「無音 バスもぐる」……ドラえもんのトラウマ回があってだな

「ジョーガンネ 玉落とし わずかなり 学刈」 ピンときた人いますでしょうか。 幼少の頃から何度も何度も繰り返し読んだドラえもん。今になって単行本をパラパラ眺めても、タイトルのみでどんな結末だったかなんとなく浮かびますし、ほぼ全ての絵・コマ・ストーリーに見覚えがあります。一番吸収率の高い時分にこれでもかと刷り込まれた漫画やアニメの記憶ってのは、個人的な知的財産なんじゃないかと思っております。 その中でただ一つ、ドラえもんの中で断トツに恐怖の記憶と共にインプットされている話があるんです。 白石1月6日(1) 「大予言・地球の滅びる日」 妙に緊迫感のある見開きの扉絵と、暗雲垂れこめる空。冒頭でドラえもんがミーちゃんと出掛けていき、のび太が一人になるところから始まります。部屋で見つけたのは一冊の本。中にある文章は支離滅裂で意味不明。 白石1月6日(2) 「ジョーガンネ 玉落とし わずかなり 学刈」 これを持ち出していつもの空き地で皆に訊いてみても分からずじまいで、またのび太は家に戻ってきます。 白石1月6日(3)  ドンヨリとした天気のせいで、昼間から電気を付けているママのなんの気ない台詞からも、どういうわけか不安を掻き立てられます。薄暗い部屋で本の文面を反復するのび太。まもなく大慌てでやって来たスネ夫曰く、その本はノスト  ラダムスの大予言だという。恐怖の大魔王が降りてくるとかこないとかの例のノストラダムス、1999年7月を越えるまではあちこちで騒がれてましたね。この時ののび太たちも半袖、かつ謎の本の最終ページである7月19日はまもなく迎  える日らしいので、話中の季節は初夏~夏頃だと思われます。時期的にも大予言の不穏な感じと重なります。さて、ひょっとしたらヤバい本かもしれないと察したのび太とスネ夫の二人。意味不明な文章の一つ一つを新聞の切り抜きと照らし合わせて読みとくと、この謎の本に書かれた  ものはあらゆる事件事故と一致していきます。 白石1月6日(4) そして 白石1月6日(5) 本の最終ページに記された文章から、この○が地球を指すのだと結論した二人は大パニック。迫り来るXデーに慌てふためき、二人してと  んでもない事態だと触れ回ります。いつも冷めてクール目のスネ夫が、のび太と一緒に大騒ぎするというのも珍しいところ。まぁオチとしては結局いつも通りの日常エンドに戻るんですが、とにかくこ  の話は怖かったわけです。いつものドラえもんのはずなのに、冒頭の悪天候の描写は大長編に見られるようなリアルさ。この状況設定と、全体に漂っている薄  暗く不安な空気感。それがストーリーと相まって徐々に増幅されていくイメージがかなり恐怖心を煽ります。縋れるはずのドラえもんはいなくて、のび太達の会話を通して自分も「恐ろしいことに気づいてしまった」当事者になってしまうんです。コロコロ何月何  号とかではなくて単行本のコミックで読んだ身としては、うすら寒い怖さがその前後の話にも尾を引いてしまって、前に入っている「のぞきふしあな」のギャグオチすらもくらーい気分で眺めていました。しまいには単行本の表紙の絵にすら不吉さを感じてしまって、この話が収録されている36巻自体が少しタブー化していた時期まであった始末。自分がこれを読んだのはおそらく6歳頃、一人で留守番をしていた薄曇りの  日だったのを覚えています。のび太がストーリー中で本を見つけた状況にかなり似ており、家中の明かりをつけてもイヤな気分が拭えないままでした。この話を友人にすると、そいつも同じくこの回は怖かったといいます。ちょうど地元の湖でバス事故があった頃だったそうで、話中に登場する謎の文面の一つ「ター 扉をひらく 無音 バスもぐる」が強烈に印象に残っているとのこと。  記憶にある「怖いドラえもん」はこれっきり。あとはまぁジャイアンの親戚の寺に泊まりにいく怪談回が、途中で時系列が飛ぶっていう表現に少し怯えたくらいです。基本的にドラえもんは楽しさとワクワクに埋め尽くされているはずなのに、どうにもこの大予言の話だけは未だに慣れません。 ……どうでしょう、みなさんはそういう「ドラえもん」、ありますか…? …………で、さてその謎の本は結局なんだったのか、最後どうなったかというと…… この記事の中に答えを隠しておきました。探してみてね(ヒントは改行!)。 ところでなぜ新年早々こんな話をしたのかというと… 白石1月6日(6) 白石1月6日(7) ドラえもんの第一話ってお正月なんですよね。のび太の部屋にやってきて、おもちのおいしさに感動して平らげて帰っていくという導入部。初登場のドラえもんはなんだか首が短くて(今もですけど)、突然現れて餅を食い漁ってのび太に不吉な話しかしないというワケわからん奴でした。 ドラえもんの大好物は言わずと知れたドラ焼きですが、のび太と共通する好物として、この時初めて食べた「お餅」があることはひょっとしてあんまり知られていないかもしれません(21世紀に餅は無くなってるのかな…)。実は二人が餅食べたさに未来の道具を出し、作れる数が奇数だったことで結局ケンカになるなんて話もあります。 っんだよ!また読みたくなっちまったじゃねーか!という方はコチラ。 ちなみに今回の「大予言・地球の滅びる日」が収録されている36巻には、かの有名な「きこりの泉」も入っていますよ。 白石1月6日(8) 白石1月6日(9) 年末年始、実家に帰ってあらゆる漫画を読み返した人、いることでしょう。そんで面白くて持って帰ってきちゃった人もいるんじゃないでしょうか。さぁ今一度、寒い日に自宅でまったりこたつ+みかん+ドラえもんの最強コンボを味わってみてはいかが……。 遅ればせながら、明けましておめでとうございます。 amazonプライムのお急ぎ便でドラえもんの1巻を新刊で買う中野店・白石がお送りしました。

中野店 白石

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