今年のマンガ大賞を獲った「テルマエ・ロマエ」、そして新井英樹「SCATTER」、フェローズ勢でも話題の「狼の口」なども好調のコミックビームレーベルから、こんな本がひっそりと発売されました。
「ザ・ワールド・イズ・マイン」の廉価版です。廉価版・・・つまりコンビニ本ですね。
この表紙の「最強最悪のテロリストと謎の巨大怪獣が暴れまわる! 凄惨な殺戮劇!!」
「破壊の限りを尽くすテロリストと巨大怪獣! 加速する惨劇は世界を崩壊へと導く」
という黄色い字でかかれた惹句。
1巻が「鬼神生誕編」
2巻が「世界崩壊編」という巻ごとのネーミング。
そしてこの背表紙の
「至上最高最凶の問題作!!」
「残虐非道のバイオレンス・アクション!!」
何から何までセンスがない、というか、ガッカリさせられることの多いジャケでした。
小学館版の全14巻も買っていたのですが、数年前、エンターブレインから「完全版ザ・ワールド・イズ・マイン」が出たときは加筆修正もあり、なおかつ貴重なインタビューもあり、大喜びして買いました。両者手に入れて初めて分かったことも多く、この本がなかったら「宮本から君へ」の復刻もなかったでしょうし、意義のある完全版であることは断言できます。
そして2010年。新井英樹に関心がない。もしくは著者名を知らない。造本なんか気にしない。内容が読めればそれでいい。そういった層むけに、コンビニ用に作り直したのがこの廉価版「ザ・ワールド」。コンビニに完全版をおくのはムリですからコンビニ仕様にしたわけです。
センスのかけらも作品への愛もないが、コンビニ仕様としては非常に正しいジャケです。背表紙見てください。タイトルや作品名よりも大きく「残虐非道のバイオレンスアクション!!」と書いてあります。求めるべきところはだれが描いたかではなく「残虐非道」「最凶の問題作」であることなんですね。コンビニのネタ本、コンビニマンガで、扇情的なカラリングで「ハプニング!」「裏社会」「ネット流出」「芸能界の黒い噂」なーんて太いフォントで描いてありますよね。コンビニで売るには雑誌と違って面で陳列するわけじゃないから、背表紙にここぞとコピーを入れるわけですが、その「人目を惹くには」もここぞとばかりに下品なんです。
今まで出たほとんどの単行本を買って、新井英樹を追ってきた僕にとっては、今回はさすがに見送りたい。そんな気分にさせられます。
コンビニ本には僕も相当お世話になってます。だからコンビニ本というのがどういうものかも知っています。商売だというのも分かります。商売である以上には割り切る部分が必要なことももちろん承知しています。
しかしやっぱりこの、作り手側がコンビニ仕様に徹したおかげで表れた、作品に対する絶望的な愛のなさには切なくさせられます。コンビニ本に向いている作品向いていない作品というのはまず選択としてあると思うんですが、その選択肢のかなり奥まったところにあるのが本作です。本棚にこのセンスのない背表紙が並んでいるのはなかなかに美しくないというかウームと思わざるを得ません。
ちなみに本作はオリジナルの小学館版ではなく、エンターブレインが再編集した完全版を元本にしており、この厚さだと全6巻になるのではないでしょうか。1冊680円ですから、そろえると4000円ちょっとかかる計算。一方完全版は新刊で全巻そろえると定価で6000円ちょうどくらい。
ただ、内容に徹して換算して言えば、完全版にあって廉価本にないものは著者インタビュー、カバー、帯、それだけです。物語に関してはご存知の通り、屈指の出来であることには変わりません。
電子書籍とリアル書物について様々な意見が出ていますが、10数年前からそれと似た状況でコンビニ本と書店本という対立はあったわけです。ヘタしたらデータのほうがよいとすら思えるリアル書物も存在するわけで。
それを踏まえてリアル書物がどう存在し生き残るのかを考えるのも楽しいかもしれません。


「ザ・ワールド・イズ・マイン」の廉価版です。廉価版・・・つまりコンビニ本ですね。
この表紙の「最強最悪のテロリストと謎の巨大怪獣が暴れまわる! 凄惨な殺戮劇!!」
「破壊の限りを尽くすテロリストと巨大怪獣! 加速する惨劇は世界を崩壊へと導く」
という黄色い字でかかれた惹句。
1巻が「鬼神生誕編」
2巻が「世界崩壊編」という巻ごとのネーミング。
そしてこの背表紙の

「至上最高最凶の問題作!!」
「残虐非道のバイオレンス・アクション!!」
何から何までセンスがない、というか、ガッカリさせられることの多いジャケでした。
小学館版の全14巻も買っていたのですが、数年前、エンターブレインから「完全版ザ・ワールド・イズ・マイン」が出たときは加筆修正もあり、なおかつ貴重なインタビューもあり、大喜びして買いました。両者手に入れて初めて分かったことも多く、この本がなかったら「宮本から君へ」の復刻もなかったでしょうし、意義のある完全版であることは断言できます。
そして2010年。新井英樹に関心がない。もしくは著者名を知らない。造本なんか気にしない。内容が読めればそれでいい。そういった層むけに、コンビニ用に作り直したのがこの廉価版「ザ・ワールド」。コンビニに完全版をおくのはムリですからコンビニ仕様にしたわけです。
センスのかけらも作品への愛もないが、コンビニ仕様としては非常に正しいジャケです。背表紙見てください。タイトルや作品名よりも大きく「残虐非道のバイオレンスアクション!!」と書いてあります。求めるべきところはだれが描いたかではなく「残虐非道」「最凶の問題作」であることなんですね。コンビニのネタ本、コンビニマンガで、扇情的なカラリングで「ハプニング!」「裏社会」「ネット流出」「芸能界の黒い噂」なーんて太いフォントで描いてありますよね。コンビニで売るには雑誌と違って面で陳列するわけじゃないから、背表紙にここぞとコピーを入れるわけですが、その「人目を惹くには」もここぞとばかりに下品なんです。
今まで出たほとんどの単行本を買って、新井英樹を追ってきた僕にとっては、今回はさすがに見送りたい。そんな気分にさせられます。
コンビニ本には僕も相当お世話になってます。だからコンビニ本というのがどういうものかも知っています。商売だというのも分かります。商売である以上には割り切る部分が必要なことももちろん承知しています。
しかしやっぱりこの、作り手側がコンビニ仕様に徹したおかげで表れた、作品に対する絶望的な愛のなさには切なくさせられます。コンビニ本に向いている作品向いていない作品というのはまず選択としてあると思うんですが、その選択肢のかなり奥まったところにあるのが本作です。本棚にこのセンスのない背表紙が並んでいるのはなかなかに美しくないというかウームと思わざるを得ません。
ちなみに本作はオリジナルの小学館版ではなく、エンターブレインが再編集した完全版を元本にしており、この厚さだと全6巻になるのではないでしょうか。1冊680円ですから、そろえると4000円ちょっとかかる計算。一方完全版は新刊で全巻そろえると定価で6000円ちょうどくらい。
ただ、内容に徹して換算して言えば、完全版にあって廉価本にないものは著者インタビュー、カバー、帯、それだけです。物語に関してはご存知の通り、屈指の出来であることには変わりません。
電子書籍とリアル書物について様々な意見が出ていますが、10数年前からそれと似た状況でコンビニ本と書店本という対立はあったわけです。ヘタしたらデータのほうがよいとすら思えるリアル書物も存在するわけで。
それを踏まえてリアル書物がどう存在し生き残るのかを考えるのも楽しいかもしれません。
中野店 岩井