狂ってやがる→気が変だぞ→変だぞ

先日は廉価本、コンビニ本にすべきでないタイトルをムリヤリ作り変えたことでなんかガッカリする例を挙げました。しかし廉価本・・・ペーパーバックは全体で見たらメリットも少なくはありません。

先日紹介した「ザ・ワールド・イズ・マイン」の廉価本は370ページで680円。オリジナル版の1・2巻を収録したくらいの内容で680円ですし、完全版は1巻が1000円ちょっとなので、実はそんなにお得感はない。リセールバリューもほとんどない。

ですが、オリジナルのYSコミック版を14冊そろえるのは至難の業だし、読んだあと保管することを考えず、ただ読むのだけ、あとくされなく捨てられるという意味ではそれはそれでよいのです。
あとくされなく捨てる、というとあんまりな言い方のようですが、本の占める体積やスペースということを考えたら、否定は出来ません。

あと、あとくされない廉価本に徹したつくりにすることで道が開けることもままあります。
コンビニ廉価本の嚆矢は小学館のMy First Bigシリーズですが「美味しんぼ」や「ゴルゴ13」など1話完結ものを単行本版よりも数話割引いて、300円程度で買えるようにしたため、バカ売れして今に続いています。マイファーストビッグはコンビニで売る、たとえば独身者がメシ食いながら読む・・・ということを想定してライトに作ったため、みな読み終わったら抵抗なく捨てられました。コンビニ弁当の空容器と一緒に、(雑誌ではなく)単行本が抵抗なく捨てられるという文化はそれ以前はほとんどなかったので、見落とされがちですが、90年代のコンビニ本の隆盛は出版文化を変えたともいえます。あれがカバーがついていて単行本巻数が振られていたら、みな意外に保管していたかも知れません。

実際ゴルゴ、美味しんぼ、味いちもんめ、池上遼一の諸作、ブラックジャック、あと食べ物系コミックの多くは、廉価本ですが増刷されまくっていて、出版社に利益を確実に落とせるジャンルと聞きます。

まあそれはよいとして、コンビニ本に徹するよい例では、こんなのがあります。

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「ブラックカレーッ!!」のキメぜりふも最高にイカしてる。やっぱりカレー将軍はバッチリキメててバッチリかっこいいですね。この狂った装丁、「包丁人味平」のカレー対決編だけ抜粋した集英社ホームリミックス版です。

包丁人味平を全巻そろえなくともよい。でも味平の中でもカレー対決は読んでみたい・・・という廉価本ならではの思い切り。黄色と黒のドハデなカラリング。そして一冊あたり550ページというボリュームで600円という安さ。

出版社的にも、既にオリジナル版・ワイド版・文庫版と作ったものが、ちょっとだけ話題になったからといって新たに再編集版を全巻きちんと発行するメリットは薄いので、抜粋再編集版というのがCP的に良いってのもあるのかもしれませんが。

さて、35年前に作られたオリジナル版では、カレー将軍がスパイス調合中に「ギャーッ」と奇声を発するのを見て、マイク赤木がこうつぶやいていましたが・・・

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85年に発行されたワイド版では

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さらに09年発行のこのコンビニ本では

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と変わっていっています。「許される言葉」も時代とともに少しづつ変わっていったことが分かるよい例でしょうね。

たとえば同じように

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「スッパゲッティ」は差別的だ、教育上よろしくない、それで傷つく人だっているんだ・・・ということで、85年ワイド版では許されていた表現も、

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09年コンビニ版では「スパゲッティ」に修正されています。時代とともに表現に対する規制というのも変わりゆくものですね・・・





って、スパゲッティは冗談です! 真に受けないでくださいね! ただ、昔のダサ表現を変えただけです! 
でもちっちゃい「ッ」も味だったのにな・・・。「何をするだァーッ」みたいに。 

とはいえ「だめだ、こいつ変だぞ」ではなんか違うんですよね・・・なんとなく伝わらないというか。発行が古いマンガを読んで、文脈に沿わないそぐわない表現が出てきたら、元はどんな単語だったのかを想像するのも古マンガ読みのひとつの楽しみ方です。

個人的にはもっともひどいサベツ表現の一つで年代的にもギリギリ最後だったのが 好美のぼるの「呪いの盲猫」だと思います。わりと好き勝手やってる当ブログでもとうていモザイク無しで引用できないくらいヤバい、のですからいかにヒドいかがわかろうというもの。おそらく現存している「呪いの盲猫」は、読んだ人間がみんな壁にぶつけただろうから背表紙四隅がひん曲がってるのではと想像されるほどです。

中野店 岩井

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