのつまらないマンガですが、次のページをめくると・・・
運動会の最中、手を振る父さんを見つけたお兄ちゃん。でも母親思いの兄はそのことを母親の前ではいえないし、父さんも一ヶ月に一度の面会という枷が(たぶん)あるから母親の前では会えない。遠くから手を振るだけ。父さんに会えたのがうれしい反面、こういうふうにしかいまはもう会えないんだな・・・ということを実感しているから、お兄ちゃんは浮かない顔だったんですね。
そして母親の前ではずっといえなかったそのことを寝る寸前になってようやく妹に告げるというこのシーン。来てくれただけでうれしいお兄ちゃんと、まだ二人がもっかいくっつくんじゃないかという淡い夢を持ってる妹との対比が、胸がきゅっとなりますね。ここで読み返してやっと「おもしろかった」の4コマ目で何故おにいちゃんが憤慨しながらも何もいえなかったかが分かります。
こう、文字にするとけっこうな行数ですが、マンガだとたった8コマなんです。
両親が揃っている家庭に対して妹がまっすぐな視線を向けたとき。残った母親とお兄ちゃんはどうしたらよいのか。
つねに「お父さんがいる家族に憧れていたわけじゃないもん」とオチをつけてはいるものの、テレビで「犯人の両親は早くから離婚し・・・」と言っただけで瞬時に寝たふりをするような妹なので、これが本心なのか、母親やお兄ちゃんを傷つけまいとあえて言っているのかが実は読者にはわからないというところがミソです。妹の素なのかそれとも気遣いだか分からない・・・というのではこれが一番堪えました。
留守番電話を買ったからという名目で、たぶんお父さんに電話したんでしょう。お父さんが用件ではなく「元気ですか」と話していることからもそれはわかります。そして兄と妹が両方とも「ききたいのはこれとちがう」「ききたかったってのはこれかいな」と云っていることから、兄と妹がお互い二人ともとうさんにこっそり電話していたこともわかります。ひょっとしたら兄は妹に、妹は兄に父さんの声を聞かせてあげたいと思って頼んだのかもしれません。切なすぎです。家で読んでたら泣きますよ。
こういう話だけ抽出したため全体がこんなトーンなのかと思うかもですがそんなことはありません。大部分は普通の4コマです。作者はさいわい徹という方。版元も小さいですし大阪を中心に活動されているようなので容易に見つかるとは思えない本ですが、当コラムで気になった方は一読をおすすめです。
中野店 岩井