みなさんこんにちわ。
庭のプランターに中国産のニンニクを植えて無事に芽が出たため、晴れて国産と偽れる中野店白石です。
前回の『鬱ごはん』に続き、また好きな感じのごはんもの漫画をご紹介します。
ごはんもの飽きたとか言わない。流行りの中にも良作はいっぱいあるんです。
舞妓さんちのまかないさん/小山愛子/小学館/既刊3巻
タイトルの通り、京都の華・芸で生き抜く舞妓さんたちが
屋形という家に帰って
オフレコになった時
そこで食べるごはんを作る
「まかないさん」のお話です。
全編通してセリフはやんわりした京都訛り。読んでいて気持ちいいです。
さて舞妓さんがどういうものなのか全然知らないって人へ、ざっくりした流れを。
16歳(中学卒業):全国津々浦々から、舞妓さん志望者がこの「屋形という共同生活の場に集まる
17歳:仕込み(見習い)...先輩(姉さん)のサポートをしながら立ち居振る舞い・踊り・礼儀などを学ぶ
17~19歳:舞妓...年数は個人によってまちまち
20歳位:芸妓...屋形を出て、一人で生計を立てる
※あくまで一例。芸妓さんとして働き続ける子、舞妓までで籍を抜く子、体力が続かず引退する子などさまざま。年齢と舞・芸妓の立場は本人の実力によって差があるそうです。
スマホは持たず、舞妓として髪を結いあげたら一週間そのまま、休みの日以外はコンビニやマックにも入れない。8時に朝食、踊りのお稽古の終わった12時に昼食、夕方16時頃に早めの夕食を食べたら着付けをして夜のお座敷に向かいます。お客さんの前で芸を披露して接待をするのはこの時。よって帰宅は深夜になる、なかなか厳しい世界です。
そんな屋形で三度のごはんを作る主人公がこちら。
キヨ16歳。料理が好きでマイペース、のほほんとした女の子。
屋形での描写が主なので、こんな舞台裏が日常です。
ごはん時はバタバタだったり
見習いさんたちと世間話したり
髷+私服(パジャマ)というインパクトの強い格好で雑談したり。
で、いいなーと思ったのは、食事シーンがメインになるごはんものの中でこの場面があった事。
ごはんそのものだけじゃなく、「作ること」自体に視点があるのだなと感じられます。
***
さて、では本題に入りましょう。
キヨさんには、ふるさとの青森から一緒に上京してきた女の子・すみれ(すーちゃん)がいます。
実はキヨさんは舞妓さんになれなかった子、のんびり屋の性格から「向いてない」と言われてしまった子なんです。けれどふいにピンチヒッターで作った親子丼がきっかけとなり、まかないとして働くに至ります。
逆にストイックで負けん気の強いすみれは、舞妓さんへの道を駆け上がります。
この二人の関係性がとても丁寧に描かれていて、2巻以降は二人のエピソードが増えていきます。
今回は、そんなすみれのためにキヨさんが作ったごはんをいくつか紹介しましょう。
・甘酒
慣れない枕で眠れないすーちゃんへ、一日かけて発酵させた深夜の甘酒。
・からあげ
思わず口走るほど食べたくなってしまったメニュー・からあげが、目の前にある幸せ...。
・なべっこ団子(お汁粉)
すみれの舞妓デビューとなる店出しの日、緊張の連続を抜け出して、閑散とした台所で二人で食べる故郷のデザート。
・かきもち
舞妓への道が早々に絶たれたキヨさんに、すみれはある種の責任感や引け目を感じています。そんな状況に反して、キヨさんはのんびりと自分らしくおいしいものを作り続けます。
「かきもち」の回は、その葛藤を乗り越えてすみれが「あこがれの人」にキヨさんを選ぶという、ほっこりカワイイエピソード。まあキヨさんにとっては、表舞台に立つ舞妓さんよりもごはん作りの方が「しっくりきた!」という感じのようで...。
ん?こうしてみると揚げ物と甘い物ばっかりだな?
まぁそうだよな......揚げ物とスイーツは正義だよな......。
飯は「救われてなきゃあダメなんだ」とはかのゴローさんの名言ですが、この漫画にも、花街で働く舞妓さんたちへの優しい救いがたくさん詰まっています。
***
それでは最後に一番好きなこのシーンを。
冬の朝、青森にいた頃と雪かきの音が変わらないキヨさんの姿を眺めながら、すみれがぼんやりする場面。舞妓さんとして芸名「百はな」をもらい、本来の名前を呼ばれることはなくなります。こうしてどんどん変わっていくすみれと、何も変わらずマイペースなキヨ。対照的な二人の、じんわりあたたまるシーンです。
で、最後二人で台所に入っていくこのコマがとてもいい。
作者コメントには「いつもの台所の美しさ、いつものごはんの愛おしさ」といったニュアンスがあり、まさしくそれを体現したようなストーリー。花街(かがい)という非日常のなか、その舞台裏にある日常ごはんの一端をそっと教えてくれる作品です。
べらぼうに料理がうまいわけでもなく、ごちそうが目白押しでもない。けれど「作って、食べてもらうごはん」と「作ってもらって、食べるごはん」の大切さがここにあります。
あと和風建築ならではの、いい意味で古くさいレトロな台所もいいんだよね...。
こういう"裏方さん"漫画ってもっとないのかな...。
通販はこちら『舞妓さんちのまかないさん』
小山愛子の前作『ちろり』
担当:白石
中野店 白石
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