今夏まんだらけのスタッフはもちろん、世の中を席巻した映画といえば『シン・ゴジラ』ですが、近年劇場で映画を観るという習慣がすっかり無くなっていた私の重い腰をいとも簡単に引き揚げてしまった映画が他にありました。
森達也監督の『FAKE』です。
こちらも各方面で話題になっているのでご存知の方も多いと思われますが、音楽家・佐村河内守氏が「聴覚障害」や自身が発表した楽曲に「ゴーストライター」を起用していたとされる一連の騒動のその後の姿を追ったドキュメンタリー。
僕自身あの騒動で佐村河内氏を知ったクチなので当時もそんなに関心を持っていた訳ではないのですが、「その後」彼がどうしているのかというのにはもの凄く興味が湧きました。それは騒動に関する“真実”よりも、です。そして実際の映画の内容もそれをただただ淡々と映し出すものでした。
2014年、騒動の半年後から佐村河内氏を追いかけ始めた森監督とほぼ時を同じくドキュメンタリーとして氏を取材対象に見据えていた人物が漫画の世界にもいました。
それが今回ご紹介のこちらです!
『淋しいのはアンタだけじゃない』吉本浩二(小学館)
自作の題材を探していた吉本先生が、「3,11」で被災した三陸鉄道を描いた震災ドキュメンタリー『さんてつ』を制作した時に関わった聴覚障害者の事を思い出し、再び会いに行ったことがきっかけでその後も色んな聴覚障害を持つ人物に取材をしていきます。
「聞こえない」ことで何が大変か。健常者の想像を遥かに超えるエピソードの数々。
聴覚障害あるある??「デフ・ジョーク」というんだそうな。
おりしも世間ではかの騒動が巻き起こっていたためどうしても避けては通れない話題となっており、佐村河内氏についても質問します。
あくまで「聴覚障害とは」がテーマの漫画だったはずが、世の人の注目を集めやすい「佐村河内守」という存在がスパイスになってしまったのです。まるで氏の“謎解き”をしていく物語のようにも感じてしまう。
そして“謎”への思いは遂にその張本人に向けられる事となり、吉本先生は意を決して佐村河内氏へ取材を申し込む。
ここで初めて森監督が映画のために現在進行形で佐村河内氏に密着している事を知らされます。
『FAKE』では佐村河内氏の籠る自宅にたびたび国内外のマスコミが取材に訪れ、取材は原則として森監督がカメラを回している前で行われます。
吉本先生もそれを条件に取材の承諾を得た訳ですが残念ながらその部分はカットされてしまったようで、映画本編では吉本先生のお姿を観る事が出来ないのが残念!
しかし、映画を先に観た方は特にですが、取材の様子や室内、飼い猫などが忠実に描かれているので映画と漫画が別物とは思えず、まるでコミカライズのような感覚に陥ること請け合いです。
この1ページだけでも観た人には分かるキーワードが詰まってます。
しかし映画やこれまでの報道などと違うのは聴覚障害者の視点から騒動について語られていること。
作中でも触れていますが、これまで彼が「聞こえているのかどうか」という点においては彼が受けた検査結果以外では皆が皆、健常者の立場で見聞きした状況的な判断により一方的に「聞こえてるんだろう」と言い放っているに過ぎなかった。
なので本当の本当は結局本人にしか分からなかったところへ、より近い境遇におられる方々の感想や意見が聞けるという部分では貴重なのではないかとも思います。
映画は一旦の終焉を迎えていますので、この漫画が今後どうテーマを掘り下げていくのかが気になります!
どーですか、お客さんッ!!
「さんてつ」その他ドキュメント含めた吉本浩二作品はこちらから!
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(担当・清水)
中野店 清水
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