プロとアマチュアの仕事を比べるときにときおりいわれることばで
「抜きどころを覚える」
というのがあります。ずっと気を張るのではなく、手を休ませたり、張りつめた空気を少し抜いてから、また集中していく・・・というようにです。
常に持てる力を全て出すしかないアマチュアはどの場面でも全力疾走してしまって大事な場面でスタミナ不足になってしまいますが、地力があるプロは全力を出す必要がないところではスタミナや集中力を温存しておいて、一番大事なところにそれを集中させることができます。
その抜きどころでも良し悪しがあります。ここは抜いちゃダメだろ、ってところで抜いては意味がないのです。そしてもうひとつ、抜いてても面白いのならアリで、面白くないのはダメです。
まずダメなほうから。
松文館から発行された去年発行された「イロコミ」シリーズ。帯に「オールカラーコミック!」とあり、定価もふつうのコミックスよりすこし高くて1143円。想像するオールカラーの成年コミックスというとたべ・こーじ先生の「タベルンバ」のような全ページフルカラー、フルCGの本だと通常思うのですが、なまじ買取してると「その割には本が軽いな」「いい紙使ってないのか?」と疑問が。開いてみてビックリ、こんな有様でした!
一見すると違和感がないかもしれませんが、白黒原稿に後付けで無理矢理着色したものです。上の絵、頬のピンクと乳首のピンクがまったく同じ色だし、肌は全部おなじ肌色。太ももの陰影はよく見るとスクリーントーンで、こういう色を着色しているわけではありません! 少年誌の4色カラーよりもヒドい! しかも下のコマを見れば分かるように、元から黒っぽい部分は着色してもわかんめえ、とばかりに原稿そのまま。夜のビルの斬新過ぎる着色もまるで浮いてます。
たしか3作くらい発行されたのですが、あまりに酷い出来で続編が発行されたという話も聞きません。このときは「オールカラーとはいってるけど、どこにもフルカラーとは書いてないものな」「全ページにカラー着色されてれば、それはオールカラーとうたっていいよな」と諦念じみた独り言を言ってみたものです。ここは手ェー抜いちゃいけないところでしょ!
僕と松文館はハーフリータのころからの付き合いで、一時会社が解散したとき(知られていませんが松文館は遊人「エンジェル」発端での有害コミック騒動のときに唯一活動停止に至らされた会社です)も僕は平嶋製作所の本とか探してたくらい長い付き合いでしたが、いかにも松文館だよなあこのなげやりさ・・・と苦笑しちゃいました。
次は手の抜き方が考えてなさすぎるのでかえってイイパターンで、
表紙もカッコいい暴走族マンガ「かっ飛びロック」(本作品中にロックはまったく登場しません!)の2巻。仲間達がダベりながら「おまえ太ってるよな~」とツレをからかい
「いいんじゃねーか 豚は豚でも鬼の豚ならよ!」
「鬼の豚・・・なるほどシブイ!」
シブくねーよ!! あまりに会話考えてなくて頭が悪すぎですが、このなんも内容がナイかんじがいかにもヤンキーでかえって良いですね。いい感じで力が抜けてます。読んでるこちらも脱力、弛緩しまくって顔からムダに脂が出そうです。
つぎは幻の怪獣、イッシーを追え!という子供向け読み物「謎のイッシーを見た!!」。表紙が模型そのもので既に「やる気だしていこうぜ、もうすこし」と見てるこっちが励ましたくなるジャケットです。
車一台と担当がヒトリで現地に一泊二日でやっつけた・・・としか思えない出来はともかくとして、読者プレゼントのコーナーがもっとも抜けてます。
これだけ見ると一見ちゃんとしてそうですが、
ぬいぐるみは公園の柵の杭のうえにのっけたまま。
キーホルダーは乗ってきた車のガラスにくっつけただけ。逆光で輪郭がはっきりしないのを構わずとるあたりも「早く撮ってもう帰ろうぜ!」って心境がビシバシ見られていいですね。背景にぬいぐるみ乗せた杭が写ってます。「撤収~~!!」感がありすぎて、
ダンゴなんか地べたにデンデンならべてます。これ車とめたところの草原でしょ絶対。いくら真空パックだからってさ、食べ物を地べたにおいてシャッター切るセンスがすごい抜けてますね。ほしくなりません。
だいたいプレゼントの品物は現地で撮影しなくても、自分の会社で撮影するのが普通だと思うんですが、なにもかもメンドくさかったんでしょうね。ダンゴの形もあきらかにイッシーではなくてどちらかというと地方の奇祭に登場するチンポ形の御神体に似ています。まあでもこういう本を読むってのはこの手のスカスカをも好きになるってことでもあります。ぼくはこのプレゼントシーンがこの本でもっとも面白かったくらいです。手抜いたところがもっとも印象的、ってまあ1泊2日のやっつけ仕事じゃあしょうがないのかな?。
「抜きどころを覚える」
というのがあります。ずっと気を張るのではなく、手を休ませたり、張りつめた空気を少し抜いてから、また集中していく・・・というようにです。
常に持てる力を全て出すしかないアマチュアはどの場面でも全力疾走してしまって大事な場面でスタミナ不足になってしまいますが、地力があるプロは全力を出す必要がないところではスタミナや集中力を温存しておいて、一番大事なところにそれを集中させることができます。
その抜きどころでも良し悪しがあります。ここは抜いちゃダメだろ、ってところで抜いては意味がないのです。そしてもうひとつ、抜いてても面白いのならアリで、面白くないのはダメです。
まずダメなほうから。
松文館から発行された去年発行された「イロコミ」シリーズ。帯に「オールカラーコミック!」とあり、定価もふつうのコミックスよりすこし高くて1143円。想像するオールカラーの成年コミックスというとたべ・こーじ先生の「タベルンバ」のような全ページフルカラー、フルCGの本だと通常思うのですが、なまじ買取してると「その割には本が軽いな」「いい紙使ってないのか?」と疑問が。開いてみてビックリ、こんな有様でした!
一見すると違和感がないかもしれませんが、白黒原稿に後付けで無理矢理着色したものです。上の絵、頬のピンクと乳首のピンクがまったく同じ色だし、肌は全部おなじ肌色。太ももの陰影はよく見るとスクリーントーンで、こういう色を着色しているわけではありません! 少年誌の4色カラーよりもヒドい! しかも下のコマを見れば分かるように、元から黒っぽい部分は着色してもわかんめえ、とばかりに原稿そのまま。夜のビルの斬新過ぎる着色もまるで浮いてます。
たしか3作くらい発行されたのですが、あまりに酷い出来で続編が発行されたという話も聞きません。このときは「オールカラーとはいってるけど、どこにもフルカラーとは書いてないものな」「全ページにカラー着色されてれば、それはオールカラーとうたっていいよな」と諦念じみた独り言を言ってみたものです。ここは手ェー抜いちゃいけないところでしょ!
僕と松文館はハーフリータのころからの付き合いで、一時会社が解散したとき(知られていませんが松文館は遊人「エンジェル」発端での有害コミック騒動のときに唯一活動停止に至らされた会社です)も僕は平嶋製作所の本とか探してたくらい長い付き合いでしたが、いかにも松文館だよなあこのなげやりさ・・・と苦笑しちゃいました。
次は手の抜き方が考えてなさすぎるのでかえってイイパターンで、
表紙もカッコいい暴走族マンガ「かっ飛びロック」(本作品中にロックはまったく登場しません!)の2巻。仲間達がダベりながら「おまえ太ってるよな~」とツレをからかい
「いいんじゃねーか 豚は豚でも鬼の豚ならよ!」
「鬼の豚・・・なるほどシブイ!」
シブくねーよ!! あまりに会話考えてなくて頭が悪すぎですが、このなんも内容がナイかんじがいかにもヤンキーでかえって良いですね。いい感じで力が抜けてます。読んでるこちらも脱力、弛緩しまくって顔からムダに脂が出そうです。
つぎは幻の怪獣、イッシーを追え!という子供向け読み物「謎のイッシーを見た!!」。表紙が模型そのもので既に「やる気だしていこうぜ、もうすこし」と見てるこっちが励ましたくなるジャケットです。
車一台と担当がヒトリで現地に一泊二日でやっつけた・・・としか思えない出来はともかくとして、読者プレゼントのコーナーがもっとも抜けてます。
これだけ見ると一見ちゃんとしてそうですが、
ぬいぐるみは公園の柵の杭のうえにのっけたまま。
キーホルダーは乗ってきた車のガラスにくっつけただけ。逆光で輪郭がはっきりしないのを構わずとるあたりも「早く撮ってもう帰ろうぜ!」って心境がビシバシ見られていいですね。背景にぬいぐるみ乗せた杭が写ってます。「撤収~~!!」感がありすぎて、
ダンゴなんか地べたにデンデンならべてます。これ車とめたところの草原でしょ絶対。いくら真空パックだからってさ、食べ物を地べたにおいてシャッター切るセンスがすごい抜けてますね。ほしくなりません。
だいたいプレゼントの品物は現地で撮影しなくても、自分の会社で撮影するのが普通だと思うんですが、なにもかもメンドくさかったんでしょうね。ダンゴの形もあきらかにイッシーではなくてどちらかというと地方の奇祭に登場するチンポ形の御神体に似ています。まあでもこういう本を読むってのはこの手のスカスカをも好きになるってことでもあります。ぼくはこのプレゼントシーンがこの本でもっとも面白かったくらいです。手抜いたところがもっとも印象的、ってまあ1泊2日のやっつけ仕事じゃあしょうがないのかな?。
中野店 岩井